噂をすれば―顧問・主人公―
新キャラ登場、です。
誤字脱字等ありましたらご指摘お願いします。
とは言え、実際にライバルキャラルートに入られると困る。非常に困る。
何故なら、このルートでは人が必ず死ぬのだ。や、まぁ大抵のルートで死ぬけど。
ただ、このルートは主人公の座をライバルキャラが乗っ取ったためかどうかは知らないが、他のルートよりも多く人が死んでいた気がする。場合によっては学園崩壊だったかもしれない。
学園崩壊の多さに泣きたくなるね。いやマジで。
今の私は主人公と立ち位置が近いので、かなり危険だと思う。攻略キャラの好感度とかそういう問題じゃなくて、物理的に。
ほら、ゲーム通りなら生徒会に入るのは主人公だけだったわけだしさ。本当なら、私の存在なんてどこにもない。まぁ現実は私が主人公を生徒会に引きずり込んだんだけどね。てへっ。
「あ、美穂ちゃんっ!今日は最初から牡丹祭の準備するから牡丹園に直接来てだって!」
「ん、じゃあ行こうか。あと離れて。自分で歩いて」
相も変わらずへばりついてくる主人公を引き離しつつ、行き先を生徒会室から牡丹園に変える。
今日は昨日より暖かそうでよかった。寒いのは勘弁です。
え?授業中じゃなかったのかって?そんなんとっくに終わりましたとも。
色々思い出してたら気がついたら終わってただけなんだけどね。あ、もちろんノートはちゃんと取ってたよ?様子を見るつもりなのか、毎授業当てられたけどそれにも一応答えられたし。予習って大事。
今は放課後、これから生徒会の活動だ。
HRが終わってすぐに主人公が生徒会室に行こうと誘ってきたため、B組の様子は見れなかった。見に行こうと思ってたのに。残念。
主人公は何故か会計のことは誘わなかった。多分誘っても断られてただろうけど。
「えへへ、楽しみだね、牡丹祭っ!」
「あー、うん、そうだね…招待される側だったら楽しみだったかもね…」
にこにこと上機嫌に話しかけてくる主人公に適当に相槌を打ちつつ、校舎を出る。
いくら昨日より暖かいとは言えまだ寒いな。今日が快晴なのは良かったけど。温室内での準備とは言え、外が雨だと声が通りにくいからねー。
そういえば、今携帯を確認してみたけど、私の方には牡丹園に集合というメールは来てなかったな。
生徒会の様子は確認しているから嘘じゃないのは分かるけど、もしかしなくてもこれは私が主人公を引っ付けて来るのを見越されてる?
…なーんか悔しいなぁ。傍に寄ってくるのは半ば諦めかけてるけど、まだ希望を捨てたわけじゃないんだ。今だって引き離そうと頑張ってるし。無駄な馬鹿力のせいで離せないけど。
あぁもう、早く私じゃなくて男に興味を持とうよ!
