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暁学園  作者: surumeica
16/48

渡り廊下 ―会長・副会長・会計・監査―

第16話


1/18 タイトル変更しました。

1/22 最後の部分を改稿しました。

 図書室で水地先輩と別れ、教室に帰ってきたときも視線は突き刺さってきた。

 あれか、お前らも賭けてるクチなのか。私が主人公に捕まっていないのか気になってるのか。だからそんなに見てくるんだな。畜生主人公め!


「ねえ、歩ちゃん」

「っ、ん、なあに?」

「今日も上杉さん、来てた…?」

「あ、うん、来てたよ。捕まらなかった?」

「うんっ、もちろん!」


 普段はこんなこと聞かないが、今は特能が使えないので仕方なく歩ちゃんに聞いた。するとなぜか顔を赤くして驚いたような反応をされたので追求したくなったが、歩ちゃんが望んでいないようだったのでやめておいた。

 なんだか歩ちゃんまで挙動不審だ。


 話し始めたときクラスが静まり返ったような気がするけど気にしない。気にしないったら気にしない。気にしたら負けなんだ畜生!


「ね、ねえ、私なんかしたかなあ…」

「えっ、何が?」

「だってみんな、なんか変だよ?」

「そ、そんなことないよ!」

「そうかな…」

「う、そうだよ!気にしなくて大丈夫だよ!」


 だったらなんでそんなに目を泳がすんですか歩ちゃん。

 …うん、まあ悪意ある視線じゃないし、ここは歩ちゃんの言う通り気にしないようにしよう。


「そっか、そうだね、ありがとう」

「う、ううん、どういたしまして」


 笑ってお礼を言っただけなのに…なんでそんな真っ赤なのさもう可愛いなぁ歩ちゃんは。

 なんか周りも少し顔を赤らめている気がするが、そんなにこの教室は暑かっただろうか。


 現実逃避?いいじゃんたまにはしたって!

 私は鈍感主人公的キャラじゃないから、こういうのいちいち目ざとく気が付いちゃうんだよ!


 ほんと、なんかやったかなあ…。



***



 授業中もチラチラ見られながら、何事もなく放課後がやってきた。

 …なんだか視線が気になるので今日はまっすぐに寮に帰るのはやめておきます。


 ほら、特能ないから不安じゃん!それに、この図鑑も読み進めたいし。

 視線が気になって集中して読めなかったんだよ。対策考えるためにも図書室へ行こうと思います。

 流石に今度は水地先輩もいないだろう。



 と思って教室のある中棟から南棟までの渡り廊下を突き進んでいたんだが。

 うん、私の予想は外れちゃいなかった。ある意味正しい。確かに、水地先輩はいなかった。


 だけど、だけど、なんで水地先輩と雷先生以外の生徒会の皆様が向こうからやってきているのでしょうか!?



 落ち着け私。深呼吸をするんだ。あくまで目立たないように。

 向こうは私のことを知らないはずなんだ。顔を伏せて脇を通れば記憶にも残るまい。


 よし、行くぞ!


「あれー?」

「っ!」


 驚かすなよ会計!思わず肩が揺れてしまったじゃないか。

 まぁ私のことなわけがないので、足を止めずに前に進む。


「ねえ、安土美穂ちゃんだよねー?」

「っ、え、」

「あ、やっぱりそうだー!」

「この人がそうなんですか?」

「なんだ、意外と地味だな」

「そういうこと言わないの。 初めまして。3年A組の江陰です」

「は、はぁ。初めまして、1年B組の安土です。えっと、なんで私のこと」

「だって有名だよー?」

「いや、そうじゃなくて、なんで顔も」


 丁度脇を通り過ぎようとしたとき、会計が話しかけてきた。会計が私の名前をだすと、他の面々からも反応があった。


 このやり取りまた必要なのか。

 ていうかいつの間にか生徒会役員まで私のことを知っているんだ。


 そして会計、お前ちょっと馴れ馴れしすぎるぞこの野郎。会長は会長で失礼だし。

 まあ自己紹介もせずに人の顔をじろじろ見るような人たちを相手にする義理はないので、副会長と会長は徹底的にスルーさせてもらうが。

 江陰先輩は俺様会長をたしなめてくれた上に、自己紹介をしてくれたので、礼儀は守ります。


「んー、上杉さんが他の所探している間に見に行ったら、いたから!」

「…そうなんだ。で、何か用事?」


 私は早く行きたいんだけど、と言外に匂わす。

 ちなみに会計、お前も自己紹介してないからな。


「いや、特に用事はないよー。有名人がでっかい図鑑を抱えてよたよた歩いてたから、つい」


 にやにやと意地の悪い笑みを浮かべながらそう言った会計は、こちらの反応を窺っているようだった。

 ほんと性格悪いなこいつ。有名人に有名人って言われたくないんだけど。


「ふぅん。じゃあ私、急いでるからもう行くね」


 そう言って江陰先輩だけにお辞儀をして通りすぎようとすれば、なぜか俺様会長に腕をつかまれて足を止められてしまった。


「おい、俺への挨拶はないのか」

「は?」

「だから、」

「失礼ですが、こちらに対しての最低限の礼儀すら欠いている方にこちらが礼儀を守る必要はないと思うのですが」


 横柄にそう言われたので、会長と目線を合わせて言い返す。畜生背ぇ高いなこの野郎。


 …つい言い返してしまった私は悪くない。畜生やっちまった!とか思ってない。思ってないったら思ってないんだ。でもこれ、正論だよね?私、間違ってないよね?


