05
「凱斗、さん……。」
桜庭は凱斗に駆け寄り腕を掴む。
「離せよ桜庭。」
凱斗は静かにそう言うと冷たい目で桜庭を見る。
「首は落としました。それにもう……。」
原型を半分無くしたソレを見て桜庭は目を細める。
「首を落とした。だから、何?」
凱斗は掴む桜庭の腕を振り払いソレに向かって剣を振り下ろす。
ソレはドロドロと赤黒い液体を流した。
「コイツは俺の家族を奪った。」
凱斗は剣に付着する赤黒い液体を振り落とし納刀する。
「この食屍鬼が家族だと言いきれますか?」
桜庭は穏やかに眠るソレへと視線を移す。
「夢で見たんだ。コイツ。お母さんと香夜を喰った食屍鬼と同じだ。それに……瑠璃も。」
凱斗は桜庭の目を見ると、ヘラリと笑う。
「瑠璃は最初から俺達のことを家族だなんて思っていなかったのか?……俺が見た夢は、夢じゃなく現実なのか?」
「凱斗さん……。」
桜庭は凱斗の弱々しい声を聞き眉を下げた。
「桜庭、そこに眠る食屍鬼は紛れもなく俺のお母さんと妹だ。
奴にやられた時、微かに息があった。
最後に力を振り絞って俺に教えてくれたことがある。」
凱斗は大きく息を吸い込むと暗く染まった空を見上げた。
「オクニ、オト、サンガ、イル。」
「タスケ、テ、アゲッテ」
「カイト、オニッチャ」
「アイシテルヨ」
「燈龍さんが?!」
桜庭は目を見開き大きな声でそう言うと、ハッとし小さく頭を下げた。
「そう。お父さんがこの奥にいる。
なんだろうな、最初はまた食屍鬼の戯言だと思ったけど……瑠璃の姿を思い出して、もしかしたら本当に食屍鬼として生きていたのか?って思うようになった。」
凱斗は桜庭と隊員達を見て優しく微笑む。
「瑠璃がどうして俺達の前に姿を現したのか、どうしてこんな事になってしまったのかはまだ分からない。
本当にお父さんがいるのかも分からない。
でも俺は家族の言うことを信じたい。
もし本当にお父さんがいるのならば、俺の手で楽にしてやりたいんだ。」
桜庭と隊員達は凱斗の目から流れる雫を見て頷く。
「俺達はアニキについて行きますよ!」
「お父さんを楽にしてあげましょう!」
「燈龍さんもきっと、凱斗さんに葬られることを望んでいるはずです」
凱斗は下を向いて頷くと、前を向いた。
「フラフラとして申し訳ない。頼りない隊長かもしれないが、お父さんのところまで一緒に来てくれ。」
凱斗の目はまっすぐ桜庭と隊員達を捉える。
桜庭と隊員達は嬉しそうに微笑むと凱斗を先頭に陣形を組んだ。
桜庭は凱斗の隣へ立つと「背中は私が。」と微笑む。
凱斗は少し照れくさそうに笑うと、目をキリッとさせ前へと進む。
「お母さん、香夜。必ずお父さんと迎えに来るから少しそこで眠っていてくれ。」
凱斗はポツリと呟くと暗闇の中を進んで行く。
モロクを殺れたのは怒りの勢いだ。
次に出てくるのはきっとあの二人。
きっと手強いのだろう。
でも、俺にはこいつ達がいる。
今の俺には、お父さんを助けるという明確な目的がある。
負けるわけにはいかない。
誰一人、もう失ったりしない。




