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☆エピローグ2

「ま、会えるわけないんだけど…」


 俺は、都立芝公園高校の前に来ていた。修復されたこの世界では、在校生ではなく卒業生なのだが。

 あれから半年。季節は秋になっているというのに、仕事の合間を見ては、こうして学校の近くまで来ている。


(通報される前に、止めなきゃな…)


 卒業してからは、かなりの年数が経つため、当時の教職員はすでに在籍していないだろうし、部活にもOBとして顔を出しているわけではないので在校生に知り合いも居ない。

 何より、二度目の高校生活は存在しない出来事なのだ。

 まして、異世界に帰って行った少女が居るはずなど無いのだから。


「やれやれ…」


 駅へ向かう途中にあるコーヒーショップへと入る。よく学校帰りに亜梨子と寄ったエンジ色の店だ。

 コーヒーを買い、喫煙席のある地下へと降りて行く。


(喫煙席は、あまり使わなかったな…)


 背の高いスツールに腰かけ、上着のポケットからシガリロの缶を取り出し、一本抜いて、火を着ける。

 ドライシガーは箱が目立つため、学校に持ち込んでいたのは、このシガリロだった。


「やっぱり、先輩だ!お久しぶりです、先輩!」


 声がした方に振り向くと、芝公園高校の制服を着た黒髪でツインテールの少女が立っている。


「アリス…、なのか…?」

「はい。そうですよ」


 少女は頷くと、学生証を取り出した。そこには、『永倉アリス』とある。


「どうして…?」

「芝公園高校に転入したんです。お父さんとお母さんも一緒に引っ越して来ちゃいました」


 アリスが、エヘッと笑う。


「向こうだと、夜の王のせいで暮らし辛くって。特にお父さんは」


 アリスの父親は、ヴァンパイアの真祖だ。人を襲わないとはいえ、夜の王やユキのせいで、アリスの居た世界ではヴァンパイアというだけで悪なのだ。


「そうだったのか…。大変だったんだな」


 いつの間にか灰が長くなってしまったシガリロを、灰皿に捨てる。


「それに、先輩が寂しがってるかなって…」


 アリスは小声で言って、目を逸らした。


「そうだな。寂しかったよ…」

「じゃあ、なんであの時に止めてくれなかったんですか!?」


 アリスがこちらへ向き直り、声を荒げる。


「本当の俺はこんな歳だ。止めるなんて、できるわけないだろ?」


 アリスの上級生だったのは、ほんの一時の幻だ。本当の俺は、三十歳を過ぎている。


「歳なんて関係ありません!私は、ヴァンパイアなんですよ?人間の時間の流れとは違う時間の流れの中で生きてるんですから」


 たしかに、ヴァンパイアは老いない。生まれつきのヴァンパイアでも、ある一定の年齢で成長が止まる。

 しかし、アリスは外見年齢と実年齢が同じくらいで、本当に若い。


「そうは言っても…」

「先輩は、私の正体を知っても優しくしてくれました。それを今更、突き放すんですか?ここまで追いかけて来たのに…」


 アリスの目に涙が浮かんでいた。


「分かった。俺の負けだ。本当は、ずっと会いたいと思ってた。ユキを倒さなきゃ、まだ一緒に居られたんじゃないかって後悔する事もあった…」


 アリスの頭を優しく撫でる。


「本当に…?」


 アリスが顔を上げ、上目で俺を見つめた。


「あぁ。また一緒に居てくれるか?」

「私はヴァンパイアなんですよ?それでも良いんですか?」

「そんなの関係無い。それに、俺にはヴァンパイアの呪いは効かない。知ってるだろ?」


 アリスは、頭に乗っていた俺の手を取り、微笑んだ。


「これからは、ずっと一緒ですよ!先輩!」

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