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食屍鬼 -総龍会-  作者: 藤岡
モロク
62/85

03

「お前……。」

凱斗は目を見開き地面へと剣を落とす。

「凱斗さん!!」

桜庭は慌てて駆け寄り凱斗の肩を抱き、黒い影を見て言葉を失った。

「はっはは、どうした凱斗?喜びのあまり声も出ないか?」

モロクは凱斗を見てケタケタと笑うと黒い影の隣へと立った。

凱斗は肩に置かれた桜庭の手を優しく払い、落とした剣を拾い構える。

「ああ、まさか本当にいるとは思わなかった。

ありがとうな、俺に復讐の機会を与えてくれて。」

凱斗の長い前髪の隙間から覗かせるその目はキラリと光り口は少し緩んでいた。

そんな凱斗を見たモロクは森に響き渡るほどの大きな声で笑う。

「自分の家族を殺せる程までに成長したのか!素晴らしいよ兄貴!!さぁ!早く殺ってみせてくれよ!!」

モロクは興奮のあまり垂らす涎の勢いが増す。

凱斗は眉をピクリと動かすとモロクを睨みつけた。

「こんな化け物を俺の家族だなんて言ってんじゃねぇぞ。」

凱斗はモロクを睨み付けたまま剣先を黒い影へと向ける。

「見た目に惑わされるな、凱斗。」

クックックと笑いながらモロクはその影を強く蹴り上げると、影はゴロゴロと凱斗達の前へと転がる。

桜庭は咄嗟に凱斗の前へと立ち剣を向け、隊員達も凱斗の周りに集まると皆構える。

モロクは嬉しそうにニタニタと笑ったままその様子を眺めた。

黒い影はゆっくりと身を起こし、座り込む。

桜庭と隊員達は黒い影に、次に動けば攻撃をすると威嚇する。

自分の前に立つ桜庭と隊員達を押し退けた凱斗が顔を見せると黒い影はゆっくり、ゆっくりと凱斗へと目を向けた。

隊員達は今にも斬り掛かる勢いでいたが凱斗が「俺が殺る。」と言うと隊員達はグッと堪える。

その影は凱斗が前に見た夢に現れた食屍鬼と似ており、ドロドロと溶けた顔に神経がチラリと見えており、目玉と口だけがハッキリと分かる。

凱斗は夢を鮮明に思い出し怒りで身体を震わせた。

そんな凱斗を見つめるソレは静かに涙を流し小さく口を動かした。


「オ、ニィ、チャ。カイ、ト」


「コロ、コロシ、テ」


「オネ、ガイ」


「ゴメ、ネ」


凱斗に向けてそう言うソレは、優しく微笑んだ。

凱斗はソレをキッと睨み付け「ふざけるな!」と叫ぶ。

「お兄ちゃん?そう呼んでいいのは香夜だけだ!俺の名前を呼ぶんじゃねぇ!何が、何が殺してだ!どうして……どうして謝る……んだ……。」

怒りを顕にし叫ぶ凱斗の目からはポタリと一筋の涙が流れる。

ソレはそんな凱斗を見ても優しく微笑み続けた。

両手を後ろに回し、首を斬りやすいように上を向くと「ゴメ、ンネ」とまた小さく囁く。

ソレの目から流れる雫は頬を伝い下へと落ちる。

桜庭と隊員達は凱斗を見つめ、モロクはニタニタとしながら「殺さないのか?」と意地悪に言う。

凱斗は涙を拭うと剣先をソレへと向ける。

「どうした凱斗?さっきまでの威勢はどこに行った?また、弱い自分に戻るのか?」

モロクはそう言うとその場に座り込みジッと凱斗を見つめた。

凱斗はまた冷たい目をソレに向けるが、中々手が動かせずにいた。

「そうやって躊躇し隙を見せていたらその間にお前の大事な者は殺されるかもしれない。

はっはは、なぁ?凱斗。

俺がお前の周りの隊員を喰うことなんて簡単なんだぞ?

いつまでも大人しく、なんて俺には出来ねぇぞぉ?」

モロクは少し足を揺らしながらそう言うと隊員達へと目を向ける。

隊員達はモロクの方へと剣を構えるが、その姿を見たモロクはまたニタニタと笑う。

「凱斗さん……。」

桜庭は軽く凱斗の肩を叩き「私達がついています。」と言葉をかける。

凱斗がチラリと桜庭を見ると、桜庭の目は潤んでいた。

そんな桜庭を見た凱斗は大きく息を吸い込むとソレへと視線を戻し、小さく口を開く。

「お前は……誰なんだ?」

ソレは凱斗の問いかけにピクリと反応を示すが言葉は発さない。

言葉の代わりに流れる涙の勢いが少しだけ増した。

「凱斗、遅い。一匹相手にどれだけの時間をかける?」

モロクは目の赤みを深めキッと睨み付けてきた。

凱斗は一度目を閉じると、カッと見開く。

その目は闇を深め赤い光を強めていた。

「俺はまだまだだな。」

凱斗はモロクを視界に捉えるとゆっくりと歩き出す。

モロクはソレを殺らず自分に近付く凱斗を見てニタリと笑う。

「凱斗、アイツはどうした?殺らないのか?」

笑いながらそう言うモロクへ向かって力強く走り出したかと思えば、一瞬にしてモロクの腕を切り落とした。

モロクは落とされた腕を見つめ笑う。

凱斗はその勢いのまま高く飛び上がるとモロクの首を狙う。

が、モロクは落ちた腕を拾い上げると素早く後退し凱斗の攻撃を避けた。

隊員達は皆一斉にモロクへと剣を向ける。

モロクはニタリとした顔のまま拾い上げた自分の腕へと涎を零す。

「折角家族に会わせてやったのになぁ?仕方ない。

お前がそういう態度を取るなら俺ももう我慢はしない。」

モロクは腕を傷口へあてるとスッと目を閉じる。

切り落とされた腕は瞬く間に元に戻ると、モロクは腕をブンブンと振り回し、凱斗へ不気味な笑みを送る。

「お前を喰う事、もう我慢しないぞ、凱斗ぉ!」

モロクは悪魔のような笑い声を上げながら凱斗へ向かい走り出し、そのまま高く飛び上がると一瞬で姿を消す。

隊員達と桜庭はキョロキョロと見回しモロクを探すが見つからない。

座り込んだままのソレはピクリとも動かない。

凱斗は静かに目玉だけをギョロリと動かした。

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