マスターの謎 ―顧問・マスター―
第39話
遅くなって申し訳ありません!左の指を骨折してしまいまして・・・(汗
書くのに時間がかかってしまいました。。
ちょっとだけ、小難しい話が入ります。
「ところで、二人はどんな関係なのかしらぁ?」
時々あったマスターが他のお客さんに呼ばれて席を立つ、ということもなくなり、店内の人もかなり減った頃。
生チョコを食べ終え、お替りのコーヒーを飲みつつ3人で談笑していたら、突然マスターがそう聞いてきた。
あれ、説明してなかったっけ?
「ただの担任と生徒ならこんな所までわざわざ連れてこないでしょ。しかも担任の車で2人きりなんんて、ねぇ?」
ふむ、確かにそれもそうだ。
別にただの担任と生徒ってわけじゃないから問題な――いや、ある。私にはある。すっかり忘れてたけど。
「こいつ、後天的な特能持ちでな。俺が特訓を受け持っているんだ。今度生徒会入りもする」
「あぁ、そう言えばアンタ、生徒会の顧問なんてやってたわねぇ」
「…それが何か」
ゴクゴク
「べっつにぃ。似合わないなんて思ってないわよぅ?」
「ならその気持ちの悪い笑いをやめろ」
「ハイハイ。しょうがないわねぇ。 で、生徒会って、ここに気軽に遊びに来れるほど暇な組織だったかしら?」
「…今日休みを取るために昨日まで働いたからな」
ゴクゴク
「あら。あづっちゃんと2人っきりで出かけるために、昨日まで必死こいて働いたのねぇ。ふーん」
「なっ…!別にそういう訳じゃない!俺が久しぶりにお前んとこのコーヒーが飲みたかっただけで!」
「じゃあなんで来た時、仲良くお手て繋いでたのかしらぁ?」
「そ、それは…車から降ろす時に繋いだまま……」
「んんー?よく聞こえないわねー。もっとはっきり言ってちょうだい」
「外すタイミングが掴めなかったんだよ悪いかこの野郎!」
ゴクゴク
「あらぁ、野郎って言ったわね、こんな可愛い女の子に向かって!」
「可愛い女の子とか、どの口が…」
「なんか言ったかしらぁ?」
「何でもないっす」
「そう?ならいいのよぉ」
ゴクゴク
あ、コーヒー無くなっちゃった。
雷先生はここでもこんな扱いなのか。可哀想に。かっこわらい。
マスターの質問への返答を、何故かかなり焦っているように見える雷先生に任せきりにしてコーヒーを飲み続ける。
――ところで、途中の先生の言葉、どう受け取るべきでしょうか。聞きようによっては痴話喧嘩にも聞こえなくもないのですが。
だって、ねぇ。「お前んとこのコーヒーが飲みたかっただけ」で「昨日まで必死こいて働いた」って。
…これは腐向けのネタとして扱うべきでしょうか。それともノーマルなネタとして扱うべきでしょうか。
うん、後者で。別に腐が嫌いなわけではない。ただ理解ができないだけで。
まぁそんなことはどうでもよく。
さて、なんてからかおうかなー?
「安土も、さっきからこいつに追及されそうになるごとにコーヒーを飲んで誤魔化すのをやめろ!」
あ、ばれたか。
「えー…」
「えーじゃない!お前からも何かしら弁解しろ!」
「…お二人は仲が良いのですね。付き合っているのですか?」
「「ぶっ!!」」
一方的に責められたので、その反撃とばかりに爆弾を落としてみた。
ふはは、私のコーヒータイムを邪魔するからこうなるのだ!コーヒー飲み終えちゃったけど。
「どこをどうなったらそうなるのよ!?」
「そうだぞ!俺にそっちの趣味はない!」
「冗談ですよ。本気にしないでください」
ふぅ、これだからユーモアのない方は。とか演技がかった仕草で言ってみる。
「あづっちゃーん?」
「ま、まぁ冗談はこのくらいにしておきまして、」
黒いものを背後に背負ったマスターが笑顔を向けてきたので、急いでマスターから目を逸らして少し引っかかったことを訊くことにした。
「マスターは、暁学園の生徒会をご存じなんですか?」
***
「はふぅ、美味しかったあ」
「あら、そう言ってくれると嬉しいわぁ。会ったのは久しぶりだけど、こんな風にお話したのは初めてよね。楽しかったわ、ありがとう」
「こちらこそお話できて嬉しかったし、楽しかったです!また来ますね!」
「えぇ。さっきも行ったと思うけど、その時はこいつを足にしなさいね」
「はい、そうさせてもらいます。 よろしくお願いしますね、先生」
「あーはいはい、わぁってるよ。 ほれ、とっとと乗れ」
投げやりに言う先生に促されて、あの目立つ赤い車に乗った。やっぱり帰りも助手席。何故。
マスターは店の外でずっと手を振って私たちを見送ってくれていた。周りの目とかは今更気にしないみたい。うん、流石マスター!
