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食屍鬼 -総龍会-  作者: 藤岡
続かぬ望み
83/85

02

凱斗は三人の楽しそうな顔を見て微笑んだ。


あの日の手術はそう時間はかからなかったが、目が覚めたのは手術が終わってから三日後の夜であった。

体の隅々まで調べたがウイルスの侵食は見られなかったが、脳には一部変色した箇所が見つかり、血管の中にもウイルスが溜まっている事が判明した。

が、大橋が抑制剤と共に研究を進めていたウイルスを完全消滅させる薬を提出しそれのお陰で脳も正常に戻り凱斗の体内からウイルスは完全に消滅した。

自分にもしものことがあった時の為に作った、と言う大橋には皆呆れていた。

それから数ヶ月はゆっくりと体を休めた。

好きなだけ寝て、好きな時に行きたい場所へ足を運び、美味しいものを食べ、自由に過ごした。

幼い頃は特訓や勉強ばかりで成人してからは龍としての仕事ばかりの日々だった凱斗に趣味なんてものは特には無かった。

陽平、悠司や他の隊員に色んな遊びを教えてもらった。

そして、平和になったら飼おうと約束していた犬をかった。

茶色くてフワフワとした毛並みの小さな子。

隊員達は皆デレデレとしていたがその中でも桜庭が一番デレデレしている。

桜庭が犬と遊ぶ姿を動画に収め会長や各隊長に送った事が後にバレ酷く叱られた。

そして凱斗は、黒龍を辞めるという選択肢を蹴った。

平和と言っても食屍鬼が居なくなっただけで悪い人間はまだ山ほどいる。

自分は食屍鬼に家族を奪われ絶望を味わった。

だが、人間に家族を奪われ絶望を感じている人も少なくはない。

自分の最初の目的は果たせた。

ならば次の目的を持てばいい。

凱斗は会長と桜庭に自分の思いを話した。


俺は家族を護れたのか分からない。

家族は俺を護ろうとしてくれた。

最期に父を楽にしてやれた、それは護ったと言いきれるのか分からない。

あの時相手にしたアンラという食屍鬼。

あいつの話を聞いて俺の心は揺らいだ。

ただ家族を守りたいだけ。同じ気持ちなのにどうしてこうぶつかるんだ?って。

姿は違えど同じ人から産まれたんだなあ、って。

コイツは俺の弟なんだな、そう思ったらもう何が正解なのか分からなくなったんだ。

人間が偉い訳では無い。

人間が一番強い訳でもない。

強さで言えば奴らの方が上だ。

なのになんで俺如きがこんなに偉そうにしてんだ?俺が正しいって思い込んでいるだけじゃないのか?

噛まれた後アンラの首を落とした時、俺の中で何かが崩れたんだ。

憎いけど大事な物を失った。そんな感覚だった。

俺は知らなかったんだ。

食屍鬼があんなに色々なことを考えていて、ちゃんと感情があって、見た目だけじゃなくて中身まで人間っぽいんだ、って事を。

他に方法はあったんじゃないか?そんな事を思っていた。

病院に運ばれて、空を眺めていた。

家族がいる、そんな気がした。

ずっと心の中で問い掛け続けた。

「お父さん、お母さん、俺は間違っているのかな?何が正しいのかな?」って。

返事が来ることなんてなくて、答えが見つからなくて、人としても考えも中途半端な俺が黒龍の隊長?それはどうなんだろう?務まらないんじゃないか?ならやっぱり辞めて姿を消した方が良いのだろう。

そう思っていた時、桜庭が俺に言ったんだよ。

私が苦しめていた。だの、私が標的になっていれば。だの、何言ってんだこいつ?と思って見たら頭下げててさ。

桜庭のそんな姿見たらまた俺の中で何かが崩れて。

今目の前に居る人を悲しませてどうするんだ。って。

本来なら今皆で笑いあってなきゃ駄目だろ。って。

何でしなくていい謝罪なんかさせているんだ、って思ったんだ。

悲しませたり辛い思いさせて俺は本当に隊長として失格だな。

ずっとずっとそう思っていた。

屋敷に帰って隊員達の顔を見たらもう情けなくてさ。

それからもずっと考えた。

手術を受けるってなった当日。

俺は術後生きていたらそっと姿を消そう。

そう思っていたんだけど、夢を見たんだ。家族の夢を。

すげぇ幸せそうでさ、ガキの頃の俺すっげぇ笑ってんの。

お父さんもお母さんも香夜も幸せそうで。

俺の中ではあの時のままなんだよなぁ、三人とも。

当たり前だと思っていた幸せが突然奪われる、なんて誰も思ってないだろ。

そんなこと考えながら生きてるやつなんていないと思うんだよ。特に子供。

俺さ、黒龍地区で見かける子供が幸せそうに笑いながら親と手を繋いで歩く光景とか、微笑ましい半面凄く羨ましかったんだよ。

そんな子供達はこれから食屍鬼には怯えなくて良くなった。

ただ、悪い人間はウジャウジャいる。

食屍鬼が居なくなったことにより暴れ出す人間が増えたのも事実。

じゃあ俺がその子達と家族守ってあげられるなら守ってあげたい。幸せであってほしい、そう思えてきて。

子供に限らず大人もね。

俺が鍛えてきた黒龍(かぞく)は誰よりも強いから、これからは俺も頼っちゃおうかな、なんて。

短期間で色んな事を考えては悩んで、考えては悩んでを繰り返して自分の中でこうかな?違う。こっちかな?違う。って自問自答繰り返して。

でも俺頭悪いからさ、パンクしちゃって。

「もう何も分かんねぇ!なら今思うこと全部やればいいじゃん!でも黒龍辞めたら今までみたいには守れねぇ!なら辞めずに守って満足したら黒龍に全部任せて黒龍辞めて自由に暮らす!もうこれでいい!」

って考えに至っちゃったわけ。

ははっ、こんな適当な考えじゃやっぱダメかな?


少し気まずそうに笑う凱斗を見て、会長と桜庭は顔を合わせて笑う。

「凱斗さんが考える事が苦手という事は重々承知してます。

正解なんて誰にも分かりませんよ。

だから、私達龍と一緒に色々探りながら生きていけばいいんじゃないでしょうか?」

「桜庭の言う通りだ。

私は凱斗の目的は果たされたのでこれ以上龍である必要は無い。無理はしなくて良い。

そう思っていたが、凱斗に新たな目的が出来て、その目的を果たすのに龍の力がいるというのならば私は喜んで力になろう。」

桜庭と会長の言葉を聞いた凱斗はニコリと笑う。

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