調べもの
第15話
特能についてと書記との絡みのお話。
会話を入れると地の文が極端に減るorz
図鑑は五十音順だった。
能力別にした方が捜しやすいのに、とも思ったが、この図鑑で調べるような人は既に調べたい特能の名前くらい分かっていそうなので、これでもいいのかと思っておく。
私の特能は移操と眼操と色操だろうから…まずは移操か。
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移操―――物理系の特能。この特能の所有者が目で見て確認できる範囲であればどこにでも瞬時に移動することができる。所有者のみが移動できる場合と、所有者以外の人物や物体も一緒に移動できる場合がある。後者の場合は物操の下位特能とされる。ただし、所有者の身体が物理的に入ることのできない所への移動は出来ない。見える範囲であれば距離に限界はないが、移動回数は訓練次第で伸びることもある。現在確認できている1日の最大移動回数は23回。気が狂う者の少ない特能。この特能の対策には防操、盾操が用いられる。
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一般に気が狂う者が多いほど強い特能とされていたはず。
つまり、あまり強くない特能ってことか。
私の場合は、私と私の持っている物だけが移動できる。
それにしても、移動回数に制限があったとは…。気にせずに使っていたが、あまり使う機会もなかったので今まで大丈夫だったんだろう。
今度確認してみようと言いたいところだが、また限界まで使って保健室に運ばれても嫌なので、長期休暇の時にでもやってみよう。少なくとも保健室の開いている日は遠慮したい。
物操は確か、監査が持っていたな。一応見ておくか。
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物操―――物理系の特能。この特能の所有者が触れることなく人物、物体を動かすことができる。移操の上位特能とされる。精度は動かす物の大きさ、重量に左右される。数cm物体を浮かすことのできる者から、周囲の人物、物体を自由に動かすことのできる者まで、強さは所有者次第。訓練次第で緻密に、数多く物を動かすことが可能になる場合もある。この特能の対策には防操、盾操が用いられる。
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…ふーん、なるほどね。
特に対策はできない…かな?監査がどの程度の強さなのか分からないし、そこまで危険な特能でもない―場合によっては危険だけれど―ようだ。
防操、盾操、というのは聞いたこと無いが、まぁニュアンスで分かるだろ。
生徒会室に張ってあった結界的なの、みたいな感じだと思う。
うん、たぶん大丈夫。
さて、次は…眼操かな。
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眼操―――精神系の特能。この特能の所有者を中心とした球体の中ならどこでも見ることができ、音も聞くことができる。目操の上位特能とされる。球体の半径は人それぞれだが、訓練次第で広がることもある。通常は100m程度。見ることのできる景色の個数は所有者次第だが、これも訓練次第で広がることもある。しかし、たいていの所有者は脳が複数の景色を見聞きすることを拒否するため、3、4個が限界。それぞれの景色の音を聞き分けられる者は稀。現在確認されている最高半径は、約1km。景色の最高個数は6個。ちなみにこの者は15歳の時に6個見て、気が狂って自殺している。気が狂う者の多い特能。この特能の対策には盾操が用いられる。
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普通は半径100mなんですか。景色は3、4個で限界なんですか。音も聞き分けられないんですか。
え、あれ、私は?
