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食屍鬼 -総龍会-  作者: 藤岡
続かぬ望み
84/85

03

その話をしてから数日後、燈龍凱斗は黒龍隊長として完全復帰を果たした。

隊員達は泣いて喜び凱斗を胴上げした。

各龍にも引き続き凱斗が隊長を務めることが知らされた。

白龍の隊長は猫八の弟の亀八(きはち)が任命された。

警察からの協力要請の頻度は日が経つ毎に増えていったが、食屍鬼が居た頃に比べると疲労度はそこまで高くは無かった。

黒龍に目を付けられると生きては帰られない。

そんな噂が立つと、黒龍地区が大人しくなった代わりに他の地区が騒がしくなり、黒龍が他の地区への見回りに出ることも増えた。

平和とは呼び難いが前よりは少しマシな生活。

それでも苦しみ悲しむ人は毎日どこかにいる。

そんな人達が一人でも少なくなりますように、龍の者達はそう願う。

「桜庭、会議に行くぞー。」

「え、もうそんな時間ですか?!」

凱斗は食堂を後にし、桜庭はマロンに手を振り凱斗の後を追う。

毎週土曜日の午前中に総龍会議が行われている。

各龍の隊長と幹部が一人ずつ集まり、会長を中心に一週間の出来事を報告し合い補い合っていた。

だが、ここ最近は会長の体調が優れない日が多く、総龍幹部だけの参加の日が目立ち始めていた。

隊長や幹部は会長を心配しつつも報告を行い、終われば即解散し任務に励んだ。

「今日も会長は不参加だったな。」

凱斗は気怠そうに歩きながら後ろを歩く桜庭に話しかけた。

「はい。入院も視野に入れていると幹部の方から連絡がありました。」

「そうか。会長も爺さんだからな。それなりの覚悟をしておいた方がいいのかもしれねぇな。」

凱斗の声は少し暗くその後は何も話さないまま廊下を歩く。

その日は特に大きなことは無く、会議と犬の散歩しかしていない凱斗は夜遅くなっても寝付けなかった。

──────────────

翌日の朝。

目の下にクマを作った凱斗と呆れ顔の桜庭を乗せた車は総龍敷地内の墓地へと向かった。

「アニキ大丈夫ですか?」

運転をする悠司の隣に座る陽平が水を差し出すと凱斗はボーッとしながらそれを受け取り口へと運ぶ。

「貴方って人は!夜更かしはほどほどにしてください!」

「っせぇ!疲れてないと寝れねぇんだよ!やっと寝付けたと思ったら二時間後には車の中。ちょっと眠らせてくれ。」

凱斗は桜庭に水を渡すと目を閉じる。

「全く。ついたらちゃんと起きて下さいよ。」

桜庭は受け取った水をクーラーボックスの中へと入れ、後ろの席からタオルケットを取りだしそっと凱斗に掛ける。

「桜庭さん、お母さんみたいっすね。」

「わかる、俺も思った。」

「誰がお母さんですか?事故らないように運転に集中してくださいね。」

桜庭がニコリと笑うと、それを見た陽平がブルッと震え前を向く。

ガタガタと揺れる車は凱斗にとっては心地よく、いつまでも眠っていたかった。

だが、思っていたよりも早くつき起こされる。

膨れっ面で墓へと足を運ぶ凱斗に桜庭は小さな声で注意をする。

「久々に顔を合わせるのにそんな顔では皆さん悲しみますよ。」

凱斗は目を擦ると頬をペチッと叩く。

「よし、行くか。」

凱斗は奥へ奥へと進み、燈龍家の墓の掃除をして手を合わせた後猫八の墓の掃除を始め、綺麗になった墓を見て満足気に手を合わせた。

桜庭と陽平と悠司も手を合わせ、黒龍隊員の墓を回る。

今まではろくに墓参りも出来なかったのでゆっくりと時間をかけて回った。

凱斗は一人一人に沢山話しかけて回る。

食屍鬼に奪われた命も人間に奪われた命も皆ここで眠っている。


凱斗達が墓参りを終え帰ろうと片付けをしていると、総龍幹部がこちらへ向かってくるのが見えた。

