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暁学園  作者: surumeica
18/48

独占欲か、それとも

第18話


短いです。

会計の独白?

…甘さって、なんだっけ(´・ω・`)




「~♪ ふふっ」


 らいさんの準備室から出る前に見たあの子の真っ赤な顔を思い出して、つい鼻歌を歌ってしまう。


 あの子、安土美穂ちゃんは、不思議な子だった。

 地味な容姿に目立たないのに不思議な雰囲気、性格は随分と毒舌で僕を簡単に言い負かす。

 あんな子に会ったのは初めてだった。今まで僕の周りにいた女の子は羨望の眼差しを向ける人間か嫉妬する人間ばかりだったのに、あの子は僕を見ても興味も関心もないようだった。僕を見ていてもどこか違う所を見ているような、そんな目をしていた。

 自分の容姿がいいのは自覚してるし、僕にすり寄ってくる人もいれば毛嫌いする人もいると知っていたけど、あの子が僕に向けるまなざしには何にも含まれていなかった。


動吏(とうり)に話したら、喜ぶかなぁ」


 僕の大切な双子の弟、動吏。生まれたころからずっと一緒だと思っていた、僕と同じ顔の可愛い弟。もっともその思いは僕らが5歳の時に粉々に打ち砕かれたのだけれど。

 僕に特能が見付かって動吏とは引き離されたけど、今も互いに依存し合い心配し合っている。


「らいさんと、何かあったみたいだしねぇ」


 僕が扉をノックする前、不自然な沈黙があった。ノックした後は急に物音がして、2人の慌てたような話し声が聞こえた。扉を開けた後のあの子の顔は微かに赤くなっていて、嫌でも何があったかを連想させる。

 それを考えるとなぜかどす黒い感情がチリッと胸を焦がしたような気がして、気分が悪くなる。


「僕はあの子の香り、浴びてないのにねぇ」


 不思議でしょうがないが、悪くなった気分もあの子の頬にキスした後の反応のお陰で上昇した。

 らいさんとの間であった“何か”で赤くなった顔が、今度は自分の行為で真っ赤になっていて、それで自分の独占欲を満たしたような気になる。



 あの子のことを知ったのは、高等部に入学してから3日目だった。

 生徒会で監視を始めた上杉志信が追いかけまわしている子で、彼女があの子の教室に行くと必ずそこにはいなかったらしい。どうやっているのか気になって彼女にあの子の居場所をこっそり教えて行くように仕向けても、いつの間にかあの子はそこからいなくなっていたという。すべて彼女の監視を担当している先輩に聞いた話だけど。


 どんな子なのか予想が出来なくて、彼女がいない時にB組の友人に会うふりをして見に行けば、確かにあの子はそこにいた。不思議な存在感があって、クラスの誰もが少なからず目の端にとめている子。もっともあの子はこちらをちらとも見ずに教室から出て行こうとしているところで、横顔しか見れなかったのだけど。

 上杉志信は入学から数日しかたっていなくても十分有名で、その彼女が休み時間のたびに誰かを探しにB組を訪れていた。けれど彼女が来るとき、必ずいつも視界のどこかにいたあの子がいなくなっていて、あぁ、探しているのはあの子か、と分かった、とはその友人の談で。

 それ以来なるべくB組を訪ねるようにしてあの子を見ようとしていたんだけど、僕が行くときは必ずあの子はどっかへ行こうとしているから見えても横顔だったし、あの子を見るよりも上杉志信に会う方が多くって、それが僕を不快にさせた。


 上杉志信は綺麗だ、一緒にいて癒されると誰もが言うけど、綺麗なだけの人なんてどこにでもいる。癒されるのは特能の制御ができていないから。そして何より、彼女はつまらない。

 それよりもあの子と話してみたいと思っていたのになかなか機会は巡ってこなくて、更に僕を不快にさせた。そのせいで彼女には辛く当たったような気がするけど、僕があの子と話せないのは彼女のせいだったのだから仕方がない。

 ようやく機会が巡ってきて、ずっと話してみたいと思っていた彼女は思った以上に面白くて。初めて間近で見た眼鏡と前髪に隠れた眼は大きくて印象的で、大雑把に後ろで一つに括られた髪はよく見れば艶やかで。ますます僕の興味を引いた。きっとあの子の素顔は可愛いんだろうな、見てみたい、とあの子の横顔を見かけるたびに思っていたが、その思いはますます強くなってしまった。



 そういう彼女だから、僕以外の人の興味関心も引いているみたいだ。少しでも僕を印象付けたいといじわるを言ってもあっさりとかわされてしまうし。名前で呼んでと言っても呼んではくれないし。僕があの子のあだ名を勝手につけて呼んでも何の反応も示さないかな、と思っていたら不愉快そうに眉をしかめてくれて。何でもいいからあの子の心を動かせたことに喜んでいる自分がいたことには気が付かないふりをした。


 生徒会室では、生徒会に誘えば入らない可能性は低い、と言ったが、素直に生徒会入りの話をもちかけてもあの子は首を縦に振らないだろう、という予想はあの時既に出来ていた。ある意味成功していてある意味成功していないが、あえて目立たないようにしているみたいだったし。


 でもあの子は無意識にかどうかは分からないけど他の生徒会役員の関心も引いてしまっていて、近いうちに強引に入れられるんじゃないかな、とも予想している。もちろんその時は僕も手を貸すつもりだ。きっとそうなったら楽しいに違いないから。


 あの子をいつの間にか気に入ってしまったのは確かだけれど。この気持ちがなんなのか、名前を付けるにはまだ早いと思うから。




「とりあえず今は、僕のオモチャでいてね?」




黒くなっているといいなあ!畜生!



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