行動
※この物語はフィクションであり、事件、団体、出来事などとは一切関係ありません。
僕は高倉について行って、すぐに避難している人々の場所へと辿り着いた。
今いるのは大体で言えば、40人から50人位だろうか、こんなに人数が少なかったのかと僕は疑問を持ちそうになるが、そう言えばそうだったかもと思い、そのまま考えるのを止めた。
高倉は言った。
「坂谷、相双、佐村、伊川を連れて戻ってきたぞ」
「よかった!」
「伊川、あんただけ爆睡ってマジで笑えたけど!」
「死んでなくって良かった!」
佐村さん達が嬉しい顔をしてこちらへと走って来てくれた。
ふと、誰かが足りないと感じた。
「あれ? 住村は?」
そう、住村が居なかったんだ。
仲間は意味の分からない話に頭を傾げており、坂谷が代わりに僕の他、中身に訊いた。
「えっ? ……住村って飛行機に乗ったか?」
「いや、乗っていなかったよ」
「こいつ、動かせない位、爆睡してたから、夢とごっちゃになったんじゃない?」
「だな、伊川の奴まだ寝ぼけていたのか、さっき客室乗務員がとか言ってたから」
皆が皆、僕の話を信じてはくれなかっただけでなく、僕が寝ぼけていたか夢と現実が混ざったとされてしまった。
かもしれない、そう思うべきなのかと、僕はそれこそ否定しようとした。
丁度、客室乗務員の男性が確認名簿を持ってやって来て、
「君らで全員かい?」
そう言ってきて、僕は咄嗟に客室乗務員が持っていた名簿を勝手に奪って確認した。
無論、海外空港会社だった為か、全てが英語で記載されていた。
でも、日本人の名前なら、独特な分すぐに分かった。
だが、この名簿にはやはり住村の名前が無かった。
それどころか、なんか、違和感のある名簿だ。
所々抜けていたんだ。
まるでその人が消えた、そんな感じが僕にはどう言う訳か分かってしまった。
「あ、あの……」
「ご、ごめんなさい!」
客室乗務員に名簿を慌てて返した。
辺りは乗客と他客室乗務員数名だけで、機長や副機長が居ない事に気が付いた。
だからか、先に避難していた坂谷に訊いた。
「なぁ、機長と副機長はどこ?」
「それが、避難する際、機長達が最後に確認後、避難するのが鉄則なのは知ってるだろ?」
「うん、それは再現ドラマとかでよく知ってるよ。あっ……」
こういう再現ドラマと共に説明も結構入っているので自然とよく覚えていた。
同時に最後に残っていたのは僕と僕が目を覚めるまで待っていてくれた高倉だけだった事で機長達が最後の確認を怠ったのだと理解した。
「実はな、客室乗務員が避難時に、機長達が出て来ないから操縦室へと機長達の様子を見に行ったら、もぬけの殻だったそうだ」
「それで、高倉が僕が目を覚まさないから?」
高倉は腹を立てて言った。
「というより、あの中央にいる奴が、最初目の覚まさない奴は置いて行くって煩くて、息しているから俺が残るって言ったんだ。他にもお前の起きるのを待つべきと言ってくれた奴と客室乗務員達もいたから、俺だけが残る形で、渋々了承したんだ。だったら、客室乗務員1人付けろってえぇの」
かなり怒っていたが、なんだろうか、確かもう1人居たようでいなかったような気持ち悪い感覚へ陥った。
そんな気持ちで考えてしまっていたが、高倉が言っていた中央にいる人を僕はまだ知らないから、見てみると、30代位のアメリカ人だろうか金髪の坂谷よりも背の高くガタイがしっかりした男性が立っていた。
客室乗務員が名簿と人数を確認し、他の客室乗務員にも見せた処で、男性が同じように確認後、
「全員避難出来たようで、良かった。私はグリムス・ジャンノックス、米軍に所属している。皆が集まった事だし、自己紹介を兼ねて現状報告し合わないか?」
グリムスの案で皆が皆、納得した。
