事情聴取終了? ―生徒会役員(・主人公)―
第25話
遂に主人公が…?なお話です。
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私が実行しようと決意を固めた後も、彼らからの質問攻めは続いた。時折隣からも声が上がるが、まともな質問なのできちんと答える。
いつ実行しようか、タイミングを見計らう。私が質問に答えているときがいい。
「――縄を解こうとしているときは何も見なかったのか?」
丁度雷先生に質問された。
今だ。
「はい、見ませんでした。何かあっても、」
そう言っている間に一瞬だけコントロールをわずかに緩める。
「「「「「「っ!」」」」」」
おー、気付いた気付いた。
「縄を解くことに集中していたので気が付かなかったと思います」
内心こいつら結構有能じゃんやだなー、とか思いつつ平然と続ける。
隣の人は気が付かなかったようだ。お前が一番近いんだけどな。まぁ彼女は自分自身で強い匂いを発しているので、他人の匂いに気が付かないのは分かる。直江先生に特訓を受けているはずなのにあまり成長が見られないのはおかしいとは思うけどね。
生徒会の面々は気が付いたようだが、すぐに驚きを表情から消して元の表情を取り繕った。しかし警戒はしているようで、少し空気が張りつめた。上杉志信もそれに気が付いたようで、怪訝そうな顔をして聞いている。
「み、みなさんどうかしたんですか…?」
だからなんでそんなに君が怯えているんだ。あれか、生徒会室に呼び出された時のがよっぽど怖くてトラウマになったのか。可哀想に。かっこわらい。
まぁだからって私に抱き着く力を強くしていいわけじゃないんだけどね。喜ばせるだけだから、何も言わないけどさ。いい加減離れてほしいなあーとか思ってないよ。
「どうかしましたか?」
不思議そうに聞いてみる。
私は何も分かっていないのだから。
「…いや、何でもないよ」
普段通りの表情のままそう言ったのは、江陰先輩だった。流石は監査。目にわずかに警戒の色は宿しているものの、それ以外は普段となんら変わらない。
「そうですか? では、他に質問はありますか?」
「あ、あぁ。では――」
ほかの役員も警戒はしているようだが、何の変化もない私に拍子抜けしたのか、はたまた一時保留としたのか、質問を再開してきた。
取り敢えず分かったことを整理しよう。もっとも分かったことは少ないのだけど。
まず、彼らは皆そこそこ強い力量の持ち主だ。慣れない色操や移操を操るときは注意が必要かもしれない。一度バレなかったからと言って油断は大敵だ。とはいえ今後の方針についてはまだ決まっていないので、バラすかもしれないのだが。
更に、彼らは恐らく私の特能に気が付いている。いや、正確には特能持ちだということには気が付いている。
彼らが驚いたのは一瞬のことで、すぐに警戒を始めた。その驚きも、何故お前が、という類のものではなく、何故今、とかこの強さなのか、という類のものの様に思えた。
だけど、彼らは恐らく私が何の特能持ちなのかまでは分かっていないと思う。覗き見犯の有力候補にはなっているだろうから、眼操を持っているというあたりくらいは付けているだろうけど。
厄介なパターンだが、一番情報が期待できるパターンでもある。この際こっちからバラしてもいいが、そうするにはまだ早計だ。少なくとも今はどう動くかを見ておかなければ。
ここにきて昨日移操を使いすぎたことが悔やまれる。昨日のお陰で今日も特能を使うのを躊躇している。明日からは使えるだろうけど、さっきのことについて彼らが話し合うのは今日私たちが帰った後だろうから。
まあ過ぎたことを言っても仕様がないので、個人的に気になっていることを聞くことにする。
「あの、私からも質問いいですか?」
「なんですか?」
「犯人って結局、誰だったんでしょうか?」
これはずっと気になっていたことだ。ゲームでは名前すら出てこなかったような気がするし、出ていたとしても覚えていない。それに、私を攫った人がゲームと同じ人とは限らない。
昨日は結局名前は聞けなかったし疲れていて早く寝たかったので訪ねなかったが、今は余裕もあるし犯人の処置についても気になるので、できれば答えてほしい。
ていうか被害者が加害者を知りたいって言ってるんだから知る権利はあると思う。
「あぁ、犯人ですか。 ――3年の男子生徒でしたよ」
「捕まえたんですか?」
「当り前だ。俺を誰だと思っている」
「あー、そういえば暁学園の生徒会長サマでしたねー。大変失礼シマシター」
「ふん、分かればいいんだ」
いや今の棒読み加減聞いてなかったのか。それともそんなことも読み取れないのか。ただのあほの子なだけのような気もする。
ついでにそこで俺たちと言わない所は流石ですね。褒めてないけど。
「動機は白状しましたか?」
「ええ、まあ」
「聞いても?」
どこか言い辛そうにしているため、確認をとる。もしかすると誘拐犯は私の特能の匂いを浴びたのかもしれない。その可能性はあまり高くないと思いたいけど、この人が言い辛そうにしているということは何か言っていないことがあると見ていい。そして、彼らが私に言うべきなのに言っていないことは現状それしか思い浮かばない。
「お勧めはしませんが」
「ならいいです」
この物言いで確信した。やはり彼らは私の特能に気が付いているし、犯人は私の特能に関わる理由で私を誘拐した。あれを誘拐と言うのなら、だけど。
「あれ、自分がなんで攫われたのか興味ないのー?」
「興味はありますが別に聞かなくても問題ないので」
だいたい想像がついてしまったしな。つきたくなかったけど。あぁ畜生。
「まだ質問はありますか?」
そろそろ帰りたいので、打ち切らせてもらう。役員の私の対策会議を見たいけど、どうしようか。まだ不安だからなるべく特能は使わないようにしたいのだが。
「あと一つだけー」
「何、伊山君?」
可愛らしく見えるよう計算された角度で首を傾げて聞いてきた会計。ほんと好きだなお前ら。そろそろ見飽きたぞ。
「みーちゃんってさぁ、
―――特能持ちだよねー?」
はい?え、今ここできますかその質問。てっきりまた後日、って感じになると思ったんだけど。
しかも疑問じゃなくて確認だしね。
ほかの役員の顔をさりげなく窺ってみるが、苦笑いだったりあーあやっぱり的な感じだったりで特に驚いた様子はない。
特に今聞くとは決めてなかったけど彼が聞くことは予想していましたよー、みたいな感じ。余裕があって羨ましいよ畜生。もっとも主人公の方は驚きすぎて固まっちゃったようだけど。気が付いてなかったんかい。
さて、なんて答えようかなー。
ここで肯定すると、どうなる?
ここで否定すると、どうなる?
うん、よく分からん。ゲームでの主人公が関わっていない時の彼らの働きぶりなんて知らないし、ここはゲームじゃなく現実。参考になんてならないし、してはいけない。だけど現実の彼らの行動パターンについての情報はほとんどない。
よし、直感でいきますか。
答えるために、口を開く。
「私は――――…」
ストックが完全に切れたので、不定期になります。
が、なるべく毎日更新するつもりですのでこれからもよろしくお願いします!




