05
「なんだよこれ…。」
部屋の一角には牢屋のような作りになっている場所があり、その中には数匹の食屍鬼がいた。
その中にいる食屍鬼は怪我をしているのか血を垂れ流しているモノや、こちらに向かってアーアーと言いながら手を伸ばすモノ、隅に座って動かないモノがいた。
「この子達は私の実験体ですよー!」
大橋はニコニコとしながら牢屋へと近付く。
「大丈夫、この子達はここから出ることが出来ません。
安心して近くに来て……おっと、実験体はくれぐれも処分しないようにしてくださいね、凱斗くん。」
ゆっくりと抜刀し構える凱斗を見て大橋は焦りながら笑う。
「実験体から得られる事は沢山あります。
この子達を処分されてしまうと私はまた新たな実験体を凱斗くん達に送ってもらわなければなりません。」
そう言いながら牢屋の隅に座る食屍鬼を指差す。
「凱斗くん、この食屍鬼に見覚えはありませんかー?」
ニタリとしながらそう言う大橋を軽く睨み、牢屋へと視線を移す。
隅に座り込む食屍鬼は周りの食屍鬼よりも小さかった。
「これは……アビスの?」
「そうですそうです!
アビスで凱斗くんと陽平くんが出会した食屍鬼に喰われていた子供ですよー!
いやー、やはり食屍鬼とは謎が多い。
あそこまで破損していても心臓が無事ならば感染し蘇る!」
嬉しそうに話す大橋の隣で凱斗は食屍鬼になってしまった子供を見つめる。
「蘇る…か。」
ポツリと呟く凱斗に大橋はニコニコとする。
「はい、そうですー!
だがしかし、今まで幾匹もの食屍鬼を実験体として渡していただいていましたが、中には蘇る事もなく、ただ身を腐らしていくモノもいました。
何がキッカケで蘇るのか今研究中なのです!」
大橋はルンルンと牢屋に近付き子供を見て微笑む。
「あの、大橋さん。」
顔を顰め牢屋を見ていた桜庭が口を開く。
「はい?なんですか、桜庭くん。」
「食屍鬼は食べずに生きていられるのですか?」
桜庭の質問を聞いた大橋は桜庭の方を向き答える。
「その実験も行いましたよー!
個体差があるみたいで、一週間前後で命尽きるモノ、一ヶ月を過ぎても元気なモノとバラバラで。
その仕組みも研究中ですー!」
桜庭は黙ったまままた牢屋の中を見つめた。
「一ヶ月を過ぎて元気なモノはいつ死んだんだ?」
凱斗は子供の食屍鬼を見ながら問う。
「死んでませんよー!今も生きています。」
大橋は凱斗に視線を移しそう答えるとニコリと笑った。
「生きてるって…その研究いつしたんだよ?」
凱斗が大橋にそう聞くと、大橋はニタリとしながら立ち上がる。
「いつでしたかねー…もう何年も前の事で覚えていませんねー!」
へっへっへっ、と笑い凱斗の隣に立つと大橋は続けた。
「研究所内に居るのでご安心を。
この食屍鬼から得られる事はまだありそうです。
ただ、研究所の者にしか触れていないあの子を今凱斗くん達に見せるわけにはいきません。
餌だと勘違いして興奮して暴れ出されても困りますからねー。すみませんねー。」
大橋はそう言うと凱斗の後ろにある扉を眺める。
凱斗と桜庭もその扉に視線を移すと、その扉には僅かに血液が付着していた。
「さて、車を手配しお送りしましょう!
アビス地区と総龍地区どちらへ?」
大橋はポケットから携帯電話を取り出し凱斗に尋ねる。
「アビス地区には私から連絡します。総龍地区へ戻りましょう。」
桜庭はそう言うと無線機でアビス地区にいる隊員に連絡をする。
「総龍地区でいいですね?」
凱斗は黙ったまま頷くと大橋はニコリと笑い携帯電話を耳に当てる。
凱斗は血液が付着している扉から牢屋にいる子供へと目線を移し、暗い表情を見せた。
「実験体…か。」
凱斗がポツリと呟くと肩をトンと叩かれた。
「凱斗くん、上にいる隊員達も呼び外に出ましょう。車を待機させています。」
大橋はそう言うと扉を開け部屋から出て上へと向かう。
「凱斗さん……。」
部屋に残された桜庭は凱斗に近寄り声をかける。
「ここで行われている研究は私の想像を遥か上回る物です。
まさか食屍鬼がこんな形で増えるとは……それに食べずとも生きている食屍鬼があの扉の向こう側にいる…。」
桜庭は食屍鬼がいるとされる部屋の扉をジッと見つめた。
「研究所の周りに食屍鬼がいる事には気付きませんでした、か。はは、気付かない、ねぇ……。」
凱斗はそう言うと「行くぞ。」と桜庭に声をかけ部屋を後にする。
桜庭はチラリと牢屋の方を見て悲しい表情のまま部屋を後にした。
牢屋に入る子供の食屍鬼はそんな二人の姿をジッと見たまま動かなかった。
「では、お気を付けて。また会長さんの所でお会いしましょう。」
凱斗達は大橋の助手が運転する車に乗り、大橋に見送られる。
ガタガタとした道を慣れた様子で進む助手に凱斗は声をかけた。
「運転はよくするのか?」
助手席に乗る凱斗に声をかけられ少し体を跳ねさせ助手は答える。
「は、はい!
総龍会へ実験体を引取りに行く時や食料補充の為スーパーへ行く時等に運転しており、この道には慣れているので事故の心配はございません!」
緊張した面持ちでそう答える助手に凱斗は少し笑う。
「事故の心配をして聞いたわけじゃねぇけど。
そんなに外に出るなら食屍鬼が居る事になんで気付かねぇのかなーって。」
凱斗はそう言いながら窓を開ける。
「それにしても服に悪臭がついちまって臭くて仕方ねぇ。
あんたよくあそこで仕事出来るな?尊敬するよ。」
助手は「もう慣れてしまいました。」と笑う。
後ろに座る桜庭は疲れて寝てしまった陽平が倒れ込んできて膝枕をする形になり眉間に皺を寄せながらも起こさずにジッとしている。
その後ろに乗る数人の黒龍隊員達は静かに外を眺めていた。
凱斗は髪を靡かせながら外を眺めていた。