最初にグリムスが近くにいた50代位の男性から自己紹介が始まった。
「え~と、私は成田健三です。サラリーマンでアメリカ出張だったんですが、まさかこうなるとは……」
成田と言うと次々に自己紹介を始めた。
僕は何となく、殆どを聞き流した。
はっきり言えば、約50人もいるんだ、全てを把握出来ない。そう思って聞き流しているが、半分自己紹介を終えた辺りで、20代女性が自己紹介を始めるが、自己紹介を始める前に僕や仲間は誰だか分かった。
「あたし、有川恵美で、アイドルメンバー、APD45の現ナンバー1です。本来ならアメリカでプロモーションビデオ取る予定でした」
そう、今は多少落ち着いたが、昨年はかなりブームとなっていたAPD45の大人数アイドルだ。
有川恵美はその中でトップ、だからか、何人かは驚いていた。
目はぱっちりで、髪にウェーブを掛けていた。
その隣にいるのが、
「わたしは、同じメンバーの織崎直美です。恵美と同じ理由です」
ナンバー2であるアイドルでメガネを掛けていて、ネットとかで見るとメガネちゃんとファンから可愛がられていると言う噂だ。
近くに居るのは、多分APD45のメンバーが複数いた。
もちろんそのメンバーも自己紹介するが、殆どは一体誰なのか分からず、多分、ニュースでやっていたAPD運動大会で個人記録を残した無名の子達だと、僕は思った。
実際には別に僕はファンでもなければなんでもないが、一々ニュースにしていたので、嫌でも覚えたんだ。
メンバー紹介も終わって、また次々と自己紹介が始まり、僕達の1つ前まで来た。
よく見れば、銀髪で目は緑色、身長は僕位だが、顔がまだまだ若くまだ中学生位の少年だ。
その隣には、金髪のクセッ毛のある小さな女の子が近くに居た。
先に言ったのは銀髪の少年で、
「オレは冬美也・F・神崎で、中学3年で丁度実家に帰る予定だった。で、この子はお前の娘だろ?」
どこかの由緒正しい所にでもいたのか、ミドルネームが入っていて、実家という事は日系アメリカ人なのかと僕は思った。
で、その神崎と言う少年がお前の娘と言ったのが、
「あぁ、そうだ。アリサおいで」
なんとあのグリムスだった。
アリサはあまり父であるグリムスに懐いていないのか、何故か神崎にくっついたままだ。
高倉は鼻で笑って、
「自分の娘なのに信用無いなあのおっさん……俺は――」
自己紹介を始めた。
僕達も高倉に続いて自己紹介をして、全員あらかた終わった。
グリムスが全て終わったのを見て、大きな声で言った。
「ここにいる32名が遭難者であり仲間だ!」
直後僕は無意識に辺りを見渡して、今いる人数を僕なりに数えた。
が、数が合わないんだ。
今いる数が30人しかいない……。
不意に僕以外誰か気付いていない人がいないか見た。
誰も数えている人はいなかったが、先程の神崎って言う奴が妙に驚いていた。
でも、頭を振って考えるのを止めた気がした。
まぁ、僕でも考えはよく止めるよな。だって、なんだか考えちゃダメな気がしたから、絶対余計な事を考えて自滅したくなかったんだ。
とりあえず、グリムスって奴は米軍の人間な分、サバイバル経験があるのか、機長達がいないせいで、客室乗務員達も彼に頼るしかなかった。
僕はまた考えるのを止めたら、グリムスはまだ話を続けていた。
「ではまずは、食料の確保だ。飛行機に乗っている荷物および貨物を持ってくる。燃料が何かの引き金で引火する可能性もあるので、その辺は私と仲間で持ってくる。皆はまずここで待機し、食料確保後、今後について話し合おう」
よく見れば、自己紹介の流れを無視して居た為、気付かなかったが、7人もの屈強の男達がグリムスの後ろに立っていた。
グリムスは宣言通り、飛行機から食料を手に入れる為、客室乗務員の男性を2名連れ、先程墜落に等しい不時着場所へと足を運んで行った。
