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食屍鬼 -総龍会-  作者: 藤岡
サルワの森
59/85

01

日は沈みカラスの鳴き声が不気味に響く。

総龍会隊員達と合流した黒龍隊員達は武器を手に持ちサルワの森へと足を踏み入れた。

先頭を進む凱斗は大きな剣を引き摺り歩く。

凱斗の後ろを桜庭が歩きその後ろに隊員達がついて歩いた。

奥へと進むにつれ辺りの暗さは増していき、隊員達の侵入を拒むかのようにザワザワと草が音を立てる。

隊員達は額にしとりと汗をかき、ゴクリと唾を飲む。

歩き続け森の中央にあたる場所で凱斗は足を止めた。

凱斗に続き桜庭と隊員達も足を止める。

「凱斗さん?」

桜庭は凱斗の隣へ行き顔を覗き込むと凱斗は前方をジッと睨み付けていた。

「桜庭、下がれ。」

低い声でそう言う凱斗はゆっくりと抜刀し構える。

桜庭は慌てて下がり凱斗の目線の先を見て眉間にグッと皺を寄せた。

「あはは、気付いちゃうんだ?結構気配消してたんだけどなぁ!」

「流石僕達のお兄ちゃんだね。」

前に立つ大きな木の上から声がしたかと思うとザザッと音を立て姿を現す。

凱斗は冷たく暗い目で捉え離さない。

そんな凱斗を見た少女はニタリと笑い、少年は負けじと冷たい目を向けた。

桜庭と隊員達は抜刀し凱斗の周りに立ち構えた。

「お兄ちゃん、ソレは僕達へのプレゼント?そんなに沢山……喰えるかな?」

少年はカッと目を赤くし隊員達を舐め回すように見るとペロリと舌舐りをして笑う。

そんな少年を見て少女も目を赤くするとニタリと笑いながら凱斗を見た。

「コイツらがお前達へのプレゼント?笑わせるなよ。お前らの首がうちの会長へのプレゼントだ。」

凱斗は二人を見つめたまま話す。

「僕達の首?はははっ。……僕達の首を取れる程に強くなったの?」

少年はグルリと首を回し凱斗を睨み付ける。

「モロクに聞いたよ。

貴方は、お兄ちゃんはまた救えなかったって。

ははっ、その程度で僕達の首を取る?笑わせるな?それは僕達の言葉だよ。」

少年は凱斗を見つめたまま一歩近付く。

少年の動きを見て隊員達は今にも飛び掛りそうな勢いだがそれを桜庭が制した。

「凱斗さんからの合図が来るまでは、自分の身の危険を感じない限り無駄に動かないでください。」

桜庭の言葉を不服そうに聞き入れ隊員達はグッと堪える。

「凱斗さんなら大丈夫。もしもの時は私がこの身を呈してでも……。」

桜庭は凱斗と少年と少女を視界に捉え瞬きの回数を減らした。

「そのお兄ちゃんって呼び方やめてくんない?胸糞悪いんだよ。」

凱斗は剣先を少年へ向ける。

「お兄ちゃんをお兄ちゃんって呼んで何がいけないの?教えてよ、お兄ちゃん。」

少年は余裕そうな表情を見せながら言う。

「俺をお兄ちゃんって呼んでいいのは妹だけだ。」

凱斗がそう言うと少女が「じゃあ私はいいんだね?」と、ふふふと笑った。

「お前は妹なんかじゃねぇだろ。殺すぞ。」

凱斗は苛立った表情を少女へと向け言葉を吐き捨てると、少年と少女は顔を見合せ不気味に笑う。

「お兄ちゃんが言う妹は香夜の事でしょ?

