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「貴方って人は!!!!!!!」
総龍会の医務室に怒号が響き渡る。
「貴方って人は…何を…何をしているのですか…!!!!!」
桜庭の怒鳴り声に顔を歪ませながら耳を塞ぐ凱斗を見て、桜庭はまた怒る。
「私がどれだけ心配したと…!本当に貴方って人は!!!」
「ごめんって。俺も起きたらこんな事になってて驚いてるんだ。」
凱斗がヘラッと笑いそう言うと、桜庭からビキッと音が鳴った。
「部屋は真っ赤に染まり、その中で剣を持ったまま倒れている貴方を見た時、私の心臓は止まりましたよ!!」
「止まってないじゃん、生きてんじゃん。」
「っ!!!貴方は本当に…人の気も知らないでよくもまぁそんなヘラヘラとしていられますね?!」
眉を釣り上げ鋭い目で睨み付けながらそう言う桜庭を見て、凱斗は少し申し訳なさそうに、ははは…と笑った。
「何を笑っているのですか!!!あれはどういう状態ですか?!なんですかあの赤い部屋は!」
凱斗は手を出し「まぁまぁ落ち着けよ。」と桜庭を宥めるが、桜庭の怒りは収まらない。
一緒に医務室に来た会長はホッと胸を撫で下ろし、凱斗が横になるベッドの横の椅子に腰をかけ、桜庭にも座るように言う。
桜庭は鼻息を荒くしたまま椅子に座り、凱斗をキッと睨みつけた。
「凱斗、事情を説明してくれないか?」
優しい声でそう言う会長を見て凱斗は身体を起こし、会長の目を見て話し始めた。
「強くなるためにはやっぱり特訓かな?って。物置にあったぬいぐるみを引っ張り出してきて、その中に赤い絵の具を入れた袋を入れて、天井から吊るして斬る練習をしてた。道場に行ったら横の部屋で隊員達寝てるしよー、起こしたら悪いなと思って自分の部屋でしたの。」
凱斗はそう言うとツーンと唇を尖らせる。
「でもさー、思ってたより疲れてたみたいで。ぬいぐるみを斬って絵の具が飛び散ったと同時に記憶が無いから……寝ちゃったんだろうね?」
へへ、と笑いながら話す凱斗の言葉を聞き、桜庭は大きくため息をつき頭を抱えた。
会長は、はっはっは、と笑い凱斗の背中をトンと叩く。
「聞いた話では、ぬいぐるみは五体ぶら下がっていたがどれも首から下は落ちていたと。あれは特訓用に作られた物。大きさは200もあり重さは80にもなる。よく一人で運びぶら下げたな?凄いじゃないか。」
会長はニコニコとしながら凱斗の頭を撫でると、少し照れくさそうに笑う凱斗。
そして、それを冷たい目で見つめる桜庭。
そんな桜庭に気付いた二人は、へへへと笑いながら桜庭を見ると、桜庭は眉をピクピクと動かし立ち上がる。
「会長は凱斗さんに甘すぎます!!それに凱斗さんも!特訓なら一度寝てからやればいいでしょう?!どうしてもというのならば私を呼ぶことも出来たでしょう?!反省してください!!!」
凱斗は今まで叱られてきた中でも一番怒っているであろう桜庭に頭を下げる。
「ごめんなさい。」
凱斗の言葉を聞いて桜庭はフゥと小さく息を吐き「今回だけですよ。」と言うと椅子に座り直す。
「なんだ、桜庭も凱斗に甘いじゃないか。」
会長がそう言うと桜庭は少し気まずそうな顔をした。
「まあ無事でなによりだ。隊員達も皆心配している。私から無事だと伝えてこよう。桜庭は凱斗の傍に居てやりなさい。」
会長はそう言うと立ち上がり隊員達が待つ広間へと向かっていった。
桜庭は立ち上がり頭を下げ見送り、凱斗は手をヒラヒラとさせる。
頭を上げチラリと凱斗を見た桜庭は椅子に座り直すと、凱斗の手を取り下を向き話し始めた。
「貴方が……凱斗さんが自ら命を絶ってしまったのかと……私の寿命は10年程縮まりましたよ…。」
声が震える桜庭の手を、凱斗は申し訳なさそうに手を握り返した。
「ごめんね桜庭。心配かけちゃったね。」
凱斗の言葉を聞き、桜庭が顔を上げるとそこには悲しい表情をしたまま笑顔を見せる凱斗がいた。
「そんな顔をしないでください。」
桜庭がそう言うと、凱斗は小さく頷く。
「桜庭、俺はもっと強くなるよ。
今のままじゃ誰も護れない。もう目の前で誰かを失うのは御免だ。」
凱斗は桜庭の手を離しゆっくりとベッドからおりると「もう大丈夫。帰ろう。」と桜庭の肩をポンと叩き広間へと向かった。
桜庭は覚悟を決めた眼をする凱斗に何も言い返せぬまま慌てて後ろをついて歩く。
また一人で抱え込み、そして次こそは本当に壊れてしまうのではないか?と不安を胸に。