勿論、グリムスは娘アリサに声を掛けるが、アリサは神崎から離れなかった。
グリムスは仕方が無く、行った後、僕はつい、神崎に話を掛けた。
「君って女の子にモテるタイプなんだ」
怒るかなと思っていたが、呆れながら神崎が答えてくれた。
「いや、彼女いるんだけど、その彼女が空港の時、このアリサって子に優しくしたからか、何故かオレに懐いてしまった」
「……あそっ」
凄く負けた気分になり、悔しくなった。
挙句には、相双が余計な処で大笑いしてくれた。
「ぶははははっ! 伊川は年齢が彼女いない歴なんだよね!」
「おいっ! そこ笑わないで欲しいんだけど!」
すぐに僕は突っ込むが、高倉は鼻で笑い、坂谷は腹を抱えるも声を出さずに笑い、初恋の佐村さんまでもクスクスと笑っていたのに顔を真っ赤にするしかなかった。
神崎に至っては、してやったりの顔だ。
すると、あのAPD45の有川がやって来て、
「へぇ、彼女いるんだ君?」
神崎に声を掛けてきた。
普通のファンなら緊張、普通の人でも芸能人で多少は驚くだろうが、神崎は至って普通で、
「居るけど何?」
半分投げやりに言っていた。
まっ、中学3年生何だし、あまり興味ないんだろうな、僕もだけど。
そう思っている矢先に、
「あっ、ごめんごめん、へぇ、君達は季節外れの卒業旅行なんだね」
有川はまるで見定めるように、今度は僕らを見て来た。
先に反応したのは坂谷だった。
「季節外れ? ……しかし、アイドルグループが乗っているとはな」
確かにどうして季節外れと言ったかは分からないが、とりあえずその辺は話をずらしてくれたのは、不思議と坂谷に感謝した。
有川は笑って言った。
「えぇ、まぁ、ナンバーワンとツーはビジネスクラスで、残りの子達は、君らと同じエコノミークラスよ」
ランキング圏外に等しい子達はムッとした顔のまま黙っていた。
これが、ランキング方式による差別なのかと、改めて思った。
坂谷がは有川をあまり好意を持たず、とりあえず先を見据えて、
「そうなのか、でも、これからの事を考えて、仲間同士きっちりと約束事を決めたりして、少し連携を取った方が良いと思うが」
周りもある程度納得する内容で、左向うの新婚夫婦なのか、若い男女が坂谷の話を聞き入れ、自分達なりに約束事を決め出した。
が、1人の男性がやって来て、
「君らは仲間だからいいが、ぼ、ぼくは1人なんだぞ!」
何故か文句を言いに来た。
せっかく、有川を追い出せるチャンスが、
「なら、男なんだから、若い子達のボディーガードするとかさぁ、色々あるでしょ? 特にここにいる子達とか?」
男性のせいで、有川が何故か相双と佐村に目をやって笑っていた。
多分、有川って人わざとやってるのは目に見えてわかり、男性もさすがに文句を言い出した。
「あぁ!? お前アーリーだろ! 3ちゃんでの噂は本当だったんだな! ゲスイだって!」
「テレビと舞台の前だけが夢であって、現実はあなた達に合わせる義理はないでしょ?」
男性はオタクなのかなと思いつつ、有川もきっちりオンオフを分けてるんだな、そう考えていたが、男性の名前を聞き流したせいで、
「そういや、あの男の人誰だっけ?」
本当に分からなかった。
たまたま僕の独り言を神崎が訊いてたらしく、
「あの人は太駄屯さんだよ。アメリカで日本のアニメ漫画の展覧会があって乗ったんだそうだ」
太駄さんの説明をしてくれたと同時に、高倉に言われた。
「お前、聞き流してたな」
「あはは、悪い」
軽く汗を流しながら僕は謝った。
高倉は先程の新婚夫婦に指差して僕に訊いた。
「じゅあ、その左向うの夫婦は?」
「……聞きそびれました」
もうこれ以上は止めてくれと、高倉に背を向けるが、神崎が高倉の代わりに訊いてきて、
