雪の降る日
どんよりと曇った空から、白銀の塊がほろほろと崩れてくる。
ひとつ、ふたつ、みっつ。手のひらに落ちた粒は、しばらくすると溶けて消えてしまった。まるで雪みたい、なんて表現を本で読んだことがある。確かに伝わる冷たさや儚さは、詩的なものに映ることだろう。
はぁ、と大きく白い息を吐く。両手を擦り合わせると、わずかながらに手が温まった気がした。降り続ける雪は止む気配はなく、明日にはさらに積もっていることだろう。
縁側に腰掛け、足をぷらぷらさせる。つま先が真っ赤になって、ちょっと感覚がなかった。けれど靴下を履くのももったいない気がしたのだ。
ザクザク。草履が砂利を踏む音。
「よっ、雪絵」
視線をあげると、にっかり。太陽みたいに笑う先生がいる。
「んな寒ィ日にどうした?」
先生は大きな手で雪絵の頭を乱暴に撫でた。どっかりと隣に腰を下ろし、肩にかけていた包みを広げる。
「……雪をみていたの」
「ははっ!童のくせに風流よのぉ!さすがは儂の弟子じゃ」
包みを広げると、中には砂糖菓子があった。1粒つまみ、雪絵の口に放り込む。黙って咀嚼すると、先生は心の底から嬉しそうに笑う。甘くてほろほろ崩れるお菓子が、口の中で溶けて消えていく。
「どうだ、美味いだろ?」
「……うん」
砂糖菓子は甘くて美味しい。でもきっと、美味しい理由はそれだけじゃない。
空は相変わらず濁っていて、お天道様は当分拝めそうになかった。それでも、ほんのりの胸の内側が温かい。
ずっと、この感覚を抱いていたいと思った。




