1条―モンブランみたいな髪型の人に恋をした
ついに犯人が明らかになる!グルコース堤下の的確なアドバイスによりキラー中西は焦る!はたして事件は無事解決するのか?
町内会は騒然としていた。何しろあの高名なグルコース堤下にもいまだ犯人がわからないというのだから。
グルコース堤下は東都大学を中退したのち単身渡米、事務所を開くと行く先々で巻き起こる殺人事件を解決してきた凄腕経済アナリストなのだ。その堤下にもわからないとなると、蚤の糞程の脳みそしかもたぬこの町の連中にわかろうはずがない。
キラー中西はほくそ笑みながら言った。
「やはり犯人はパドリング松村ではないでしょうか」
彼の経営するちくわ専門店は最近経営が悪化していた。それもこれもパドリング松村が新規に商店街に進出して来、圧倒的な貿易手腕を発揮して世界各国のちくわを輸入していまや全国的なちくわチェーン店を経営するまでになっていたからだった。
キラー中西には動機がある。しかしそれに気づくものはいなかった。
いったい誰が犯人なのか。
しかしもはやみな今日行われるWBCを見るために、ポイズン丸山のことなどこれ以上かかずりあってはいたくなくなっていた。
「俺はもう帰るぞ!」
そう叫んだものがいた。
インポータント林である。
林にとってもっとも大事なものは自分である。自分の利益を何よりも尊重し、そのためには他人を蹴散らすほどの傍若無人。町内のみなもほとほと手を焼いていた。
町内会の烏合の衆はざわつき始めた。林が犯人なのではないか?
事実林にはアリバイがない。祭りの最中彼を見たものはなく、誰一人彼を弁護できるものはいない。
しかしその点に気づいたものは一人もいなかった。
「待ちたまえ!」
突如そう叫んだものがいる。林だ。
彼は少し脳をやってしまっているから許してやってほしい。
事態はもはや収拾がつかない。一体誰がこのカオスを収束してくれるというのか。
おばあちゃん衆は早急に阿弥陀如来にこの場を何とかしてくれるよう祈祷を開始した。事態は混とんとしている。
「待ちたまえ!」
またしても叫んだものがいる。山田だ。
事態は混とんを極めた。
時計は刻一刻とWBCの開始時間に近づいている。皆の表情に焦りが見え始めた。
「だいぶ苦労しているようだな。」
町の衆が振り返って先にはなんとポイズン丸山がいた!
叫び声をあげる者、逃げる者、愕然とする者がいっさいいなかった。
それもそのはず。ポイズン丸山を殺そうとしたのは町内会そのものだったからだ。
丸山を疎ましく思った町内会は共謀して丸山をはめ、口裏を合わせて犯人をうやむやのままに迷宮入りさせようとしていたのだった。
キラー中西とパドリング松村は見事にはぶられていた。
そして林は脳をやっていた。
事件は解決した。
町内会の連中は丸山が手配したFBIの一派によって一斉検挙。こうして町には再び平和が訪れた。
-とある病院の集中治療室。
「しかしよく、町内会の連中を出しぬけたもんだね。」
雪山から救助されたグルコース堤下は息も切れ切れにポイズン丸山に語りかけた。
「簡単なことさ。彼らが何か企んでいることは町内会の広報に載っていたからね。事前に影武者をしたてておいたというわけさ。」
タバコの煙をくゆらせた丸山は、火災報知機が反応して降りしきる水しぶきの中で悠然と答えた。
「今回はさすがと言っておこう。しかし影武者には気の毒な事をした。彼のために祈ろう。」
彼らは今回の唯一の犠牲者、シャドウ三村に長い祈りをささげるのだった。
END