「伊川さんは、あの意味分からないアイドルグループの名前は覚えてる?」
「まぁ、ここにいるのが有川恵美さんでしょ?」
たまたま覚えていたので口にしてしまい、高倉と坂谷、しかも相双に佐村さんまで、
「……あぁ」
凄く冷めた目で僕を見た。
そう言うつもりじゃないと言いたかったのに、よりによって神崎が止めを刺してきた。
「まぁ、伊川さんはそういう人だった。それだけですよね伊川さん」
「何さりげなく悟ってるの!?」
僕が怒ると、相双は笑って、
「ごめんごめん、アタシもよく分かんなかったし、そりゃアイドルグループナンバーワンの有川はテレビ見てれば大体わかるわよねぇ?」
佐村さんに話を振り、佐村さんも軽く「はい」と言ってくれたので良かった。
高倉は軽く話を戻して、
「因みにあの夫婦は、江本幸一さんと沙都美さんで、新婚旅行でアメリカだったんだそうだ」
きっちり説明してくれた。
高倉にありがとうと言おうとした時、あのグリムス達がやって来て、飛行機から食料をあるったけ持って来た様だ。
グリムスは仲間と共に置いた荷物はかなりの量で、
「とりあえず、これだけあればまずは大丈夫、皆均等に今日の分を配分するから一列に並んでくれ」
そう言って、仲間の1人と合図を送り、荷物から皆均等に分けて配り出した。
勿論、お腹を空かしている人ほどいち早く並んで、食料を確保しようとした。
飲み物も持ってきてくれたが、飲み物は貴重と言われ、1人コップ一杯までとされてしまい、本当に喉が渇いた時、どうすればいいんだと1人が言うが、
「それはきちんと考えずに飲んだのが悪い」
グリムスに言い返されてしまい、誰も文句も言えず、とりあえずコップ一杯で我慢した。
飛行機には寝る時等に毛布等もあるので、そちらも用意してもらい、とりあえず、夜を迎えても眠れそうだなと軽い気持ちで思っていると、
「就寝時だが、万が一を考え、見回りを行おうと思う。我々もまた人間だ。女性、子供は普通に寝ても良いが、男性には多少的にも協力をお願いしたい」
さすがにそこまではいかないかと思い、げんなりするも、万が一肉食動物とかに会ったら大変だもんなと考えた。
でも、なんだろうか、このもやもやとした気持ちと、恐怖で今にも叫びたい気持ちは……。
それに、夜たき火しながら、たき火番するんであって、別に見回りまでって必要なのかと改めて思ってしまった。
グリムスはそんな僕を見ずに話を進めた。
「まず、男性は皆公平にくじで決めよう、無論我々は必ず1人から2人つくから安心してくれ」
「――で、一発目から、見回りかよ……」
初めての遭難の夜、見回りの初日で僕、昇とそして、
「14歳なら大丈夫だと思ってたんだが……」
まさかの神崎だった。
高倉だったらまだ毒は吐くけど、友達だからいろいろ話せて楽なんだけどなぁとは言えないが、そこは黙ったまま、
「でも、自分の乗った飛行機が、墜落に等しい事故で、訳も分からないジャングルか分からない森の中にいて、いつ助けに来るか分からない状況。はぁ、これだったら国内旅行にしておけばよかった」
年下である神崎に軽く愚痴ってしまった。
神崎は呆れながらも僕に言った。
「意外と伊川さんって適用力あるな」
多分バカにされている気もするが、神崎からそう言った部分はないのは分かり、少し安心して、話を返した。
「いや、まだ実感が湧かないだけ、仲間もいるから平気かも、でも1日も早く救助されて何事もなく無事に日本に帰れればって願ってるよ」
そうだ、不安だって凄いあるけど、実感が無いからまだ大丈夫だし仲間がいるからまだ平気でいられるんだ。
神崎は僕の仲間が眠っている場所を見て、羨ましく思ってか、
「そっか、いいな、あのバカでも巻き添えすれば良かった」
さりげなくとんでもない事を言っていた。
