☆3
「なんかさ、もう俺達、ヴァンパイアと戦わなくても良さそうだよね」
無事にピザ屋に辿り着く事ができた俺達は、遅めの夕食を取っていた。
「なに言ってるんですか!ダメですよ!」
「ダメかぁ…。あの魔法少女に任せて、高校生活でも楽しもうかと思ったんだけどなぁ」
例の魔法少女が率先してヴァンパイアと戦ってくれるなら、俺達は手出しをする必要は無いと思ったのだ。ヴァンパイアなんて奪い合う様な獲物ではない。
「はぁ…。全く先輩は…」
亜梨子は溜め息を吐いてから、再びピザに手を伸ばした。
ここのマルゲリータを気に入ってくれたみたいだ。
昔、テレビで紹介されていたのを見て興味を持ち、ネットで店舗を探して訪れた事があった。実際に来てみると、味は美味しいのだが、店内はファーストフード店の様だなと感じた記憶がある。
そんな事を思い出していると、携帯にメールが入った。
「あの子が使ってた銃、分かったぞ」
メールは、銃火器に詳しい友達からだった。
先程の公園で撮っておいた魔法少女の写メを送り、銃の種類を教えてくれるように頼んでおいたのだ。
「89式小銃って言う、自衛隊が使ってる銃だって」
ピザを食べ終えた亜梨子は、頭にハテナマークを浮かべている。
「あの子は、公的機関の関係者である可能性が高いって事だよ。あの銃、市場には出回ってないんだとさ」
ポケットからシガリロの缶を取り出し、一本抜いて、愛用の赤いバーナーライターで火を着けた。ウィンドミル製で、葉巻の着火に便利なのだ。
「なるほど」
今はジャケットにジーンズという私服を着ているので、年齢確認をされる事も無い。前に高校生をやっていた時もそうなのだが、実年齢より上に見られるからだ。若く見られるようになったのは、25歳以降。
それに、繁華街の飲食店で年齢確認をされる事なんて、ほとんど無い。万が一されたとしても、成人している年齢の記載された身分証も持っている。昔の自分のものだが、まだ有効期限内だ。
亜梨子もその辺は分かっているので、今回は喫煙を咎める事はしない。
ちなみに、彼女の私服は、ティーシャツに黒いミニスカートで、パーカーを羽織っている。実年齢通りか少し幼く見えるので、年齢確認等に関しては、こちらの方が心配だ。
「公的機関がヴァンパイアの存在を認識しているとしたら、俺達も気を付けて行動しないとな」
「はい」
ヴァンパイアの存在を認識しているという事は、それを追う俺達の存在も知られている可能性がある。
先日の魔法少女の反応を考えると、まだ俺達の個人情報までは掴んでいないのかもしれないが、それも時間の問題かもしれない。
「問題が山積みだな。ハァ…」
溜め息と共に吐き出された紫煙が、天井へと昇っていく。
「溜め息吐くと、幸せが逃げちゃうんですよ?」
亜梨子は、俺の様子を見て苦笑いしていた。




