表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暁学園  作者: surumeica
23/48

辿り着いた答えは

第23話


主人公が色々考えるお話。



 おはようございます、みんなのアイドル安土美穂です。今日も私の心と同じようないい天気ですね。


 

 …笑えない冗談はここらへんにしておこう。ちなみに外は結構な量の雨である。どしゃぶりとは言えないまでも小雨では確実にない、そんな感じ。いや本当に笑えない。クラスでの私の立ち位置がいつの間にかそんな感じになっているんだもの。朝登校すればみんなからチラチラ見られ、少しでも笑えば頬を染められ、話しかけたら異常に大きな声できょどった感じで返事をされる。


 え、これ、別に勘違いじゃないですよね。これで勘違いだったら私ただの自過剰意識じゃないですか恥ずかしい。

 別に害はないからいいんだけど、こうも見られていると落ち着かないというかなんというか。


 登校して違和感というかなんというかを感じつつも歩ちゃんに話しかける。歩ちゃんにも私が話しかけると少しきょどられた。ちょっとショック。

 ほんのりと頬を染めた歩ちゃんは非常に可愛いですが見せる相手が間違っている気がしないでもないです。彼氏はどうした。


「な、なあに?」

「あ、ごめん、歩ちゃんと話したかっただけだから特に用事はないんだけどね」

「う、ううん、いいよ。嬉しい」

「え、えっとぉ…」

「ん?どうしたの?」

「やっぱりみんな変じゃない?私が倒れた日から異常に視線を感じるし、なんだか挙動不審だし…」


 小声で相談してみる。とはいえ歩ちゃんもその一人なので、まともな答えは期待していない。


 そして嬉しいと言った時の歩ちゃんの表情の可愛さと言ったらもう!何なんですか貴女はそんなに無防備だと食べてしまいますよ!顔をまっ赤にしてはにかみながら上目づかいでそんなこと言われたら理性崩壊しちゃうじゃないか畜生。いや別にしないけど。


「そ、そうかな…?そんなに変?」

「うん、変。正直ちょっと引いてる」

「!そ、そっか…」


 あちこちで顔を青くした人たちがぶつぶつ呟き始めた。ぶ、不気味の一言だ。

 歩ちゃんまで顔を青くして衝撃を受けたような顔をしながら考え込んでしまった。歩ちゃんには引いてないのに…。



 それにしてもこれは流石に変すぎる。一度よく考えなければ。

 朝のHRの開始を告げる鐘が鳴ったので話すのを止めて席に着く。授業中に考えることにした。



 入学してからしばらくは、特に変わったところはなかった。初日に少々目立ってしまったせいでクラスの面々に顔を名前を憶えられたのは予定外だったけど、みんなの対応も普通だった。

 それに変化があったのは入学6日目、一昨日だ。体育の授業中に倒れて気が付いたら保健室で、しばらく休んでクラスに戻ったら変だった。異常に心配はしてくれたんだけど私と目を合わせようとしないし、私が話をしている生徒は何故かみんな一様に頬を染めていた。特に顕著だった者のほとんどは高校からの外部生で、それ以外の人の中で恐らく中学からの外部生だと思われる人も顕著だったが、高入生ほどではなかった。特能持ちと思われる人たちは外部生ほど反応は顕著じゃなかったが、あまり近寄ろうとはしてこなかった。


 私、気絶している間に何かやったかなあ…。

 目が覚めてからの保健室での会話にも特に不自然なところは…。

 とそこまで考えてハッとした。保健室で思ったことを思い出す。


『黙ったきり私の方をじっと見つめてくる、麗しの保健室の先生』

『直江先生はまだこっちを見ているみたいで視線をばしばし感じる』

『この人絶対なんか勘付いてる』

『眠ると無防備になるし、周りを警戒できない』


 更に、初日の雷先生の言葉も脳裏によみがえってくる。


『コントロールのヘタな特能持ちは色香を発している』


 ……いやいや、まさか、ね。顔から血の気が引いていく感覚がした。悪い予感が頭をもたげるが、必死で否定する。

 だって私扱い下手じゃないし。眠っているときも匂いを発さないように必死で特訓したし。そのお陰で今まで誰にも疑われることすらなかったし。


 ならなんで直江先生は私をあんなに見つめていた?私が特能持ちだという限りなくクロに近い確証があったからじゃないのか?

 いや、直江先生は何も言ってこなかった。それに、疑うのなら私の症状が他の特能持ちの症状と似ていた、というだけで十分のはず。


 クラスメイトの態度が変化したのは私の特能の匂いを浴びたからじゃないのか?私の特能はどうやら強いようだし、他の特能持ちまで変だったのも頷ける。

 いや、それならそうと言ってこない理由が分からない。第一、私の方を気にしたり私の発言に一喜一憂するだけで手出しも何もしてこないのはおかしい。だって、匂いとは媚香なのだから。


 実際手を出されたじゃないか。誘拐という形で。あれの犯人を私は知らないが、このクラスの誰かという可能性だって無きにしも非ずだ。

 いや、結局手は出されなかった。気絶させられ縄で縛られ放置されただけだ。私が勝手に抜け出そうとあがいて体力を消耗して色んな人に勘違いされただけのこと。



「あぁもう訳が分からない!」

「そうかならこの問題を解いてみろ」

「…へ?」

「どうした?こっちじゃ分からないというから簡単な方にしてやったんだぞ?」


 思わず叫んでしまってから今が授業中だということに気が付いた。すぐそばで声がしたと思ったら、丁度私の机の横に先生がいた。

 やっべー、完全に聞いてなかった。


 今は数学の授業中だ。黒板には二つの問題が書かれている。私が指された方は――確実に難しい方だった。

 簡単って嘘じゃん!


「いや全然簡単じゃないですよね!?」


 先生に文句を言いつつ黒板まで行き、問題を解く。その間も視線が刺さってきて、物凄く鬱陶しかった。


「さらさらと解いている奴に言われたくないが」

「ここは予習していましたので」


 先生に少し睨まれながら突っ込まれたが、さらっと流して自分の席に戻る。

 あぁ視線が邪魔だ!私の席は廊下から2列目の後ろから3番目というなんとも微妙な位置だ。授業中も後ろから視線を感じる。お前ら真面目に授業受けろよ。私が言えたことじゃないけど。


 先生は話を聞いてなかった私が問題を解けないのを見て怒ろうという心積もりっぽかったが、私が解いてしまったので怒るに怒れず授業を再開した。ふっ、前世持ちなめんな。今のは前世関係ないけど。



 この授業は聞いていなくても特に問題はないため、中断していた思考を再開する。

 さて、完全に行き詰ってしまった。いや、答えは出てるんだけど、それを認めたくないというか。だって私の特訓がなってなかったということになるし、これからの学園生活に支障が出るような答えだ。でもそれ以外思い浮かばない。



 …私の特能がバレていたなんて、考えたくもない。




※授業はちゃんと聞きましょう。


始めはそこまででもなかったのに段々と視線が鬱陶しくなってくる主人公。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