☆13
「せっかく新情報を教えてあげようと思ったのに、不満そうね」
かおりから敵のアジトが分かったという話を聞いた週の土曜日、俺と亜梨子は再び彼女に呼び出された。
今は、学校の最寄り駅から大通り沿いに少し歩いたところにある、緑がイメージカラーのコーヒーショップに来ている。
「いや、新しい情報はありがたいんだが、ここの店内は全席禁煙だからなぁ…」
ここのチェーンは、コーヒーの香りを損なうとかで、全面禁煙なのだ。喫煙席は、一部の店舗にあるテラス席のみ。
学校の無い日ぐらい、喫煙できる店に入りたかった。
「そういう事ね。晴れていれば、テラス席で煙草を吸えるんだけど…」
ここは数少ない喫煙席がある店舗なのだが、生憎の雨で残念ながらテラス席は使用できない。
「まぁいいさ。車でも眺めながら話を聞くよ」
「先輩!真面目に話を聞いてください!」
自動車メーカーのショールームと併設されているので、隣のスペースに新車が展示されている。しかし、車に目を向けた途端、亜梨子に怒られた。
「普段は紅茶ばかり飲んでいるのだけど、ここは私のお気に入りなの。だから、少しだけ我慢して」
「少しだけ、ね…」
溜め息を吐く俺に、かおりが苦笑いを浮かべていると、俺達の席へ向かって、癖の強いロングヘアーの少女が近付いて来た。
「かおりオススメの店だって言うから期待して来のに、食べ物の種類が少ねぇじゃねぇかよ~」
少女は、スコーンやドーナツが大量に載ったトレーをテーブルに置いて、かおりの隣に座る。
「紹介するわね。今回の作戦のために応援に来てくれた、原田あい(はらだ あい)さん。火の属性の魔法少女で、槍を使うわ」
「よろしくな」
あいは、スコーンを頬張りながら、空いている片手を挙げた。
「よ、よろしくお願いします」
「よろしく、でいいのかな?」
亜梨子は、若干、引いている様子だ。
「あんたが、噂の拳銃使いかい?」
あいが鋭い目で質問してきた。
「噂の…?」
「あぁ。魔法少女でもないのに、かおりとタメ張るくらい強いって聞いてるぜ。そっちの双剣使いも強いんだろ」
言うだけ言うと、あいは再び食べる事に集中し始めた。
それを確認してから、かおりが口を開く。
「本題に入るわね。吸血鬼の本拠地は、麻布にあるわ。明日の夜、乗り込む事になったの」
驚いた事に、かおりの新情報は今回の件の核心だった。
「おいおい、それを今、俺達に話していいのか?」
「大丈夫よ。安藤さんの許可は出てるもの。それに、勝手に動かないって約束してくれたじゃない?」
「それはそうだが…」
「それにね、もし、あなた達が動いた場合は、それをサポートするって、安藤さんは言ってたわ」
亜梨子が驚いた様子で、こちらを見る。
俺は、思わず笑みが漏れてしまった。安藤は、前言通りに俺達をフォローするつもりらしい。
「それにしても、随分と早く動くんだな」
「吸血鬼どもが逃げちまったら、わざわざアタシが来た意味ねぇだろう?」
あいがニヤリと笑う。
安藤は、戦力を集めて迅速に殲滅するつもりなのだろう。役人にしては優秀な指揮官だ。まぁ、彼と同じ存在なら、優秀で当たり前なのだが。
「そういうわけだから、明日の夕方、オフィスに集合ね」
かおりは、そう告げて、俺達にウインクした。




