☆10
「そっちへ行ったわよ!」
かおりの声が響く。
ヴァンパイアが、かおりに追い立てられて、俺の方へと跳んで来た。
左脇のホルスターから拳銃を抜き、右手で狙いを定める。
パァン!
銃声と共に、ヴァンパイアの眉間を銃弾が貫通した。
ヴァンパイアは灰になり、崩れ去る。
(あとは、亜梨子の方か)
かおりに追い立てられた際に、二体のヴァンパイアは左右に分かれて逃げたのだった。しかし、それは作戦の内だ。左右にそれぞれ、俺と亜梨子が待機している。
(まぁ、向こうは心配無いだろう)
亜梨子は強い。普通のヴァンパイア等、相手にならない程に。
上着のポケットからドライシガーを取り出し、火を着ける。いつもシガリロのみというわけではない。ドライシガーやプレミアムシガーを吸う事もある。今は、ヘンリーウィンターマンのハーフコロナだ。
「お疲れ様」
かおりと亜梨子が、やって来た。
残りを片付けたのだろう。
「永倉さん、すごいわね!圧倒的だったわ!」
「ありがとうございます」
かおりの称賛に、亜梨子は照れ臭そうだ。
「永倉さんも魔法少女にならない?」
「え…!私は…」
亜梨子が両手を顔の前で降って、否定している。
「永倉さんなら、きっと優秀な魔法少女になれるわよ」
亜梨子が困った表情でこちらを見て来たので、助け船を出す事にした。
「俺は誘ってくれないのか?」
「葉巻を吸ってる魔法少女なんて、ちょっと…。それに、日下部君は男の子じゃない」
かおりが苦笑いしている。
(男の子、ね…)
思わず出てしまいそうになる笑いを堪えながら、数センチ程になってきた葉巻の灰を折る様にして落とす。
「帰りましょう」
「ええ」
話題を転換したかったのだろう亜梨子の提案に、かおりが同意する。
「それじゃあ、私はこっちだから」
一人だけ帰る方向の違うかおりは、変身を解いて制服姿に戻ると、去って行った。
「帰りに何か食べて行くか?」
「そうですね。でも、その前に葉巻は消してくださいね。もうかおりさんの結界は解けてるんですから」
「そうでした」
葉巻を携帯灰皿に捨てて、駅前へ向かって歩き出す。
「私、中華が食べたいです」
「それなら、友達に教えてもらった美味しい店が、駅前にあるよ」
「ホントですか!」
亜梨子の表情は花が咲いた様に明るくなり、足取りも軽くなった。