10km見れますが。今まで最高15個見ましたが。音の聞き分けもできてるんですが。
化け物決定じゃないですか、これ?バレたら監視どころか監禁、悪くしたら死亡フラグなんじゃないか。
…あの時バレなくてよかった。本当に良かった。1つの特能だけでこれなら、3つも持っているとなれば更に危険が高まる。
そして継続時間の限界については書いてないな。早々に気が狂う者が多くて継続も何もないのかな。
うーん、どうしたものか。
とりあえず、次行こう、次。
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色操―――精神系の特能。所有者は、所有者が認識している人物に周囲の風景と同一化しているように見せることができる。カメラなどの機器もその類に入る。精度が悪かったり、力が弱かったりすると見せることができる人数に制限がかかる。訓練次第で継続時間を延ばすことが誰でも可能な特能。稀にこの特能が効かない者がいる。そういう者への対策は、その者へ防操が用いられる。ただし、その者が動いた場合は解けるので、あまり効果はない。気が狂う者が少ない特能。この特能の対策は、確認されていない。現在、対色操用メガネを開発中。
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むぅ、なるほど。
これもあまり強くはないが…人数制限があったのか。
これは流石に試せないな。少なくとも私が特能持ちだとバレてからじゃないと。もうバラすつもりはないが。
それに、継続時間って延ばせるんだ。これまたそこまで使うことのなかった特能だから、気にしたことは無かったが…これは延ばすべきだな。
うん、寮でなるべく使うようにして、限界を迎えそうなときに部屋に戻って熟睡しよう。たぶんだけど、限界を超えたときにのびるんだと思う。眼操もそうだったから。
あぁ、あと、防操と盾操の違いくらいは見ておくか。さっきからこの2つが頻繁に出ていることだし、どうやら違いも大きいみたいだ。
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防操―――所有者は、対象に防御結界を張ることができる。盾操の下位特能とされる。対象が移動する場合は、その状態を保つことができない。張れる物の大きさは所有者次第だが、訓練次第で限界が広がる者もいる。防音効果有り。外から中を見ることができる。張った結界は所有者の元を離れるため、継続時間に限界はない。蒸気と同じ理由で、張った結界が破れても所有者に痛みはないが、破れたら分かる者もいる。破る側は痛みを伴いことが多い。ただし、痛みの程度は結界の強さ次第。気が狂う者の少ない特能。この特能の対策は、ない。現在対防操、盾操用の機械を開発中だが、目途は立っていない。
盾操―――所有者は、対象に防御結界を張ることができる。防操の上位特能とされる。対象が移動する場合も、その状態を保つことができる。また、外から中を見ることができる。それ以外は防操と同じ。
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おいこら編集者のやる気どこ消えた。盾操、テキトー過ぎるだろ。
まぁ分かりやすかったことは事実だ。お硬い文章をずっと読んでることほど気が詰まることはない、かもしれない。つまらないし読みづらいのでこの省略はありがたい。
防操と盾操を防ぐ術はない、ということは分かった。
…対策の立てようがないな。
まぁ、この間生徒会に侵入したときには問題なく入れたので、少なくともこの学園内では大丈夫だろう。
これから侵入する際にはバチッとくることを覚悟したうえで侵入しよう。
少なくとも防操か盾操、どっちかの特能持ちが高等部内にいることは確かだな。
これを読む限りだと、私が侵入したことはバレなくても、誰かが侵入したことはバレているかもしれないらしい。まぁバレてても今更か。
さて、いい加減目が疲れてきたぞ。
うるさい、ひ弱とか言わないの!しょうがないじゃないか、寝不足の上過労で倒れた後なんだ。
生徒会の特能を見て、終わりにするか。
…これ、借りれないかなあ。
「何見てるの?」
「っ!?」
「そんな驚かなくっても…。傷付くなあ」
うるさい苦笑いしてんじゃねえ美形め。ムダにキラキラするな。寿命が3秒縮んだじゃねえかどうしてくれる。
「嘘つかないでください。私が集中しているのを分かったうえで気配消して近づいたくせに」
「おぉ、よく分かったねー」
「それくらい考えればすぐ分かります、馬鹿にしないでください」
とりあえず睨んでおいた。最近よく誰かを睨んでいる気がする。
「で、何調べてたの?」
「別に…水地先輩には関係のないことですよ」
「ふぅん…。まあいいけど、そろそろチャイム鳴るよ?それとも、ここでオレと一緒にサボる?」
「遠慮しておきます!ありがとうございます、それでは失礼します!」
「あ、待って。この本、借りていかなくてもいいの?」
「あー…借りれるんですか?」
「うん、ちょっと特殊な手続きが必要だけどねー。借りるなら教えるよ?」
「えっと、じゃあお願いします」
「うん、お礼は今度会ったときね?」
何度目か分からない質問をされたので、はぐらかしておく。
貸しを作るのは遠慮したかったが、返すのは今度会った時でいいというので遠慮せずに甘えておいた。金輪際会う気はないけどな。
水地先輩に借り方を教えてもらって、借りてから教室に帰ったが、次の授業は自習だった。
仕方がないのでさっき借りてきた図鑑を読むことにする。
「ふぅん、思ったよりも面白いなあ…」
教えてもらってすぐに図書室を出た私は、知らなかった。
水地先輩が私の去っていった方向を見て、面白そうに眼を煌めかせて笑っていたことなんて―――
ロックオン!
次は恐らく書記視点