一体誰を巻き込もうとしていたのか、想像上では彼女ではなく、多分友人に当たる誰かだろうと、思うと僕の体から大量の汗が流れたいた。
ふと、神崎の見る方向に目をやり、僕は言った。
「でも、まさか、佐村さんにあのアリサちゃんが懐くとは……」
ちょっとした理由で、佐村さんに神崎にくっついていたアリサが一緒に寝ていたんだ。
神崎もそこは本当に感謝しているらしく、
「ううん、アリサが誤ってコップの水を零して、泣きそうな時、分けてくれたのが嬉しかったんだろうよ。寧ろ感謝している。父親とは寝たくないのか嫌がっていたし、他の人に懐いて一緒に寝てくれたんだから」
たまたまアリサが水を飲もうとして、手を伸ばしらぶつかった形となり零してしまい、グリムスよりも神崎が仕方がないと先に水を分けようとしたら、佐村さんが「まだ飲んでないから」と言って、分けてあげたのがきっかけで、夜も安心して佐村さんに預けれたのが、本当に嬉しかったんだろうな。でも、どうしてアリサは父親であるグリムスよりも神崎に懐き、しかも寝る時だって、佐村さんの隣だったし、なんでアリサはそこまでグリムスを嫌うのか分からなかった。
ただ、アリサの印象は意外と深いモノだった。
「ねぇ、そういえば日中からアリサちゃん声出してないよね?」
そう、一切声をまだ出していないのだ。
先程の水を零した際、声は多少聴こえづらい出していたのは知ってはいたが、話したかといえばそれは無かった。
「実はオレも聞いてない」
「んっ? えぇ、マジで?」
「だって、彼女にすら声出してないんだぜ? たまたまオレを見て、すがる様にくっ付いたみたいなもんだ」
なんと神崎すらアリサの声を聞いてはいなかったのだ。
ただなんとなく想像がついてしまう、
「声も出さない、お父さんに懐かないってことは……」
もしかしたらグリムスに虐待か何かされていたのではないかと僕は思ってしまった。
しかし神崎は言った。
「さぁ、でもアリサしか分からないからあんまり想像したくないな。それに勝手に想像して違っていたらどうするんだよ」
「た、確かに」
万が一ただの擦れ違いだったら、本当に失礼な事だ。
更に話を続けようとしたら、グリムスの仲間である1人が、
「いつまでちんたら話しているんだ。もう見回り終わったなら、お前らもう寝ていいぞ」
注意されるも、見回りを割ったのならもう寝ていいと言われたので、そそくさと神崎と僕は就寝した。
そして3日も過ぎたが、誰かが探しに来る気配もなければ、他の飛行機音すら聞こえない。
さすがに周りも不安な声も上がっていたが、意外にも僕は安心していた。
安心、一体何に安心しているのかは全く分からない。
ただ、30人のままだからだと言えば、そうなのだが、きっとそれを言ったら、僕は変な奴に見えそうで嫌だった。
とりあえず、高倉に何か話そう、毒は吐くけど、ある程度は皆も盛り上がるから、少しは安心できた。
「ねぇ、高倉、大分日が経ったけど、とりあえずまだ探し中なんだろうね」
だが、高倉は言った。
「……今はお前をいじる程、余裕はないよ。もう3日過ぎたんだ。そろそろ考えなきゃいけないんじゃないのか?」
返って真剣な事を言われて、バツが悪くなってしまった。
なんとなく、周りも僕の言葉のせいでより一層空気を悪くした気がした。
すると、グリムスがまたリーダーを買って出て、また言い出した。
「もう3日は過ぎ、捜索中であると願いたいが、やはり何人かで動くグループと捜索中である捜索隊に見つけてもらう為、ここに残ってもらうグループを作ろうと思う。異議のある奴はいないか?」
このまま待つべきだと、僕は思ったし、周りも思っていただろうが、残念ながら、半数は日本人なせいか、何も異議を唱える者はおらず、無論他の外人も納得していた。