 そもそもシナリオへの介入を決めたんだから、生徒会役員と絡むのは別に問題ないはず。恋愛に発展しさえしなければいいんだもの。

 うん、自分に正直に発言してしまいましょう。


「お前、俺のこと知らないのか?」

「いえ、知っていますが」

「なら必要ないだろう」

「これで私が知らなかったら、ただの自意識過剰なだけの人でしたよね?」

「…」


 傲岸不遜という言葉が似合うほど堂々と言い切った会長に含み笑いで言い返せば、黙り込んでしまった。

 そこでつかんでいる手に力を込めるのはやめて頂きたい。地味に痛いです。


「ぷっ」


 急に噴きだした副会長を会長と一緒になって睨みつけた。気が合うな。嬉しくないけど。


「おい、笑うな静」

「失礼。ですが掠、あなたの負けですよ。 初めまして、安土さん。知尋と同じクラスの林堂といいます」

「初めまして、安土です」


 会長を諭した後副会長が名乗ったので、こちらも名乗り返してお辞儀をする。一応相手は先輩だからね。


 私は“知尋”っていう名前の人の紹介を受けていませんよ、と思ったが口には出さない。さっき知っている、と言ったばかりなのだ、知っているという仮定で話したのだろう。


「チッ、3A の火野だ」

「初めまして、安土です」


 なんで舌打ちしてこっちを半眼で見ながら言うかね、この俺様は。


 不満を抱きつつもこちらも名乗り返してお辞儀をする。


「んー、僕も必要?」

「別に、どちらでも」

「じゃ、一応しとくねー!1A の伊山動矢だよー。とうやって呼んでね!よろしくねー」

「うん、よろしく、伊山君」

「ちょっとちょっとぉ、ひどくなーい?」

「いや、ひどくないでしょ。呼ぶ義務ないし」

「えー、呼んでよー」

「なんでそう呼ばれたいのよ」

「そっちの方が親しい感じがするじゃん?」

「え、親しくしたくないし」

「そんなあ!」


 無理な要求を小首をかしげてされたので、却下しておいた。打ちひしがれたようなポーズをとっているけど、なんの感情もわかない。

 ほんと私は伊山君の性格嫌いだなぁ、と思う瞬間。


 小首をかしげても可愛いけど、似合うけど、気持ち悪いから止めろ!あと美形滅びろ!

 それは二次元だから許される動作なのです。


「じゃ、私図書室に行きたいんで、失礼します」

「あっ、ちょっと待ってー」

「何?まだ何かあるの?」


 会長の腕をほどいて再度通り抜けようとすれば、今度は伊山君に止められてしまった。


「らいさんが捜してたよー」

「え、ほんと?」

「うん、ほんとほんと。準備室にいるはずだから、早く行った方がいいよー」

「っていうからいさんって誰?」


 危なかった。危うく引っかかるところだった。

 慌てて少し首をかしげて言ってみる。うるさい、似合わないとか言うな!


 ここにきてようやく私はこの人たちが私を覗き見犯だと疑っていることに気が付いた。

 らいさん、という単語は私が知っていたらおかしいのだ。最初に覗いた時しかバレなかったが、その時既に“らいさん”という単語は出ていた。これで私が誰だか分かるような言動を取っていたら、この人たちの中で私は候補から有力候補に格上げされるだろう。

 その証拠に火野先輩と伊山君は少し残念そうにしている。林堂先輩は微笑という名のポーカーフェイスを崩していないが、江陰先輩は少し呆れた表情だ。


「あれ、言ってなかったっけ?雷せんせーのことだよー。らいって読めるから、らいさんなんだ」

「あぁ、なるほどね。ありがとう、行ってみるよ」

「いえいえー。お礼は今度会ったときねー」

「うん、それじゃあ。先輩方、失礼します」


 それ好きだなお前ら。どんなことを要求されるかは分からないが、もう会うこともないだろうし、軽く頷いておく。


 彼らの表情に変化があったのはほんの少しのことで、あっという間に元の表情に戻ったのは流石だと思う。

 伊山君に誰のことだか教えてもらい、先輩方にお辞儀をしてから元来た道を歩く。



 進む方向は彼らと同じだが、少し早足で行ったため、彼らに話しかけられずに引き離すことができた。

 リーチの差があったので駆け足になってしまった感は否めないが。




「ふぅん、面白そうな子じゃないですか」

「ねー。生徒会には一筋縄じゃ入ってくれなさそうだけど…懐かない子を懐かせるのも一興だよねー?」

「動矢を言い負かせる子なんて、確かに稀だね」

「もー、ちーセンパイ、いじわる言わないでよー」

「ふん、他の女とは違いそうだな」


 私の去った後。

 彼らはその方向を見つつ、それぞれ興味深そうに、或いは面白そうに瞳を煌めかせていた―――



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