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暁学園  作者: surumeica
13/48

その生徒の扱いは

第13話


やっぱり三人称って難しい…orz


会話多いです。誰が誰だか分からなくなる可能性あり。



 顧問が保健室で安土美穂の色香と闘っている頃、生徒会室では。

 顧問を除いた面々がそれぞれの席に座って書類作業をしながら話し合っていた。

 書記が帰ってくる前に強い色香に気が付き、話し合っていたようだ。



「…そうか、そんなに強かったか」

「少なくともオレよりは強かったっすよー。ていほーセンセも危ないかも」

「…それ、残してきて大丈夫なんです?」

「……あ、やば」

「うっわー、ずっちーのおばかさん!もしその子がらいさんに襲われちゃったら、ずっちーのせいだね!」

「…や、やっぱオレ、もう一度行ってきます!」

「いや、いいよ。雷先生なら大丈夫だろう。それに今疾風が行っても変わらないよね?その子にとって危険が増えるだけだよ」

「知尋の言う通りですね。あの人なら危ないと思ったらその生徒を起こして帰ってきますよ。起きていたときは、香りは全くしなかったんでしょう?」

「…はい。その子が気絶したまま直江センセが運んできたんスけど、その時はひどかったです。でも、起きたらあっという間に収まってたッス」

「ということは、だ。そいつの特能によっては覗き見犯の可能性が高い、ってことだな」

「そうなりますね」


 自分の都合を優先させ、顧問と美穂を二人きりで残してきたことに対して会計が責めるが、監査が書記を慰める。

 それぞれが自分勝手に発言しているようだが、これがこのメンバーの“いつも”であり、話の進め方だ。


「一度どんな特能か確かめる必要があるねー」

「今の犯人の特能候補は、目操と眼操でしたよね?」

「そうだよ。まぁもっとも、それだけ強いなら眼操の可能性が高そうだけどね」

「そーだねぇ。うっわぁ、眼操って気が狂うのが多いヤツじゃん」

「…それを使いすぎて倒れたって…そいつ、大丈夫なのか?」

「いや、まだ眼操を使いすぎたとは限らないッスよ」

「…複数持ちという可能性があるんですか」

「うわ、大変そー」

「どんだけ強いんだよ…」


 副会長は顔をしかめ、会計は面白そうに瞳を煌めかせ、会長は呆れを浮かべた。

 会長の言を否定しただけでどういうことかを悟る彼らは、やはり生徒会役員なだけあった。


「見に行ってみたらどうかな?」

「いやいや知尋?疾風が行って無理だと判断したのになんで俺がのこのこ行くんだ?」

「そんなの掠が耐えられなくってその子に手を出して退学になるのが見たいからに決まっているじゃないですか。ねぇ、知尋?」

「い、いやぁ、そんなつもりはなかったんだけどね。とにかく一度、その子が寝ている状態で確かめる必要があるだろう?」

「まぁその通りだねー。どの程度か分からないし、ずっちーは脳筋だからあんま当てになんないし、その子は起きてるときは一般人と変わらないらしいしー?」

「脳筋ってなんだよ脳筋って」

「え、事実でしょー?何も考えずにずっちーと二人きりにしちゃったじゃーん」

「まぁまぁ。自分が耐えられないことを分かったうえで帰ってきた判断はよかったですよ」

「静センパイ!」

「あ、鬱陶しいのでひっつかないでくれませんか?」

「そ、そんな!う、鬱陶しい…」


 こういうおふざけが所々に入るのも、彼らの“いつも”なのだ。


「動矢も静も、疾風をからかうのはそこら辺にしておいてあげな。疾風もいつまでも落ち込まない。雷先生が帰ってくるまでにある程度対策を練っておこうよ」

「そうだな。そいつも監視下に置く…と言いたいところだが、難しいだろうな」

「そうですね。今の生徒会は忙しい上に唯一あまり忙しくない知尋は上杉志信の監視に入っていますし、その生徒がどんな状態か分からない現状では対策の使用がありません」


 この時期は新入生歓迎会と体育祭の準備が重なり、毎年忙しくなるのだ。

 今年はそれに加えてもう一つ忙しくなる要因があるのだが。


「疾風、その生徒の名前は分かるか?」

「んー…えっと、安土、って直江センセは呼んでたッス」

「その生徒はB組らしいけど、動矢は見たことあるの?」

「んー、ないよー。でも、名前は聞いたことあるかもー」

「安土…?」

「お、知尋、知っているんですか?」

「うん、確か上杉さんが追いかけまわしていた子だと思う。安土美穂さん、っていう名前だったと思うよ。一度も捕まったことはないみたいだけど…」

「眼操持ちならそれも納得だな」


 監査が、仕事をする手を止めずに最近己が見張っている生徒が追いかけまわしている女生徒を思い浮かべる。

 もっとも、顔は見たことがないため監査が知っているのは名前だけだが、今の話の流れだとその生徒は特能持ちだということを隠したがっているようだった。


「本人は隠したがっているんだよね?」

「もうバレてるけどねぇ」

「その生徒はバレていないと思っているんでしょう?」

「そうみたいッス。直江センセに特能持ちじゃないって言ってたんで」

「だが、もともとバレるのも時間の問題だったようだな」

「えぇ、自分の限界を知らずに特能を使い続けていたんです。今日じゃなくてもいつか必ず倒れて、周囲にバレていたでしょう」


 冷めた目をして副会長が会長に同意する。


「もう面倒くさいしー、生徒会に入れちゃえば雑用も任せられるし監視もできるしで一石二鳥じゃないー?」

