図書室にて ―書記―
第14話
主人公と書記の絡みです。
顧問以外との初絡みです。これからどんどんからませていく予定ですのでよろしくです!
会話を入れると止まらなくなるorz
…やっちまったなぁ。
回復したので保健室から出て教室に帰ったら、視線がばしばしと突き刺さってきて怖かった。
…授業中に倒れただけでこんなに注目されるもんなんですかね。歩ちゃんまでこっちを見ているので、小さく手を振ってみたら、ちょっと笑って振り返してくれた。嬉しかったし可愛かったです。
昼休みになって、速攻で私は図書室に逃げ込んだ。
回復したはいいけど、特能は使っていない。というか怖くて使えない。せめて主人公と生徒会の位置は把握したいんだが。
かくれんぼだと勘違いした主人公から逃げるためっていうのと、クラス中から突き刺さる視線から逃げるため、あと私自身の持っている特能について調べるために。
今までは一般に公開されている基本的な知識しかない状態で特能を使い続けた結果、ぶっ倒れてしまったわけだけど。今後そういう事を起こさないようにするために、やっぱり対策は必要だと思うのだ。そのためには情報が必要。
なので、特能に関する一番詳しい情報が得られると思われる暁学園の図書室で調べようと思います。
と思ったのだけれど。
「…え?」
「ですから、こちらの特能に関する詳しい情報のコーナーは、特能持ちの方にしかお見せすることができません。一般の方が閲覧される場合は、いずれかの先生の許可か、生徒会からの許可が必要となります」
「そ、そうなんですか…」
すごく美人なのに無表情な司書の先生に阻まれております。
どうやら特能の詳しい情報は規制がかかっているようだ。ムダに図書室が広いから、と司書の先生に聞いた私がバカだった。いや、扉の中にあるコーナーだし、今特能使えないから聞かなくちゃたぶん見つけられなかっただろうけど。
しかし、知らなかった…。特能の授業はちゃんと聞いてたんだけどな。そこで説明してほしかったな。
畜生、こうなったら後でこっそり飛んでやる!
「それで、許可証はお持ちですか?」
「いえ、」
「ここにありますよー」
「へ?」
「あぁ、お持ちでしたか。でしたらどうぞ」
え、あれ?
私の真後ろから手がでて、司書の先生に紙を差し出していた。
「さ、行こっか?」
「え?えぇ!?」
意味が分かりません。
なんであなたは人当たりのいい笑顔を浮かべながら私の背中をぐいぐい押すんでしょうか。
押されなくても進めるんですが。
って違う!なんで書記がここにいるの!?あぁ、特能が使えないってほんと不便。
誰か説明プリーズ!
「どうして俺がここにいるのか分からないって顔してるねー」
「…当り前です。私はあなたと面識はなかったはずですが」
「今知り合いになったじゃんか」
「顔見知りです」
「知り合いのうちでしょ、それ」
麗しい苦笑いだことで。滅びろ美形!
そうこう言っている間に扉が閉められてしまった。正直ありがたいけど、理由がわからない。
「で、何を調べたかったの?」
「えっと、その前に、どちら様でしょうか?」
「え、俺のこと知らない?」
「いえ、知りません。入学してまだ1週間程度ですので」
本当は知っているけど、知っていたら怪しまれると思ったので知らないと言った。
それに向こうは私のことを知らないはずなのだ。いや、主人公を監視しているから私の名前くらいは知っているだろうが。まだ主人公には捕まっていないため顔は知らないはずなので、私と結びつけるとは思い難い。
「あー、そうか、一応学校じゃ有名だと思ったんだけどなぁ。えっと、2年A組の水地疾風だよ、安土美穂さん?」
「っ!?」
「あれ、間違ってた?」
「…いえ、合ってます。なんで名前…」
「あれ?君、今けっこう有名人だよ?あの上杉さんがずっと追いかけまわしてるのに一向に捕まらないって。捕まえるか逃げ切るかで賭けてる奴もいるくらいだから」
な、なんだと!?
私の名前が先走っていることは知っていたが、まさか賭けまで行われていたとは…。
おい私に賭けた奴、勝ったら取り分よこせ!
ていうかそもそもこの人生徒会役員なんだから一般生徒の私が知っててもおかしくないじゃん!なんで知らないなんて言って無駄に印象付けたんだ私は!畜生!!
「いえ、そうじゃなくって、なんで顔と名前が、」
「あぁ、勘?」
んなわけあるかぁ!
にっこり首かしげて言っても可愛くねんだよ!いや似合ってるけど!畜生滅びろ美形!
「…実際は?」
思わず低い声が出てしまったのは許してほしい。
「えー、信じてくれないの?」
「…信じると思うんですか?」
「ううん、思わない」
「でしたら」
「実際はね、ていほーセンセに聞いたからだよー」
「…そうですか」
「あれ、まだ疑ってるの?」
「いえ、疑ってません」
疑ってるけどな。わざわざ顧問が私のことを話すとは思えない。
なんで知っているんだ。意味が分からん。
ていうか生徒会室ではいじられキャラなくせになんでこいつこんなにいじめっ子っぽい笑顔なの。
養殖な天然は気持ち悪いだけなので止めてほしいです。このチャラ男め!