なんて虚しい願いを叫んでいたら、牡丹園に着いたようだ。
「あー、しのちゃん、みーちゃん、おそいんだー!」
「あっ、えと、遅れてごめんなさいっ!」
どうやら作業はとっくに始まっていたようで、いつの間にか来ていた会計に怒られてしまった。あれを怒ると言うのなら、だけど。
確か私たちが教室を出た頃にはまだいた気がするけど…一体いつの間に。まぁいいか、関係ないし。
ところでいつの間に会計は主人公をあだ名で呼ぶようになったんだ?今まで盗み見た2人のやり取りではそんな素振りはなかったんだけどなぁ。
主人公の様子からしても、少し驚いていたようだし。ということは初めて呼んだとか?何故?うん、謎だ。
今日は火曜日だから、これが終わったら特訓が待っている。出来るだけセーブして頑張ろうと思う。
ちなみにまだ30ポイントは貯まっていない。ほら、移操の訓練で、線から出るごとに+1ポイント、30ポイントまで貯まったら生徒会室では主人公の隣の席に移動っていうやつ。
確か今は15ポイントくらいだったかな。最近新しいメニューになったから、減らした分も増えてきて少し厄介。
「よ、遅かったな」
「あ、こんにちは、篠崎先輩。先輩方は早いんですね」
気軽に話しかけてきたのは風紀委員長の篠崎先輩だった。
まだ腕に引っ付いてる主人公の視線の険しいこと険しいこと。大変不本意ながら私たちはワンセットと見られているようなので、先輩の視線は生暖かいけど。
この先輩は攻略キャラではないが、そこそこ顔は整っている。更に風紀委員長なんてやっているため、特能も強いらしい。人気も高そうだ。確かめたことはないが。
仲良さげに話すことで起きそうな面倒事はごめんだが、先輩から話しかけてくるのを無下にするわけにもいかない。それに攻略キャラじゃないから、話すのを躊躇する気持ちもあまりない。
これで女子にやっかまれるなら生徒会入りの時点でとっくに…ねぇ。
「あぁ、先生たちもそろそろ牡丹祭の準備で忙しいからな。HRは短いんだよ。お前らのクラスは雷先生だろ?早く終わんねぇのか?」
「あー…あの先生、何故か話長いんですよねー…。いい先生なんですけど、そこだけはなぁ…。あ、内緒ですよ?」
「はいはい、分かってるって」
入学したばかりの頃も思ったが、顧問は何故か話が長いのだ。女子生徒だけでなく男子生徒にも人気があるが、そこだけは頂けない、とはB組の友人談。パクらせていただきました。ありがとう!
「ほぅ、何が内緒なんだ?」
「げっ……いえ、何でもないです」
隣にいる主人公をスルーして先輩と和やかに話していたら、後ろから顧問の声が聞こえた。噂をすれば影ってほんとなんだね。
そちらを向けば、じとーっとした目で見られる。にっこりと笑顔で誤魔化していたら、追求は諦めたようだ。
「はぁ、まぁいいが…ただでさえ来るの遅いんだから早くやれよ」
「はぁーい…」
「はーいっ」
諦めたように注意する顧問には、誰のせいだと言いたい。とても言いたい。
渋々と返事をした私と対照的に、はきはきと返事をする主人公。もしやこれは、顧問フラグか?
私と風紀委員長の会話が中断されるのが嬉しいからとかそういう落ちは止めてほしい。
「じゃ、先輩も頑張ってください」
「おーぅ、お前らも頑張れよー」
篠崎先輩に軽く会釈をし、その場を離れる。ついでに主人公も引き離して、自分の担当場所まで向かわせた。
「あ、来た来た!おーい、安土さん、業者さんが来てるんだけどー!」
「はい、今行きます!」
どうやら牡丹祭で出すクッキーを発注した業者さんの方でトラブルがあったみたいだ。申し訳なさそうに此方を見ている。面倒くさくないといいんだけど。
「こんにちは、どうかなさいましたか?」
「あ、こんにちは。えぇと、発注頂いたチョコチップクッキーなんですが、当方の工場で事故がありまして、申し訳ないのですが――…」
私の願いも虚しく、忙しくなりそうです。
特訓、明日に回してくれないかなぁ。
***
なんていう思いが届くはずもなく。
6時を回ってようやく今日の仕事が終わったというのに、顧問に引っ張られてやってまいりました特能訓練部屋。
「疲れてるみたいだし、今日は早く終わるだろ。頑張れよ」
「はぁーい……」
やる気のない声で返事をしてやりたくないオーラを出しまくってもスルーされました。くそぅ。
ちなみに現在こなしているメニューは少々難しかったりする。体力的な意味で。
色操を使って周囲の景色と同化しながらひたすら線上を走り回るのだ。その状態で、5歩走るごとに移操で5歩先まで飛ぶということを繰り返す。
5歩走る→5歩分飛ぶ→5歩走る→5歩分飛ぶという作業が延々続くのだ。正直飽きるが、集中を切らすとすぐに線からはみ出てしまうため、迂闊に他のことも考えられない。
更に歩数を間違えてもポイントが加算される。完全クリアはまだ先のようです。
能力が伸びるよりも先に、体力が付きそうだ。やったね畜生!
次は別視点…の予定、です。




