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3話・不穏な気配

 

「「「うおおおおおおおっ!」」」


 ドッと村人達の歓声が湧き上がる。

 誰もが驚愕に目を見開き、今しがたの出来事が夢ではないかとお互い確認しあう。


 子供から大人まで、老若男女関係無くお祭り騒ぎ。

 意図的に雨を降らせる人間の登場に、絵物語に出てくる魔法使いを連想させる者も出る始末。

 そして皆が口を揃えてこう言った。


 ーー間違いない、彼は英雄だ……と。


「ふふっ」


「どうしたんだ、ミスティ?」


 いつの間にか隣へ来ていたミスティ。

 彼女は満面の笑みで笑いを口から漏らしていた。


「いえ、皆さんの反応が想像通りで……やっぱりアリトさんは凄いんだと、改めて認識させられました」


「うーん、俺としてはそんな大それた事をしたつもりじゃないんだけどなぁ」


 けど彼らの喜びようからして、きっと凄い事なんだろう。


「皆、一旦家へ戻り《貯水スライム》を持ってくるがよい」


「貯水スライム?」


 聞き慣れない単語が村長の口から飛び出してくる。

 名前からして何となく想像出来るが、念の為ミスティにどんなモノか聞いてみる。


「ミスティ、貯水スライムって何なんだ?」


「貯水スライムですか? えっと、水を貯める性質を持ったスライム何ですけど……ご存知ありませんか?」


「あーうん、成る程ね」


 うんうんと頷いてお茶を濁す。

 要は雨水を貯める貯水タンクみたいなものか。


「アルト殿、雨をこのまま降らせ続ける事は可能ですか?」


「ああ、問題ない」


 貯水スライムに貯めるのか、なら……

 俺は村長に一つの提案をした。


「そ、そのような事も出来ると?」


「多分、ね」


「わ、分かりました!」


 村長は俺の指示通り、村人達が家から持ってきた貯水スライムを一箇所に集める。

 そして村人達を離れさせ、俺はスキルを発動する。


「『ゲリラレイン』」


 途端、貯水タンクの頭上に滝のように雨が降り注ぐ。

 ゲリラ豪雨を連想してのスキル発動、天候操作ってくらいだからこんな事も出来るだろうと考えたのだ。


「こ、これは……!」


 ミスティが口をあんぐり開けてぼーっとしている。

 余りの衝撃に開いた口がふさがらない……そんな感じだ。


「俺が前住んでた地域にはさ、こういうゲリラ豪雨っていう局地的な大雨があったんだ、今回はそれを再現してみたんだけど、どうかな?」


「す、凄すぎます! 流石アルトさんです!」


 ミスティはハッとして意識を取り戻すと、興奮しながら俺を凄い凄いと褒め称えて始めた。

 他の村人達の反応も大なり小なり驚いてる。


「ん……?」


「…………」


 そんな時、一人の男と目があった。

 あれはさっき、俺に突っかかってきた金髪の……


「……ちっ」


 金髪は舌打ちをすると、何処かへ行ってしまった。

 その視線は敵意が込められたもので、俺は何となくクラスメイトの事を思い出し気分を悪くする。


 あいつ……危険だな。

 ああいうタイプが一番、何をやらかすか分からない。

 その癖事が起きると途端に言い訳を始め、罪を俺などの目立たない生徒になすりつけようとするのだ。


「なあ、ミスティ」


「はい、なんでしょうか?」


「さっき俺の事を見ていた金髪の男、名前わかる?」


「ああ、ラックスの事ですか」


「知っているのか?」


「はい、私の幼馴染です」


 幼馴染、なら仲はいいのだろうか。

 とにかく、ラックスという名は覚えといて損は無いな。




 ♦︎♦︎♦︎




「えっと、ここから先が《闇夜の森》と呼ばれている、モンスターが沢山いる危険な森です」


「へぇ、モンスターね」


 その後、俺はミスティに村を案内されていた。

 食料品や雑貨などを売っている商店街、子供達の遊ぶ遊具が置いてある第二の広場。


 住んでいる本人達は小さな村だと言っているが、俺からしたらそこそこ広いと感じた。

 現代日本とこの異世界では、土地の広さの感覚が違うんだろうか。


 まあ、そんな感じで村を周り、最後に訪れたのが《闇夜の森》と呼ばれるモンスターエリア。

 森の周りには、モンスターが入ってこれないよう特殊な結界が敷かれていて、こちらから森へ入らなければモンスターの脅威に怯える事は無いそうだ。


「因みにそのモンスターって、どの位強いの?」


 興味本位で聞いてみた。


「そうですね、下級の弱いモンスターなら、武器を持てば子供でも退治出来ますけど……中級以上のモンスターは、しっかり訓練をした騎士や魔法使い、冒険者じゃないとそうそう倒す事は出来ません」


 当たり前に騎士や魔法使いって単語が出てくる辺り、ここは異世界なんだなと思わされる。

 ま、直ぐに適応してる俺も俺で異常だが。


「この森には誰も近づかないってことね」


「はい、それは村の掟でも決められています」


 俺は遠くから森をじっくり見つめる。

 誰も入ろうとしない危険な森……か。


「どうしたのですか?」


「いや、何でもない」


 誰も寄り付かず、人目もつかない。

 だからこそ……悪用する奴は必ずいる。

 脳裏に浮かぶのは、ラックスのあの視線。

 少し、気をつけた方がいいかもな。


「ごめん、次行こう……って、もう夕方か」


「はい、家へ戻りましょう」


 俺はミスティと並んで帰路に着いた。

 途中に出会う村人達は、皆んな俺を尊敬視していた。



 ……一部を除いて。




 ♦︎♦︎♦︎




「おい、準備は出来てるか?」


「ああ、いつでもやれるぜ」


「あんな余所者に、村をかき乱されてたまるか」


「……ミスティ、なんでお前はあんな奴を……」


 嫉妬の悪意が、アリトを蝕もうとしていた。

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