02
「カイット、オレ、オレハッ、ニゲテキタ」
「逃げる?」
「オオハッシッノ、トコ」
「あぁ、大橋の研究所からか……。
でもお前の遺骨は白龍に渡されたはず。どういう事なんだ?」
「オレジャッナイ、ベッベベツノッノッ、ニンゲン」
「なるほど。白龍には他の人間の骨を渡したか。」
「オレッメガッメメメガ、サメタラッ、コウナッテタ」
「……俺達が帰った後に何かしたって事か。」
「フセイッフセイコウッテ」
「不成功?……そう言えばアイツらは自分の事を成功体だと言っていたな。」
「フセイコウ、イラナイ、デッデデモ、オレ、カオバレテル、シマツ」
「不成功の猫八は要らないけど、俺達が猫八の顔を知っているから表に出すことも出来ない。
だから始末しようとした。って事か?」
「ソ、ソウッ。オレ、ヘンナッヘヘヤニニッツレテカレッタ」
「変な部屋?場所とかは分からないか?」
「ゴメ、ソレ、ワカラナッイ」
「うん、大丈夫。その変な部屋ってどんな部屋なんだ?」
「イッピキ、ショクシッキッガイテ、ロウヤナテテ、ナカイレラレッタ」
「牢屋の中に一匹の食屍鬼がいて、その中に入れられた?その食屍鬼はどんなやつだ?」
「マワッリニ、タクサン、ヒト、オチッテタ、ケンキュシャガ、イルトキ、シタムイテタ」
「牢屋の中に一匹。
周りに人が沢山転がる……手をつけていないとしたらあの時大橋が言っていた何年も喰わずに生きている食屍鬼?
心臓が無事なら蘇らせる事もできると言っていたな……アイツ、猫八まで実験体にしやがったのか。」
「ケンキュシャ、イナイ、ショクシッキ、テマネキシッタ。
ソノ、ショクシッキノッ、ウシッウシッロッニ、アナ、ココ、ニゲッロッテ。
オレッカラ、カイットノ、ニニオイスルテ。
カイット、ツタエロテ。」
「猫八から俺の匂いって何でそいつが俺の匂いを知ってんだよ。
でも逃がしてくれて……俺に伝えさせるってそいつはこっち側の人間だった可能性があるな。」
「ショクシッキ、イドウハヤッイ、ケンキュジョカラッココッマデ、スグ」
「俺たちがまだ知らない速さを出せる、という事か。」
「オオハシッ、アイッツ、アヤシイ」
「あぁ。そうだな。
今まで増え続けた食屍鬼は大橋が増やしたのかもしれない。目的は一体なんなんだ…?」
「カワッイ、カワイネ」
「かわい?」
「カワッイイ」
「可愛い?」
「オッオハシッ、ショクシッキニ、イウ」
「食屍鬼が可愛い?悪趣味すぎるだろ。」
「ダイジソ、シテタ。デモ、ソレ、セイコタイダケ」
「成功体だけ、ね。」
「オレ、シッシッテルッノ、ココマデ」
「うん、ありがとう猫八。助かったよ。」
「猫八は最後、ニコッて笑ってた。
辛いはずなのに頑張って話してくれた。
もしこの錠剤とは関わっていないとしても俺は生身の人間であろうとも大橋の首を取る。」
会議室はシンと静まり返る。
「猫八は凱斗の事が大好きで懐いていたからな、最期に話せたのが凱斗で良かった。そう思っていると思うよ。」
会長は薄らと目に涙を浮かべながら話す。
「今はきちんと埋葬され白龍の墓でゆっくりと休んでいる。
先に渡された誰の者か分からない遺骨も別の場所で眠らせたと聞いている。
猫八はきっと凱斗の近くで見守っているよ。」
会長の言葉を聞いて頷き、画面を見る凱斗の眼は潤むことも無くただ鋭く冷たいままだった。
そんな凱斗を見た会長は、今までの凱斗では無くなったのだと気付き少し寂しそうな顔をした。
それから暫く沈黙が続き時計の秒針の音だけが響いた。
「凱斗さんと会長がお二人で話していた内容、というのは…?」
沈黙を破ったのは桜庭だった。
「あぁ。猫八からの話に続きがあって。その話。」
「続き、ですか?」
桜庭はハンカチで目頭を押えながら聞く。
「黒龍に潜入してる奴がいる。」
桜庭は驚き立ち上がる。
「潜入してるって!それは一体誰なのです?!」
「声が大きい。少し落ち着け。」
凱斗に軽く睨まれた桜庭は申し訳なさそうに座り直す。
「大橋の所からだと考えると面識がある者、隊員達を疑いたくはないが……それ以外に考えようが無い。
だがこんな事を言うと混乱がおこってしまう。だから内密に頼む。
……龍の中での裏切りは許されない。
潜入してる奴を見つけ次第総龍に送ることになっている。
桜庭も怪しいと感じた奴がいたらすぐに俺に報告してくれ。」
桜庭は「畏まりました。」と返事をして、咳払いをする会長へと目をやる。
「龍の者を疑うという行為は非常に悲しく心が痛む。
だが、皆が必死に探し求めていた答えのすぐ側まで来ることが出来た今、この道を踏み外し迷うことは許されん。
凱斗、桜庭。
お前達黒龍は白龍の者、そして青龍と赤龍を導き共に戦ってくれ。」
凱斗と桜庭はサッと立ち上がると、膝を地につけ頭を下げた。
一通り話し終えた四人は静かに会議を終えた。
高山は成功体と不成功の違いを研究するとし、会長は総龍隊員を全区域に派遣し細かく調査を開始する事になった。
黒龍は白龍、青龍、赤龍を纏めこれからの活動方針を青龍、赤龍の隊長そして白龍の幹部に伝えた。
黒龍隊員の中に潜入している者がいるというのを前提に考えた上で、黒龍は会長から号令がかかるまで外部の者との接触を断つように命じられた。
会議が行われてから数日。
変わらず食屍鬼の情報は上がってこず、協力要請も出されない日々が続く。
黒龍隊員達は屋敷内で訓練を続け、さらに力を増していった。
凱斗と桜庭は隊員達の訓練の様子を見つつ、怪しい動きをする者がいないかチェックをしていた。




