2条―正義なんてソフトバンク
「自分が何を言っているのか、わかっているのかね?」
刑務所所長プリズン片岡は斜視の入った切れ長の目で、ジャスティス佐原を睨みつけた。
「彼は無罪だと言っているんです。早急に解放してください」
「それは我々が決めることではない」
片岡はお気に入りのグルコースに火をつけ椅子から立ち上がると、吸い込んだ煙を佐原の顔に吹きかけながら低く言った。
「いいか、お前がわしにこのような態度に出るのはいったい何度目だ?そろそろ自分の立場をわきまえんと、絶望の牢獄に入ることになるぞ」
説明しよう。問題のある囚人は絶望の牢獄に放り込まれ、黒魔術の力で全身のグルコースを吸い取られ、死は免れられないという最強最悪の牢屋なのだ。
「私は私の義に従います。誰にも邪魔はさせますん」
かっこいいことを言おうとして噛んでしまった佐原だったが、彼の決意は本物だった。踵を返して署長室から出ると、一目散にフルチン丸山のもとへ駆け付けだ。
そしてその圧倒的な剛腕によって鉄格子をべっこうあめのごとくひん曲げ、驚く丸山をしり目に両手足の枷と猿轡を破壊した。
丸山は漸く言った。
「ど、どうして…」
「話は後だ。今はこの刑務所から脱するが先だ」
言うと佐原は衰弱した丸山を担ぎあげ、出口にむかって駆け出した。
しかし行く手には多くの刑務官が所長を盾にして立ちふさがっている。
「ちょ、お前らが行くのだ!」
「いえいえ所長がお先に…」
などとやりあっているうちにジャスティス佐原は刑務官たちの前に仁王立ちになり、一振り十人殺す必殺パンチで圧倒した。
「くそ、おい!粘着アメーバ鈴木!」
所長がどなるとひときわ体の大きな刑務官が佐原の前に立ちふさがった。
粘着アメーバ鈴木である。
ジャスティス佐原と刑務所のトップオブ剛腕を争うほどの男で、この話における噛ませ犬である。
はたして佐原は無事このスタッフが用意した噛ませ犬を倒し、丸山を救えるのか?
つづく