随分と沢山喋って疲れたのか、雷先生も口を開かない。私も疲れたので、話す気にはなれなかった。
暇だし眠いけど眠るのもあれなので、先程のマスターからもたらされた情報について整理することにする。
*
「マスターは、暁学園の生徒会をご存じなんですか?」
私がそう聞いた後、マスターは、さも当たり前かのように答えた。
「えぇ。だって、アタシも生徒会役員だったもの」
「えぇっ!?マスターが、ですか!?」
「あらぁ、何気に失礼な言い方ねぇ」
衝撃の事実である。雷先生の方を見てみると、肯定するように頷いていた。
何が衝撃かって、そりゃもちろん――
「で、でもマスター、特能持ってませんよね?」
「ふふっ、そうね。 今は、ね」
「今は――?」
「まぁそんなどうでもいいことは置いといてぇ」
いや、全然どうでもよくないっす。
「オカマとニューハーフの違い、じっくりみっちり語ってあげるわぁ」
――――――…
――――…
――…
…
*
あの後、そんなやり取りがあった。
オカマとニューハーフの違いについては割愛。正直言うと、知りたくなかった。私はノーマルだ!
それに、誤魔化された感が半端じゃないしね。
マスターからは、特能の香りが全く感じられなかった。巧妙に隠しているという可能性も無きにしも非ずだけど、この私が分からないんだ。持っているという可能性は相当低いだろうと考えられる。
いや、別にナルシストとかじゃなくって。恐らく今の日本で最も特能が強いのは私だから。同族を探し出す嗅覚っていうの?説明するのは難しいけど、そういうのがあるんだ。だから、強い特能持ちがいれば分かる。
ちなみにあの店には特能持ちがいることが多い。特能の匂いが移ったような人もよくいる。
閑話休題。
まぁそういう訳で。マスターの特能が弱ければ分からなくても無理はないかもしれないけど、生徒会にいたということは今の生徒会役員程度の強さはあったはず。
ならあの時私が何も感じなかったのはおかしな話なんだ。
更に、マスターのあの言動。
あれは、昔は生徒会入りできるほどの特能を持っていたということ。
特能がなくなる、なんて日本では聞いたことがない。米国にあるとある研究所では特能持ちを一般人にする研究が成功したらしいけど。その研究結果の実施対象者に、日本人は含まれない。
マスターはばりばり日本人のはずだ。日系という可能性もあるけど。マスターはゲームには出てこなかったし設定集にも載っていなかったので、見た目で判断するしかない。
日本人だとすると、その研究の恩恵を受けることは、不可能。
だとすると、偶然条件に当てはまったのか。偶然、あの実験と同じことを起こしたのか。
それはほとんど不可能と言っても過言ではないくらいに有り得ないことだけど、不可能と言い切れるわけではなくて。
だから、要は、何が言いたいかと言うと――――……―――…
***
走り出してからずっと静かな車内で、ふと隣にいる存在が動く気配がした。
「なんだ、どうかしたのか?」
前を向いたまま問うが、答えはない。
信号が赤になったことを確認して、隣に目をやろうとすると、肩に暖かい感触がして。
「…寝たか」
思わずふっ、と笑ってしまった。自分の肩に、安土の頭が置かれていた。勝手に人の肩を使っている安土の方は、幸せそうに寝息を立てている。
朝早くから出て、一日中喋っていたんだ。疲れて寝てしまっても仕方がない。
疲れたといってもそこまででもないのか、今の安土からは香りは洩れてはこない。それにほっとする反面、少し残念だった自分に気が付いて苦笑する。
少しずつ少しずつ、嵌ってしまっていそうで。気が付いたら抜け出せなくなっていそうで。それでも拒めないのはこの香りのせいなのか。それとも―――
「まあいいか」
今は、まだ。そういうこととは遠くありたい。
安土の髪を一撫でして、運転を再開した。
街はもう、その姿を夜に変えようとしていた――。
なんかいっぱい謎を残してしまった気がする。
これ全部回収できるのだろうか・・・




