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あいすくじ〜とあるMMORPGに捧ぐ〜

作者: 大山真君
掲載日:2026/10/27


「……あっつう」


 夏の盛りの8月半ば。夏期講習を終えた僕は、照り付ける太陽を忌々しく思いながらも帰路を歩んでいた。

 家まで後20分はかかる。本当に自転車通学の奴等が羨ましい。学校も夏休みくらい全生徒に使わせてくれたって良いだろうに。

 ……はぁ。なんだか喉が渇いてきたな。ジュースでも買うか。

 えーと、何処かに自販機は————


「……暑いねぇ少年」


「ッ!?」


 背後から突然話しかけられた。振り返るとアイスを売る屋台と不気味に笑う女性の姿が。

 …………いや待てさっきまで屋台なんて無かったぞ!  

 一瞬で開設した? いやそんな馬鹿な……疲れているのか僕は。ぼけっとしてて見逃しただけだろう。


「……くくく、買っていくかい? このアイスくじを?」


「……あいす、くじ?」


 見ると看板には確かにアイスくじの文字が。一回300円。一個300円ってことか? 地味に高いな……。

 だけど周囲に自販機はない。ちょっと高いがこれで我慢しよう。僕は財布から300円を出し女性に渡す。


「一つください」


「一つだと……!? たった一つで当てるつもりなのかい君は!?」


 女性が目をむき出しにして叫んだ。顔こええ……。

 というか当たるってなんだよ食中毒か? 洒落になってないんだが……。


「……当たるとどうなるんですか?」


「凍るよ」


「凍る!?」


 何がだよ。


「勿論君のカラダが」


 心を読みやがった!? というかカラダが凍るってなんだよ! 凍死か? 凍死するのかこの夏場に!?


「でも心配ご無用! 大丈夫だよ。うちのアイスは凍らなくて評判だから」


 凍らなくて評判ってなんだよ。……まあ冗談か。サービストークの一種かな? 露店の人は不気味だし、言ってる事はよくわからないがアイスは美味そうだ。ともあれ一つ頂こう。


「ちなみに凍ったら30万円あげるよ」


「追加で10個ください!」


「ふっ……、毎度あり」


 3000円を渡すとコーン付きのアイスを一つ渡された。

 残り9個はどうなってんだと女性を睨むと、急いで二つ目の用意に取り掛かった。

 ……まあいいか。10個なんて持てないし。というか食べる事だって無理だ。ノリで動いちゃったなぁ。キャンセル出来ないだろうか?

 取り敢えず一つ目を食べようかと口を付けたその突如、


 ——かちん。


「……は?」


「あ、やば」


 僕の体を覆う様に氷が出現した。

 えっ? 何コレ? 凍るってレベルじゃねえだろ! というか息は出来てるな。指一本動かせないけど。でも冷んやりと涼しい…………いや待てどう考えてもヤバい状況だろこれ!

 女性の方を見ると泣きながら頭を下げていた。


「まさか一回目で凍るなんて…………なんてツイテないの」


 いやツイテないじゃねんだよ! コレどうするんだよマジで!


「でも私……30万円持ってないだからさ……」


 金とかどうでもいいんだよ! 早く助け…………


「sorry sorry」


 ————シュン。


 青白い光と共に女性は消えていった。アイスくじの露天とともに……。

 は? どういう事? 僕の頭は暑さで駄目になってしまったのだろうか? それとも…………、


 ————パキン。


「あ、治った」


 周囲の氷は砕け散り、僕は自由を取り戻した。

 凍っていた筈なのに身体はなんともない。足元にも氷の跡はかけらも無い。濡れてすらいない。

 白昼夢って奴なのだろうか?

 だが先程までの暑さは露と消え、財布の中には御札が一枚も入ってなかった。


「一体何なんだ……アイスくじとは……」


 冷たさとは別の寒さが僕の背筋を走っていた。

 

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