皆が納得したわけではないが、多分そうするしかないとも思えた。
が、そう思っているのは一部を除いてであって、言い方を悪くして言えば、また有川がでしゃばってきた。
「あの~、1つお願いあるんですが良いですか?」
「内容によるがなんだ?」
雰囲気ではあるが、グリムスはムッとしていたように見えたが、内容だけは訊こうと言う姿勢だ。
やったと小さく言い、有川はお願いを言った。
「女子グループを作りたいんです。もちろん、信用に値する男性を入れてですがね」
「何故?」
「理由は簡単です。多分、運動神経に長けた女子ならまだしも、普通の女子は基本動くグループに省かれるからでーす」
有川の理由を聞いたら、納得せずにはいられなかった。
確かにその通りだ。グリムスの様な軍の人間である女性ならまだしも、ここにいる女性は皆、動くのには不安があった。
グリムスは自分の仲間と一時話し合い、そして有川に答えた。
「……良いだろう。ここに私の仲間を1人と、女性達で残してもらいたい男性を決めてほしい。無論、叶わない場合もあるので覚悟しておくように」
有川は嬉しそうに、ただ周りにいたAPD45のメンバーは不服な声を上げていた。
やはり、リーダーには向かないタイプなんだろう。だからこそナンバー2である織崎がリーダーとしての素質が充分にあると言えた。
何故なら、不服な声を上げたメンバーを宥めながら、決して有川の悪口で終わらせず、むしろこの3日で好感のもてる男性をと話しを進めていたのだ。
ただ、やはり亀裂はある様で、織崎が有川に目をやると、有川はにやっとわざとらしく笑い、織崎は睨みを利かせた。
普通に考えれば、女性はアリサみたいな女の子を含めれば、12名程居て、大半はそう、APD45が占め、それに新婚夫婦である江本夫妻だって、2人で別行動するはずがない。
そこを踏まえると、平等に半分と考えて15人ずつ、いや、動くグループはグリムスのメンバー1人を除いても6人は動く、で、更に考えると客室乗務員の男性だって数人いて残る側と動く側に自然と分けられてしまうから、
「はい……僕ですね、動くグループ……てか! なんで僕だけ!」
僕、伊川昇が動くグループで、何故か他仲間全員待つグループになっていた。
まず突込み係である高倉が言った。
「分からねぇよ」
そりゃ分からないよね、僕だって分からないんだよ。
相双と佐村さんも言った。
「なんか、絶対あんた選ばれそうだからねぇ」
「亜美瑠ちゃんと一緒に伊川君を待つグループに選んだんだけど……」
僕の目から汗が止まらないが、坂谷に言われました。
「多分、お前意外と影薄いから、それにあそこにいるなんか良い感じにオーラ出している男いるだろ? あいつ本名名乗ってたから気付かなかったけど、京藤彰将だよ。まさか、一緒に遭難してるとはな」
「うっそ!」
「嘘じゃない、京藤の本名は赤村京谷だったから、気付くやつ殆どいなかったよ」
まさか、最近ブレークして有名になった俳優の京藤彰将がいるなんて気づきもしなかった。
しかし、名前の一部分を逆にしただけだったとはと、思うと意外と芸能界いや事務所もいい加減だなと思ってしまった。
相双は続けて説明してくれた。
「一番は女性陣の半数がAPD45だったからだし、言っても聞かないし、むしろ男性身内全員を待つグループにするのは反対って太駄って奴が茶々入れちゃって、それであんたが外されたのよ」
「えっ」
どうやら、僕は太駄に足を引っ張られる形で、動くグループに移動されたんだ。
しかも佐村さんによれば、
「元々、APD45の子達の中に、高倉と坂谷に興味ある子達が押したらしいから、江本夫妻は奥さんが押したから仕方なく待つグループになったんです」
ある程度良い男をと、選ばれたのが高倉と坂谷だった。