「燈龍隊長、会長がお呼びです。」

凱斗の眉がピクリと動く。

「燈龍隊長一人に来て欲しいとの事です。」

「分かった。桜庭、陽平、悠司、片付け頼むね。」

凱斗がそう言うと三人は敬礼をする。

凱斗は総龍幹部と屋敷へと向かい、会長の部屋の中へと入る。

ベッドの上に座りこちらに手を振る会長は前見た時よりも痩せていて、凱斗は思わず口を震わせた。

「何を泣きそうな顔をしているんだ凱斗。こちらに来て座りなさい。」

会長はか細い声でそう言うとニコリと笑いベッドの横の椅子を指差す。

凱斗は眉を下げて椅子へと腰を掛けると、会長は凱斗の頭を撫でた。

「凱斗は良い子だな。優しくて、一生懸命で……。」

「なんだよ急に。」

「凱斗の事は本当の孫のように思っている。」

「俺は第二の親だと思ってるよ。」

「はっはっ、嬉しいことを言ってくれるね。」

「で、急に呼び出してどうしたの。」

「墓に来ていると聞いてね、顔が見たくなった。」

「なんだよそれ。いつでも会えんじゃん。呼ばれたらすぐに来るよ。」

会長は凱斗の頭から手を下ろすと、凱斗の手を握る。

「なあ、凱斗。」

「何?」

「お前、龍を纏めないか?」

「龍を纏める?どういう事?」

「龍を纏めるのは総龍会、という事は知っているだろう?」

「それは知ってるけど。え、何?」

「察しが良い子だという事を私は知っているぞ。」

「………俺に総龍の隊長をやれって?」

会長の手の力が増す。

「隊長じゃない、会長だ。」

「は?」

「もう分かるだろう?

私は長くは無い。総龍の会長も決めておかなければならない。私は凱斗が相応しいと思っている。」

「冗談はやめてくれよ会長。俺はそんな器じゃない。」

「今すぐに答えを出せとは言わない。でも少し考えてみてくれないか?」

凱斗は会長の手を優しく包む。

「会長の頼みならまあ……考えるだけ考えてみるよ。」

「はは、有難うな、凱斗。」

会長がニコリと笑うと凱斗もつられてニコリと笑った。

「でもどうして急に?会長自身のこと以外にも理由がある気がするんだけど。」

凱斗が不思議そうに聞くと会長は微笑む。

「本当に察しがいいな。

ああ、私の事だけではない。食屍鬼が居なくなり、最近暴れている人間が多いだろう。」

「そうだね。」

「その中でもあるグループの名前がよく上がる。」

「あるグループ?」

「そう。どんな事でもやると言われているグループがあってな。大きな組織だ。

だが奴らのボスは誰も知らない。

それにその大きなグループの下にもう二つのグループがあると言われている。

主にその二つのグループが悪さをしているんだが、中々捕まえる事が困難でな。」

「でもそいつらって事は分かるんでしょ?ならどうして?」

「奴らが関する事件の犯行現場には必ずトリカブトという花とスノードロップという花のどちらかの造花が置かれている。」

「わざわざ証拠を?愉快犯か?」

「ああ、奴らは人の死を喜んでいる。楽しんで犯行に及んでいる。

食屍鬼が活発になる前に一度、このグループの手にかかった者を見た事があるが、それは悲惨な姿だった。

そのグループは最近大人しくしていたがまた活発になってきてな。

総龍の手を借りたい、と頼まれている。」

「なるほどね。理由は分かったよ。」

「凱斗にゆっくりして欲しいと言ったのに、すまない。」

「いや、いいよ。

俺も人を守りたいって言ったんだし、総龍会長になるかは一旦置いといて、黒龍隊長としてこの話は覚えておくよ。」

「ああ、今はそれでいい。私は一番お前を信用しているんだ。」

凱斗は頷き優しく微笑んだ。

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