3条―煮込みハンバーグサラダ
迫りくる魅惑の少女に堤下はすっかり心を奪われていた。
その姿たるや、世界にはびこる頑固汚れもきゅきゅっとひと吹きで落ちてしまうであろう妖艶さ。堤下は危うくソーセージをもてあそぶところだった。
少女はか細い声で言った。
「あなたがグルコース堤下さ」
「豚とお呼びください」
堤下ははっとした。思うより先に言葉が出てしまうだなんて…。
(間違いない…これは魔法だ。俺の体はこの少女に乗っとられてこんな屈辱的なセリフを…)
――いやそれは普通に君の本心だ。
(そうだったのか。つーか誰だよおめーは)
ジャスティス佐原である。彼は今日お店(彼はオカマバーで働いている)が休みなので、天の声としてバイト中なのだ。
「怖がらないでください…今日はお願いがあってきたのです」
少女はか細いながらもどこか芯が強そうな確かさをもって堤下に迫ってきた。
堤下のキーゼルバッハ部位はすでに崩壊寸前だ。
「一体何を…?」
――平静を保ちながらも彼の視線はおっぱいにくぎ付けだ。
「いやうるさい黙れ」
とうとう堤下を前にした少女は言った。
「私を…バイトに雇ってください」
そう。やっぱり少女は丸山の妹だったのだ。
トーキオの荒波に耐えきれず大学受験に失敗した丸山の妹、ローレライ綾子は探偵として生きることに決めた。
そこで一番上のお兄ちゃん(90歳)を頼ってきたのだった。
☆
――とある病院。
「いやあまさか妹がうちの事務所に来るなんて思わなかったな」
鼻血をこじらせてショック状態となりICUで静養中の堤下に丸山は語りかけた。
「冗談じゃない。あんなのがいたら俺の鼻はいくつあってもたらんだろう」
そう、今回は特に落ちがない。なぜならただ単にヒロインを登場させたかっただけなのだから。
FIN