止めにまた高倉が言ってくれました。
「要するに、平凡のお前だけが白羽の矢に立ったんだと」
「……もう耳痛いから話さないで」
平凡程、損するのはなんだかなと僕は思ってしまった。
でも実はもっとも一緒にはなりたくない動くグループには、
「だから女って嫌なんだ! 結局信用イコール美形男子ばっかりでよ!」
あの太駄がいた。
そうだ、もう少しマシな動くグループはいないかと僕は辺りを見渡し、ふと神崎に目をやったが、どうせ待つグループだろうとさりげなく目を反らすと、いきなり僕に神崎が睨みを利かせて言った。
「お前、オレも待つ側だと思ってるだろ? オレなんかそっちに居たくないから、動く側に入ったんだよ」
僕は途中で硬直したが、
「えっ……良かった! 仲間がいた!」
なんだか、少し会話をした相手だけでも今は嬉しかった。
神崎は怒って、
「だから、オレは自分の意志で動く側に入ったんだって言ってんだろうが!!」
そうは言うけど、一緒ならもう別に良かった自分が居た。
やはり、屈強の男達に客室乗務員が2名と複数の男性しか動くグループはいないし、話し相手もいない息苦しい所よりも、1人でも話せる相手いるのはなんとも心強い者はいなかった。
グリムスと屈強の男達が荷物を持ち、
「では、君達もこちらを持ちなさい」
それぞれに荷物を持たされたが、ふと、僕にもリュックサックがあった筈だが、あぁ、しまった多分あの時、椅子の下に置いてあったせいで、墜落時にきっとどこかへとリュックサックも転がってしまい、何処かへ行ってしまったんだろうと思うと、色々と入っていたのにと内心がっかりしてしまった。
だけど、これも日本に帰ったら、また揃えようとも思い、無理矢理でもやる気を出した。
何が入っているのかと、とりあえず確認すると、やはり食料や誰の物なのか分からない、腕時計やらボールペンやらメモ帳、何故か懐中電灯まであり、しかも何に使う気でいるのか理解不能な、スーツケースベルトまで入っていた。
「何だこれ?」
僕がスーツケースベルトを持って言うと、グリムスは言った。
「一応必要最低限の物を揃えてみた。スーツケースベルトも必要な場合もあると判断したからだ」
しかし本当に何に使う気かと僕は思っているが、周りも勿論「こんなのいるか?」「いらなそうだよな」といった声が聞こえてきた。
でも、必要性があるから持って来たと言う訳だから、きっと何かに役に立つだろう。
そうして、ある程度持たされた荷物を確認後、
「では、我々は町探し及び救助隊との合流の為、出発する!」
グリムスの声と共に、動くグループは出発した。
佐村さんと離れるのはちょっと気が引けるけど、まずはグリムスの言う通り、他の人間との合流が必要だった。
僕ら動くグループは待つグループと離れ、よく分からない森なのかジャングルなのか木々の生い茂る中へと入って行った。
佐村は皆を見送ってから、神崎にアリサの面倒を頼まれて居た為、アリサを見ようとした。
「さて、アリサちゃん、一緒に……あれ? 亜美瑠ちゃん、アリサちゃんどこ?」
「あれ? そういえば? トイレ……いやいや違うか」
アリサがいない事に気づき、皆も周囲を探すが、アリサは一切出てくることもなく、待つグループにアリサの姿がどこにもなった。
数分、いやもう数十分は経っただろうか、木々の生い茂り方は人間が入らない場所ほど、足の踏み場や視界が充分整備されておらず、先に歩いているグリムスとその仲間3人と中央が僕ら、最後尾にはその2人だ。
残り1人は待つグループにいて、ん? あれ? 確か、グリムスの仲間って6人だっけ?
僕は考えるのを止めようとするが、段々と段々と恐怖はやってきた。
成田さんと言う方が、足を滑らした。
慌てて僕が駆け寄るも、てか成田さんって誰だ?
