03
その部屋は薄暗く狭かった。
部屋の端には汚れた様々な道具が置かれ鉄製の椅子に拘束された大橋が座っている。
大橋の辺りには赤黒い跡があり、大橋は俯いたまま動かなかった。
「久しぶり、大橋。」
凱斗はそう声をかけると綺麗な椅子を大橋の前に置き座る。
体をピクリと動かし顔を上げた大橋の目に光は無かった。
「ははっ、相当お仕置きされたんだな。」
凱斗はそんな大橋の姿を捉えるとニコリと笑う。
「凱斗くん……。」
大橋の声は掠れていた。
「4種の龍を束ねる総龍。
温厚そうに見える会長は総龍のトップ。
食屍鬼が現れる前から悪人の相手をし続けた人。
大橋、お前は龍を舐め過ぎたんだよ。」
凱斗は足を組むと笑顔のまま冷たい目で大橋を見つめた。
大橋は目を伏し小さな声で「辛い、頼む、殺して。」と言うと凱斗から笑みは消える。
「生きているのが辛い、殺してくれ。
悪人共が揃って言う言葉。もう聞き飽きた。」
凱斗は小さく息を吐くと大橋を睨み付ける。
「お前はどれだけの人を苦しめた?
どれだけの人の人生を狂わせた?
お前の欲の為にどれだけの人が犠牲になった?
自分だけ楽になろうなんて考え持ってる時点でお前は反省してねぇんだよ。
……俺が直々にお仕置してやろうか?」
凱斗の言葉を聞いた大橋は目を見開くと暴れ出す。
そんな大橋を見て凱斗は立ち上がると道具が置かれている場所へと向かう。
「やめて!やめてくれ!凱斗くん!もう嫌だ!」
凱斗は大橋の言葉に耳を傾ける事無く道具を手に取り眺める。
「久々だな、どれにしようかな。」
大橋に聞こえる大きさの声で独り言のように呟く凱斗の瞳は闇に覆われ口元は緩んでいた。
「頼む!凱斗くん!私が悪かった!反省している!もう二度とこんな真似はしない!だから、頼む……お願い、お願いします!」
大橋は大粒の涙を流しながら凱斗に懇願するが、凱斗は手に取った道具を眺めながら大橋の前へと立つ。
「え?何?ごめん、よく聞こえなかった。」
凱斗はニタリと笑うと大橋の前髪を掴み目を合わす。
「俺の家族奪った罪はでけぇぞ。」
大橋は凱斗の目を見て声を発することが出来なくなり、身体を震わせ尿を垂れ流した。
凱斗はそんなのお構い無しで椅子に固定された大橋の手の指を見る。
「へえ、もう無いんだ?爪。」
凱斗はそう言うと大橋の爪があった場所をゆっくりと撫でる。
大橋が悲鳴を上げると凱斗は口角を上げる。
「もしかしたら1本位あるかもしれない。触って確かめてみようか。」
凱斗は一本一本ゆっくりと撫でる。
撫でられる度に大橋は悲鳴を上げた。
「手の爪も足の爪も無い。全部取られちゃったんだね。
手当ても適当にされてる。お前本当に可哀想な奴だな。
死んでもいいと思われてるよ。」
凱斗は椅子に腰をかけ足を組むと笑いながら言う。
大橋はハァハァと息を切らし下を向いていた。
「おい大橋、こっち向け。」
大橋は体をビクンと跳ねさせゆっくりと顔を上げる。
「あーん、して?」
ニッコリと笑う凱斗の手にはニッパーが持たれており、それを見た大橋は口を強く閉ざした。
「あれ、聞こえなかった?
ははっ、口開けろっつってんだ。早くしろよ。」
凱斗が少し声を荒らげると大橋は小さく口を開ける。
「見えねぇ。もっと大きく開けろ。」
大橋は涙を流しながら大きく口を開けると凱斗は中を覗き込む。
「あら、歯は残されてんだ。
……あー、そう言えば会長が尋問して~とか言ってたな。
話聞くのに歯が無いと何話してるか聞き取りにくくなるから残したって感じか?」
凱斗は手に持つニッパーをカチカチと鳴らすと大橋は急いで口を閉じる。
そんな大橋を見た凱斗は大橋を蹴り倒し、上に跨り大橋を見下ろした。
「誰が閉じていいっつった?次勝手な事やったらタダじゃ済まさねぇぞ。口開けろ。」
大橋はまた涙を流し口を開けた。
「いい子いい子。そのままでいてね。」
凱斗はニコリと笑うと大橋の椅子を起こし前に立つ。
「で、お前もう全部吐いたよな?」
凱斗の言葉を聞いた大橋はこれから行なわれる事を察し震え出す。
「口を開けたまま話せないと思うから、首を縦か横に振ればいい。」
大橋は凱斗を見つめたまま震えるだけだった。
「俺の言ってる言葉が理解出来ていない?首を振れって言ってんの。」
大橋は小さく首を縦に振ると、凱斗はニコリと笑う。
「全部吐いたんだな?」
大橋は眉を下げたまままた小さく首を縦に振ると、凱斗はまたニコリと笑った。
「じゃ、もう歯いらないな。」
凱斗が大橋の頬を掴みニッパーを目の前でチラつかせると大橋は唸り暴れ抵抗する。
「いくら暴れようが俺には関係ねぇ。
……俺が今まで食屍鬼だけじゃなくどれだけの人間を相手にしてきたか……知ってんだろ?」
大橋は暴れ抵抗しながら思い出す。
一度だけ見た事がある人間を相手にする凱斗の姿を。




