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食屍鬼 -総龍会-  作者: 藤岡
終わりと始まり
5/41

05

泣き疲れて深い眠りに落ちていた凱斗は、外のガヤガヤとした音で目を覚ました。

「寝ちゃった…。」

凱斗はゆっくりと身体を起こし、扉へと向かう。

ドアノブに手をかけた時、外から聞こえてきた言葉が凱斗の動きを止めた。

「燈龍さんが殺られた!急いで用意しろ!!」

バタバタと走る足音、耳を疑いたくなる言葉。

ドアノブから手を離し、フラフラと窓辺へと向かう。

外は薄らと明るくなっていた。

「お父さん?帰りは朝って言ったよね?もう朝だよ、お父さん。」


外を眺める凱斗の瞳に映る太陽は輝かなかった。

凱斗はまたゆっくりと扉へと向かうと、勢いよく開き廊下へと飛び出す。

何人かの男が廊下を走る姿を捉える。

夢ではなく現実なのだと。

凱斗はただただ無表情で会長の部屋を探し歩く。

長い長い廊下、ここをこっちに曲がれば?ここだっけ?

凱斗は記憶を辿りに歩き続けた。

凱斗に気付いた隊員が声をかけてきても、凱斗の耳に届くことは無かった。


他の部屋の扉とは少し違う豪華な見た目の扉の前へと辿り着く。

「ここだ。」

凱斗はコンコンと扉を叩く。

「どうぞ。」

中から聞こえた声は昨日聞いたばかりの声だ。

凱斗は扉を開き、正面に座る会長を見ると、凱斗の姿を視界にとらえた会長は少しギョッとした後、ふふっと笑う。


「凱斗、起きたのか。」

会長の問い掛けに答えることも無く凱斗は会長の前へと向かう。

「お父さんが殺されたって言っている人がいました。本当ですか?」

真っ直ぐなその瞳の奥に映るのは、憎しみと悲しみと怒りが織り交じったなんとも言えないものであった。

「凱斗の部屋の前で騒ぎおったか。すまない。」

会長の言葉を聞き、凱斗は少し唇を震わせる。

「どうして…。」

「凱斗はまだ幼い。

だから暫くは誤魔化そうと思っていた。

だが……今の凱斗になら事実を話した方が良さそうだな。」

会長はそう言うと立ち上がり、凱斗の横に立つ。

「凱斗の今の目は、ある青年とソックリだよ。

いや、その青年以上かもしれない。」

会長はそう言うと、凱斗の頭をポンッと撫でる。

「燈龍凱斗、お前は今何を思う?」


凱斗は会長の言葉を聞いて何度か瞬きをした後に口を開いた。

「お母さんと妹が殺された。

それからほんの数時間後にお父さんまで殺された。」

会長は黙って凱斗の言葉を聞く。

「俺は犯人を許せない。」

「凱斗は犯人をどうしたい?」

会長の問に凱斗は真っ直ぐと会長を見つめ答える。

「殺してやりたい。」

そう言った凱斗の瞳に映るのは憎しみと怒りに満ち溢れており、悲しみは零れ落ちていた。

「相手が生身の人間では無い、と知ってもか?」

会長の言葉に凱斗は首を傾げる。

「生身の人間じゃない…?」

「これは今はまだ警察と総龍会の者にしか知られていない。

だが凱斗、お前はお前の両親と妹を手にかけた憎き者の正体を知る権利がある。」


「知る権利……。

僕は……俺は総龍会をよく知らない。

お父さんが所属している、お母さんも昔所属していたという事しか知らない。

何をしているのかも知らない。

どういう立場で一体何をしているのか、何も知らないんだ。

だからまずは総龍会の事が知りたい…です。」

凱斗はそう言うと、少し下を向く。

「総龍会、それは警察の犬。」

「警察の犬…?」

会長は椅子を引き、凱斗に座るように託すと隣の椅子に座る。

凱斗はゆっくりと椅子に座り、会長の方へと体を向けた。


「警察は世の平和を守る為、国民を守るべき存在。

その警察の犬として存在するのが総龍会だ。」

会長は少し背もたれに身を任せ続ける。

「極悪非道な人間は腐るほどいる。

その者達の手によって命を落とした人は沢山いる。

総龍会は命を落としかねない人間を相手にする、つまり国民を守る警察を守るべき存在。」

凱斗は首を傾げ、うーん?と考える。

「少し難しいか?

簡単に言えば、警察が手に負えないと判断した相手には総龍会の者が相手をしに行く。

自分の命をかけて警察を守りに行くんだ。」

「警察を守る…。」

「その代わり、守り方には誰にも文句を言わせない。

我々総龍会の者は極悪非道な者に対して同類の処罰を下す。

……人権なんてものは考えない。」

会長はそう言うと凱斗の手を握る。

「手にかけた者よりも我々の方が悪者と捉える者もいるだろう。

総龍会は、黒龍(こくりゅう)白龍(はくりゅう)青龍(せいりゅう)赤龍(せきりゅう)に分かれている。

その全てを纏めるのがここ、総龍会だ。」

会長は握る力を少し強めて続けた。

「お前の父親、燈龍光斗(こうと)は、黒龍の隊長。

総龍の中でも一番の勢力がある隊だ。

お前の父親には皆助けられてきた……。」

会長はそう言うと、初めて涙を一筋流す。

「燈龍は、皆に慕われ、誰よりも強く逞しい男であった。その勇姿は誰も忘れないだろう。」

震えた声で話す会長。

少年は、枯れたはずの涙をまた流した。




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