「雷先生は私のこと、なんて言ってましたか?」
「気になる?」
「まぁそれなりに」
大して気になりませんが。
自分で情報収集ができない今、できる限り情報を引き出したい。
「安心して。頭の回転の速い、いい生徒って言ってたよー」
「はぁ、そうですか。ありがとうございます」
「お礼は身体でよろしく」
「は?」
いや本当に意味が分からん。
思わずドン引きしてさっきよりも低い声が出てしまったのは許してほしい。誰にかは分からんが。
「じょ、冗談だよー。そんな怒んないで?」
「…そういう性質の悪い冗談を言う人は嫌いです。目にしたくもありません」
「あははー、ごめんって。もう言わないからさ、ね?」
早く探したかったので、言外にどっか行け、と匂わせる。
しかし、悟ったはずの水地先輩は笑って謝り、こっちを上目づかいで見ているだけだ。
私の方が背が低いのによく上目使いなんてできるな、意外と器用だ。
「…はぁ。で、いったい私に何の用件でしょうか?」
「いや、特に用件はないよー」
「じゃあなんで、」
「たまたま、かな?」
「たまたま?」
「うん、たまたま有名人を見かけて、たまたまその有名人が困ってて、たまたまそれを解消できる手段を持っていたから、かなー?」
「…そうですか」
いかにも嘘くさいが、本当にたまたまなんだろう。少なくとも最後のは。
私がこのコーナーを閲覧したいとは誰にも、歩ちゃんにさえ言っていないので、知っているわけがないのだ。
なんで偶然許可証を持っていたのかは謎だけど。
だってこの人許可証なしでここ見れるじゃん。特能持ちなわけだし。生徒会役員でもあるし。
…まあ、いい。今は素直に厚意に甘えておこう。
とりあえず適当なとこを調べる振りをして、この人が出て行ってから私の特能について調べよう。
それが無理だったらまた来ればいいし。
「何を調べるのー?」
「水地先輩こそ、何を調べているんですか?」
「ん?オレー?オレは、特能の対策についてだよー」
「…それは、対策の必要なことがあるっていうことですか?」
本格的な情報が手に入れば万々歳だが、そこまで期待はしていない。
多少不自然かな、とも思ったが、ああいう言い方をされれば誰でも気が付くと思うんだ。
「気になる?」
「…それなりには」
「んー、ほら、1年生にさ、上杉さんっているじゃん」
「あぁ、いますね…」
その名前を聞いて多少うんざりしてしまった。
それが多少顔に出ていたようだ。
「ははっ、美穂ちゃんは逃げ回ってるんだよね?」
「というより、あの人が追いかけまわしてくるんです」
「でもまだ見つかってない?」
「えぇ、まあ。私の努力の賜物です」
「すごいよね、もう4日も逃げ回ってることになる。秘訣を教えてほしいなー」
「私には対目立つ人専用の危機察知レーダーが付いてますので。…逃げたいんですか?」
「ふっ、何それ。…まぁね」
「何から?」
「仕事から」
「サボりですか、よくないですね」
「いや、仕事してるじゃん!ちゃんと上杉さんがコントロールできるようになるまでの対策を考えに来てるじゃん!」
多少気まずそうに眼をそらして肯定した水地先輩は、詳しくは教えてくれずにごまかした。
そのごまかしに乗ってからかってみたら、思ったよりもいい反応が返ってきた。なるほど、いつも会計はこんな楽しい思いをしているのか。
ちなみに嘘は言っていない。特能という名の危機察知レーダーが私には付いている。
生憎今は故障中だが。
「なんでそんな蔑みと同情が入り混じったような目で見るんだい…」
「あぁ、すいません。顔に出てましたか」
「否定しないの!?そこは嘘でも否定してほしいよ!」
「嘘は付けない性格ですので」
「嘘つけ!」
「それを嘘だと判断できるほど先輩は私のことを知らないでしょう」
「う、まぁそうだけど…」
まあ嘘なんだけどさ。
人間だれでも嘘をついたことくらいあると思うんだよね。わざとであってもなくても、結果的に嘘になることもあるんだ。
「私のことはともかく、先輩は調べなくていいんですか?」
「あぁ、ここ、迷路みたいだから。オレは慣れてるけど、ここ来るの初めてだろ?だから、調べたい本の所まで案内しようと思って」
「…ありがとうございます」
とっとと行ってほしいと思って言った言葉に、真面目な表情でまともな返答をされた。
普段のおちゃらけた表情と今の表情のギャップに落ちる女子が多いんだろうな。
それを分かったうえでの行動だろうから、私は特になんとも思わないが。というか三次元へのときめき方が分かりません。
それにしても、意外といい先輩じゃないか。
本心かは分からないが、もし仮に、万が一にも私のことを疑っているのだとすれば、私が何を調べるのかを気にしているんだろうな。有り得ないけど。
「気にしないでー。で、何を調べるの?」
「…特能の図鑑、とかあれば見たいなと」
「あー、あるよ。分厚いけど、大丈夫?」
「…たぶん大丈夫です。お願いします」
特に態度に変化のなかった私に少し拍子抜けしたような先輩に再度聞かれたので、素直に答える。
無難に図鑑を見ればいい。
はじめは関係ないページを見て、水地先輩がいない時に私の特能を調べればいいだろう。
そう考えて教えてもらった図鑑は、本当に分厚かった。
広辞苑2、3冊分くらいの分厚さで百科事典並みの大きさがある。
…持てるか不安になってきた。
まぁ大丈夫だろう。実際に読むときは座って読めばいいんだし。
でもその前に取れないかもしれない。畜生こんな高いとこに置いたやつ出てこい!
「んーっ!」
「いやいや、ムリしなくていいから。はい」
「あ、ありがとうございます…」
「いいってことよ。じゃ、また何かあったら言ってね?」
「はい…」
ないことを祈ります。
背伸びして一番上に置いてある図鑑を取ろうとしたがギリギリ手が届かず、結局水地先輩に取ってもらってしまった。
その際に少し密着した体勢になってしまったが、気にしない。必要以上に近かった気もするが、気にしない。
お礼を言う時に赤くなっていたのはときめきではなく悔しさと恥ずかしさです。それでも先輩と目線を合わせて言った私は偉いと思う。
さて、先輩も向こうへ行ったことだし、調べますか。




