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食屍鬼 -総龍会-  作者: 藤岡
モロク
61/85

02

「連れて来た、という事は助ける気が無い。そういう事だな?凱斗。」

凱斗は布袋からゆっくりと姿を現し立ち上がるモノへ剣先を向けると冷たい視線を送る。

立ち上がったモノは焦点の合わない目をキョロキョロとさせ、凱斗を見ると涎をポタリと垂らした。

ソレを見た隊員達の中には目を逸らす者もいて、桜庭は悲しそうな顔をする。

凱斗は表情を変えること無くソレを捉え続ける。

「あーあ、思っていたよりも早かったか。役立たずだなぁお前。

なんの為に生かしておいたと思ってるんだよ……なぁ、凱斗。コイツは俺が喰ってもいいか?」

ニタリと笑うモロクの口の端からは涎が滴り落ちる。

凱斗はチラリとモロクの方を見るとまたソレへと視線を戻し闇を深めた。

「神様は意地悪だな。」

ポツリとそう呟くと地面を力強く蹴りあげ高く飛び上がり、ソレへ剣を振り下ろす。

ソレの目に映る最後の光景は、凱斗の暗く冷たい目の中に映る優しい光だった。

「ああああああ!何をしてるんだよ!俺が喰おうと思ったのに!!」

地面にゴロリと転がる首を見てモロクが叫ぶ。

隊員達は目を覆い、凱斗は冷たく転がるモノを見る。

モロクは涎をポタポタと垂らす。

「それにしても……躊躇無く斬り掛かるとは思いもしなかった。凱斗、これも優しさか?」

モロクは腕で涎を拭い凱斗を見つめた。

凱斗は黙りモロクへと視線を戻すと剣を構えた。

「次はお前だ。」

モロクは凱斗の言葉を聞いてヘラリと笑い木から飛び下りる。

「俺を殺れるかどうかは置いといて、聞きたいことがある。

凱斗、お前はいつからコイツがこっち側だと気付いていた?」

少しずつ近寄り、転がるモノをジッと見つめるモロクを睨みつけた。

「俺を殺るんだろ?

ははは、じゃあ最期に少し位話してくれてもいいだろう?」

モロクはそう言うと転がるモノを素早く拾い上げ後ろへと下がる。

モロクが抱えるソレは優しい表情を凱斗へと向けた。

その表情の上にはポタリと滴る雫が上乗せされ、瞬きをした一瞬のうちに赤く染まった。

「うーん……。」

モロクは口をモゴモゴと動かし口の中の物をペッと吐き出した。

「やっぱり人間程美味くねぇなぁ……。」

少し不機嫌そうな表情を見せ、抱えていたモノを凱斗の方へと放り投げた。

凱斗はそれを受け取ると静かにモロクを睨み付ける。

隊員達と桜庭もキッと睨み付けると、モロクは笑った。

「ソイツはお前達を裏切った奴だぞ?そんなに怒るなよ。」

モロクが、はははと笑いながらそう言った瞬間、モロクの横を銀色の風が掠める。

モロクは風が過ぎ去った方をチラリと見てまた笑う。

「大事な大事な武器を雑に扱う隊員。隊長の躾不足だな、凱斗?」

自分の剣をモロクへと向け投げた隊員をチラリと見た後、凱斗は顔色を変えること無く抱えるモノを静かに地面へと置くと剣を構えた。

「お前と長話している暇はない。もういいだろ。」

モロクは剣を構える凱斗を見てニタリと笑うと赤い目で凱斗を捉え口を開く。

「燈龍光斗、祥子、香夜。この三人が今のお前を見て何を思うのか知りたくないか?」

モロクの口から発された自分の家族の名を聞いた凱斗は耳をピクリと動かした。

「どうしてお前が……。」

「だから言ってるだろ?俺はお前の弟だ。親や姉の名前位知っている。」

モロクは予想通りの反応だと喜び高らかに笑う。

「凱斗さん、ソイツの言う事を真に受けてはいけませんよ。」

横から桜庭がそう言うと、凱斗は小さく頷くが剣を握る手の力が少し弱まった。

「凱斗ォ、自分の家族の話を聞きたいと思わないか?なぁ?」

モロクは楽しげにそう言うと一歩凱斗へと近付く。

凱斗は余裕の笑みを浮かべるモロクを見て深く息を吸い込むと、剣を構え直した。

「いや、いい。三人は俺の中で生きている。お前の妄想話なんて必要ない。」

「妄想?はっはは、妄想なんかじゃない!お前の家族は今も生きているんだぞ凱斗ぉ!」

モロクが笑うとポタリと涎が落ちる。

「今も生きている?何をふざけたことを言っているのですか!凱斗さん、こんな戯言───」

桜庭が怒りを顕にし凱斗の方へと視線をやると、桜庭は目を大きくし、凱斗を見つめた。

隊員達も凱斗の姿を捉えると目を離せなくなった。

「家族が生きてる?……ふざけるなよ。」

凱斗の目はカッと見開かれ暗い暗い闇深くに赤い光が灯る。

全身から溢れ出る黒いオーラは憎悪に塗れ禍々しく渦巻く。

そんな凱斗を見てモロクは喜んだ後に呆れ顔を向けた。

「言っても分からないなら見せてやるよ、兄貴。」

モロクはそう言うと指をパチンと鳴らす。

シーンとした森の中で遠くの方からパキパキと枝を踏む音が聞こえた。

「感動の再会を果たした後に俺と一つになろう、凱斗。」

凱斗はモロクの言葉を聞き流し音の鳴る方へと目をやるとそこには黒い影が浮かび上がり、凱斗は言葉を失った。

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