「本人が目立ちたがってないのに強要するのはあまり感心しないね」

「分かんないよー?その子もほら、僕たちの間に入りたがってるかもよ?」

「まぁ拒否するっていうのは考えづらいですね。けれど、その生徒はB組でしょう?」

「そうだな。Cじゃないだけましかもしれないが、少なくともAじゃなきゃ反発は必至だろうな」

「この中に女子が入るってだけでも反発なら起きるでしょー?」

「…その子、1日15科目勉強しているらしいッスよ」

「は!?」

「過労で倒れた理由で、そう言ってたッス」

「…まぁそれだけ強い眼操持ちならありえない事ではありませんね」

「それでB組って…おバカちゃんなのかなぁ?」

「頭の回転は悪くなさそうだったけどね」

「…生徒会入りの方は実際に見てから検討することにしましょう」

「あぁ、そうだな…」


 そこまで話している間に山のように重なっていた書類を半分ほど減らした面々は、生徒会室の扉があく音を聞いた。


「遅いですよ、雷先生。僕は待ちくたびれました。お詫びに差し入れを要求します。」

「遅れたのはすまないが、差し入れはないからな!? で、何か見る書類はあるか?」

「らいさんの机の上に置いてあるよー」

「そうか。…特能持ちの可能性のある俺の生徒についてなんだが」

「今、俺たちでその話をしていたところです」

「こっちで監視下に置くのは難しいが、話を聞く限り風紀では手にはおえないだろうな」

「あー、そうかもしれん。普段は一般人となんら変わらんが、本気になったら風紀じゃ抑えきれないだろうな」


 顧問が、自身の机上に会った書類を見ながら、安土美穂の対策についてどうするかを確認する。


「だからねー、生徒会入りさせようかっていう案がでたんだー」

「その案は実際にその生徒を見てから、ということで保留になりました。なので、そんなしかめっ面をしなくても大丈夫ですよ」

「それにBだからな。入れる可能性は低いだろう」

「…そんなにしかめっ面してたか、俺?」

「えっとー…、しわが3本くらい刻まれてたッスねー…」

「…そうか。まぁそっちの方が効率的ではあるな」


 生徒会入り、という単語に不穏なものを感じ、顧問は思わずしかめっ面をしていた。

 今の生徒会は庶務の役職が開いているので、できない事ではない。が、あの生徒が入れば他の生徒の反発は必至だし、ここでの扱いもよいものではないだろう。


「…頭は大丈夫ですか?」

「は?静、それは俺の頭のことか?バカにしてるのか?」

「違いますよ、その生徒です。特能を使いすぎて気が狂う人なんてごろごろいるじゃないですか」

「あぁ、そっちか。少なくとも今は大丈夫そうだったぞ。しっかり受け答えしてたし、焦点も合ってた。頭の回転もそこそこ速そうだった」

「…そうですか」


 その生徒が強い特能持ちで、その特能が眼操の可能性がある、ということを思い出した副会長が、顧問にその生徒の気が狂ってはいないかを聞く。

 狂っていた場合は、生徒会が“処分”するしかないのだ。誰もそんなことを望んではいない。


「ならなんでB組にいるんだろうねー?」

「まぁこれからクラスが上がる可能性はあるからな。このままならいずれ上がるだろ」

「そんなに頭がいいんですか?」

「ん?あぁ、そうだな。頭の回転が速いし態度もいいから、他の先生からの評判もいいぞ」


 暁学園のクラスは成績順だ。学期に2回ある定期テストや小テストなどの総合や先生からの気に入られ具合では学期の途中でもクラスが上がることがあり得る。もちろん下がることも。

 下がることはよくあるし、C組からB組に上がることもよくあると言えばよくあるのだが、B組からA組に上がることはあまりない。過去に数人程度しか例がないほどには、珍しい。


「立ち回りが上手いってことですね」

「意地の悪い言い方ー」

「事実でしょう。目立たずに教師の覚えをよくする振る舞いを身に着けているんでしょうね」

「おいおい、毒があるな」

「通常運転ですが?」

「…あぁそうかい。そうだったな、お前はそういう奴だったよ」

「あの子よりは面白いといいなー」

「オレはその子がお前に気にいられないことを祈っておくよ…」


 現在生徒会の監視下に置かれている上杉志信を思い浮かべながら会計が言えば、自身のいじられ具合を思い出した書記がその生徒に同情して会計とは反対の言葉を口にした。


「まぁ、いい。近いうちにそいつを見に行くか」

「…全員で行くのはやめておこうね?」

「わぁってるよ、個々で勝手に見に行く。上杉の特別訓練まで後何日だったか?」

「明日からですね」

「ん。じゃあ、各自明日までにその生徒を確認すること!以上、終了!」

「書類はまだ残ってますからね、お忘れなく」

「わぁってるよ!ちゃんとやるよ!」


 これで今日はこの話は終わりだ、と言わんばかりに会長が宣言する。


「…そろそろ昼休みだし、昼飯買ってくるな」

「わぁ、らいさんやっさしーい!僕メロンパンとアンパンとアップルパイと桃ジュースで!」

「ありがとうございます。僕はから揚げ弁当でお願いします」

「ラーメンよろしく。あとプリンも」

「ありがとうございまーッス!オレは日替わり麺で!」

「あ、じゃあ俺は適当なおにぎり3つほどお願いします…」

「いやいや、お前らの分も買うとか言ってないからな!?ていうか掠と疾風はふざけんなよ!?ラーメンとか麺とか運べるかよ!」


 ぶつくさ言いつつも全員の分を覚え、カフェテリアまで買いに行く顧問だった。




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