もういない妹より今目の前にいる僕達を大事にして欲しいよ。妬けちゃうな。」

「そうよ。あんたがお兄ちゃんじゃなけりゃあの時ズタズタに噛みちぎってやってたんだから。

あの後目も元に戻ったしもう怒ってはいないけど、お詫びとしてさ一口だけでいいからその肉食べさせてくれないかなぁ?」

笑いながら話す二人の言葉を聞いた凱斗は更に目を暗くし、桜庭と隊員達も不満気な表情を浮かべる。

「とりあえず僕達は先生やお父さんにお兄ちゃんが遊びに来たって報告しなきゃいけないから、また後でね。お兄ちゃん。」

「向こうで待ってるね、お兄ちゃん。

無事に辿り着けるといいけど。ふふふ。」

二人はシュッと音を立て高く飛び上がるとそのまま沢山の木が並ぶ道へと姿を消す。

「あ、おい!待て!」

凱斗は二人が向かう先を見て叫ぶが二人からの返事は無く静かな空間に風の音だけが響く。

凱斗は唸りながら髪をグシャグシャと乱した。

「なんなんだよ、アイツら。」

凱斗がポツリと呟くと、後ろから肩を抱かれた。

「凱斗さん、私達がついています。大丈夫です。

食屍鬼の言葉など気になさらないでください。」

桜庭の声を聞き、凱斗は頷く。

「この先にアイツらと……先生と呼ばれる者……これはきっと大橋の事だろう。

それとお父さんと呼ばれる者が居るのは確か。逃げられる前に捕まえるぞ。」

凱斗は隊員達へ向けそう言うと小さく息を吐いて二人が向かった道へと歩みを進める。

桜庭と隊員達は凱斗の後を追いその道へと足を踏み入れた。

“無事に辿り着けるといいけど。”

少女の言葉が凱斗の頭をグルグルと巡る。

「そういう事ね。ご心配どうも。」

凱斗は左口角をクイッとあげると剣を構える。

凱斗達が進む道の先には多数の黒い影が居て、侵入者を拒むかのように塞いでいた。

「お前ら、気ぃ抜くんじゃねぇぞ。」

凱斗は大きな声でそう叫ぶと地面を強く蹴って黒い影を目掛けて走り出す。

隊員達もそれに続き剣を構え走り出す。

黒い影はニタリと笑うとポタポタと唾液を垂れ流し凱斗達の方へと向かって手を伸ばす。

「邪魔だ、死ね。」

凱斗は剣を横に構えると先頭の影の首を狙って一気に振り、影はニタリとした表情をみせたままゴロリと地に落ちた。

隊員達は凱斗より前へ出て多数の影の中へと突っ込み剣を振り下ろしていく。

桜庭は凱斗の背中に自分の背を合わせ辺りを警戒し凱斗と自分へと近付く影へ剣を振り下ろしていく。

陽平や悠司も必死に隊長を護ろうと剣を振る。

暫くしてその辺り一面は赤黒い空間に変わり異様な臭いが漂った。

「これで全員か?」

凱斗は剣に付く赤黒い液体を振り落とし鞘へと収める。

隊員達も周りを見てもう居ないと判断し剣を仕舞う。

「やけに弱っちいな。俺達も舐められたもんだな。」

凱斗はジトっとした目で転がるモノを見る。

「あ?」

凱斗は転がる一人を見て目を細めた。

「どうしました?」

剣を鞘へと収めながら桜庭は凱斗へ近付く。

「コイツ白衣着てやがる。大橋の所の奴じゃねぇか?」

凱斗が見つめる先に転がるモノを見て桜庭は目を凝らした。

「胸元に大橋研究所と小さく刺繍が施されていますね。」

桜庭はそう言うと顔の前で手を合わせた。

凱斗はそのモノの前へとしゃがみこみ闇を深くした。

「食屍鬼の大半は元々普通に生活をしていた人間だ。

なりたくてなった訳じゃない。

生きる為に人を襲わなくてはならない。

分かってるけど、それを見過ごすことは出来ないんだ。すまない。」

凱斗は研究員だったモノに手を合わせ立ち上がると辺りを見回す。

ここに転がるモノの殆どが元々は人間だったのだろう。

どうか安らかに眠って欲しい。

凱斗は転がるモノに対し、少しでも楽になって欲しいと心から願った。

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