そうだ、きっと、体半分……空間に食べられているあの人だ。
僕はあの時の覚えていない筈の、客室乗務員の女性が宙に浮かびながら嫌な音を立てながら食べられていた記憶だ。
なのにすぐに記憶は僕の脳から離れていく、これこそが恐怖だった。
居る筈の人が、何かに食べられ、その何かはもう記憶すら消えて、挙句にはいる筈の人も消えて、どうなっているんだ。
僕が頭がおかしいのか、いや多分あれだ。不時着して訳の分からない環境に置かれたから、不安がおかしい方向に向いたんだそれだけなんだ。
そう思いたかった。
なのに神崎は狂ったようにグリムスに言った。
「もう我慢ならねぇ!! グリムス!! ここで何人、“人”が消えた!!!?」
この中で最年少、狂いたいのは無理からぬことだ。
ただ、何が我慢なのかさえ、僕は分からない、だけどなんだろうか、その狂ったような声に僕は自然と賛同出来た。
グリムスは冷静に神崎に反した。
「何人とはなんだ?」
神崎は本気で殴りかかろうとするが、仲間3人が神崎を抑え付けるも、神崎は言った。
「とぼけんなよ! 今何人いるか数えてみろよ!」
グリムスは人数を数えて言った。
「13人、それがどうした?」
しかし神崎はこう続けて同じ質問を反してきた。
「じゃあ、今何人!」
グリムスは深いため息を吐き、もう一度数え直して答えた。
「“12人”だが?」
この瞬間、僕は背筋が凍る様に恐怖が走った。
さっきの嫌な感覚は本当だったと言う現実に僕の理性が崩壊しそうだった。
急に太駄は話しに割り込むように大声で叫んだ。
「いい加減にしろはこっちだ!! こっちが不安で不安で心が折れそうなのに! お前、今の状況把握して言ってんだろうなぁ!!!!」
他の男性ですら、太駄に賛同して、「なんで嫌な思いをこうも煽るんだガキ!!」「もう嫌だ! お前のせいでもう無理だ!!」次々と声を荒げだした。
ただ、それ以上に太駄のせいでグリムスよりも神崎に刃を向けたのは、僕的に間違っている気がした。
僕はこの状況でもし、神崎の味方になれるのならなりたいし、もし仲間がいれば、きっと僕の行動を非難しても必ず理解してくれるはずだ。
だけど、だれ1人いない状況では僕はとても恐怖に打ち勝つほどの心を持ち合わせていなかった。
グリムスは深呼吸して言った。
「静かに! 静かに!! 今叫んだお前達、スーツケースベルトを出しなさい」
太駄達が何する気かと不安になりながら、グリムスにスーツケースベルトを渡すと、グリムスは続けて説明した。
「これは、とても頑丈でね、こういう時にこそ、拘束などにも使えるんだ」
僕はその説明にゾッとした。
神崎もその言葉に理解を示し、
「は、離せ!! オイ、コラッ!! い、嫌だ!!」
すぐに暴れるも、神崎の顔をグリムスは殴り、思い切り神崎の髪を掴み、こう言った。
「君ね、こう狂った人間をチームに置いておくと、皆の心を乱すのはいかがなものかと? ならどうするか、分かっているだろう?」
この時、グリムスの顔は人を服従させる為ならどんな事でもやる男だと、この場にいた全員感じた。
そう、グリムスは神崎を使って、わざと皆を服従させるのに成功させたんだ。
ただ1人の犠牲により、皆はこの人には逆らわない方が良い、そう心に強く感じさせ、いくら神崎が叫ぼうが、誰も助けようともせず、皆見て見ぬふりをした。
無論、僕もその1人で恐怖で体を小刻みに震わせた。
ふと、誤って神崎の顔を見てしまった。
訴える神崎の目は、本当に真剣で、反って恐怖さえ感じた。
お前が悪いんだろう、そうだ、勝手に騒がなきゃ、良かったのにと僕は必死にそう僕に言い聞かせた。
神崎は近くの木に拘束した状態で、縛られ、次いでとばかりに猿轡にして神崎の口を塞いだ。
グリムスは言った。
「さぁ、行こう。彼には申し訳ないが、救助隊と合流などで来た時に、解放してあげよう」
皆は大人しく頷き、グリムス達の後を追った。
僕は申し訳なさそうに、神崎を見た時には、神崎は項垂れて一切誰も見ようとしなかった。




