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食屍鬼 -総龍会-  作者: 藤岡
目的と真相
79/85

02

「今燈龍さんにお渡ししている錠剤型の抑制剤。

これは大橋さんの研究資料を参考に制作しています。

ですが、この抑制剤は継続期間が二週間ほどです。

これを寿命まで続けるというのは困難。

そして私達研究者は抑制剤についての研究を始めました。

そして、抑制剤を飲まなくても良い身体にする方法を見つけました。」

高山は資料を一枚捲ると続けた。

「食屍鬼に噛まれ血管から食屍鬼の唾液が入り込む事で人は食屍鬼へと姿を変えます。

それは人間の体内に食屍鬼のウイルスが入り込みそれが侵食する事で成り立つとされます。

そして抑制剤、これはウイルスの働きを抑える効果があります。」

高山はまた一枚捲り続ける。

「このウイルスは血管内に留まる期間が長いです。

一定量のウイルスが注入されるとウイルスは体内に広がりそれぞれの臓器を侵食していきます。

そしてウイルスの最終到達地点は脳と考えられます。

脳にウイルスが到達した時点で抑制剤の効果は無い、これは私達の実験で証明されています。」

「実験?」

凱斗は高山をジトリとした目で見つめながら問う。

「はい。

人体実験は出来ませんのでマウス実験を行いました。

3匹のマウスこれをABCと分けます。

Aにはウイルスを一度投入後観察。

Bにはウイルスと抑制剤を一度ずつ投入し観察。

Cにはウイルスと抑制剤を交互に投入し続けました。」

高山は資料をもう一枚捲る。

「Aは少し動きが鈍くなりましたが特に変わった様子はありませんでした。

BはAと同様特に変わった様子はありませんでした。

Cは何度か投入した後突然暴れ出しました。

餌を食べなくなり、小さく刻んだ肉をケースの中に入れると無我夢中で食べ始めました。

そして抑制剤を投入し観察をしましたが変わることはありませんでした。

Cを解剖した結果、脳が変色していました。

そして心臓以外の臓器も同じく変色していました。

ウイルスに侵され変色したと思われます。」

高山は資料から凱斗へと視線を移す。

「燈龍さんは感染速度が異常に速かった、と伺いました。ですが、抑制剤は効いた。

私達の調べでは脳に到達し食屍鬼になる、そう考えられていますが、燈龍さんの場合は少し人と違う力があるのかもしれません。

ですので、一度臓器を調べさせてもらいもし変色が見られれば移植をする、体内のウイルスを除去していくことで抑制剤を服用しなくて済む可能性があります。」

「臓器を侵食されていたとして、それを移植すれば治るのですね?」

桜庭が食い気味で高山に問いかけると高山はうーんと考え込む。

「私達も初の試みですので絶対とは言いきれません。」

高山が申し訳なさそうにそう言うと、桜庭の表情は暗くなった。

そんな二人のやり取りを見ていた凱斗はクスリと笑う。

「凱斗さん、何を笑っているのですか?」

桜庭は眉を下げながら凱斗を見つめる。

「この辺りの地区にあの薬を飲んだ人が何人いるのかは知らない。

だが今回の俺の手術が成功すればその人達を助けることが出来る。

元から死ぬ覚悟は出来ている。

失敗しようがなんだろうが俺は構わない。

実験だと思って俺の中を見てくれ。」

凱斗の言葉を聞いた桜庭は目を見開いた。

「貴方って人は!助かる保証がないのですよ?!もう少し調べてからでも……。」

「助かる保証なんて今まで一度も無かった。

それに、保証が無いと動けねぇって奴は黒龍にいらねぇ。

俺は仮にもまだ黒龍の隊長。情けねぇ姿は見せられない。」

凱斗は桜庭にそう言うとうーんと大きく伸びをした。

「食屍鬼に立ち向かうのとこの手術は状況が違うじゃないですか!」

桜庭は凱斗を説得しようと必死で話すが、凱斗に鼻で笑われる。

「俺は今薬で抑えてるだけで食屍鬼とほぼ同じなの。

食屍鬼に立ち向かうのと同じことなの。

桜庭や会長が俺と同じ立場だったとしたら手術受けようとすんだろ?違うか?」

凱斗はそう言うと会長をチラリと見る。

「そうだな。

私はそもそも老いぼれの身。他に同じように苦しむ者が出る前に少しでも助けになれるように私も受けるだろう。」

会長の言葉を聞き凱斗はうんうんと頷くと桜庭を見る。

「桜庭、お前ならどうだ?」

凱斗と目が合った桜庭は下を向き「私もきっと……受けると思います。」と答えた。

「だろ?俺だけには受けさせない、それは間違いだ。分かったな?桜庭。」

やや不満が残っていそうな声で桜庭が「はい。」と答えたのを確認した凱斗は高山へと視線を移し「頼むよ。」と微笑んだ。


その後凱斗は赤龍と青龍の隊長と談笑し、高山は凱斗の手術の準備を整える為研究所へと戻った。

暫くして会議は終わり、凱斗は会長と桜庭と共に地下へと向かった。

地下へ向かう道中、誰一人と話す者は居なかった。

地下の扉を開くとジメジメとした空間に出る。

一番奥の扉の先に大橋がいる事を聞いた凱斗は会長と桜庭に、一人で行かせてくれ。と頼んだ。

会長と桜庭は手前にある部屋で待機しているので、何かあれば直ぐに声を掛けるようにと凱斗へ告げる。

凱斗は笑顔で頷くと一人奥の部屋の扉を開く。

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