04
大橋は助手を呼び「猫八くんの見た目を綺麗にしてあげてください。」と言うと、凱斗達を連れて部屋から出る。
「こちらの部屋で休みましょう。」
大橋は2階に上がった先にある応接室へと案内する。
白龍隊員達は猫八がいる部屋をチラチラと見ながらついて行くが、猫八がいる部屋の前から動こうとしない隊員も何人かいて、それに気付いた凱斗は「部屋の前で待機していてもいい。」と告げると隊員達は頭を下げ猫八がいる部屋の前に並んだ。
「凱斗くんは優しいですねー!」
大橋はニタリと笑いながら言う。
凱斗は黙ったまま大橋の後につき応接室の中へと入る
それに続いて桜庭が入り、凱斗の隣へと立つ。
隊員達は疲れきり、陽平も泣き疲れている様子で少しボーッとした表情を見せた。
「隊員の皆様は隣の部屋でゆっくりしているといいでしょう。」
大橋は応接室から出てすぐ隣の部屋の扉を開ける。
「色々とお疲れでしょう。私は今から凱斗くんと桜庭くんと食屍鬼の話をします。その間お休みになっていてください。」
大橋の言葉を聞いた隊員達は凱斗をチラリと見る。
凱斗は「休んでこい。」とだけ言い応接室のソファーへと腰をかけた。
隊員達は軽く頭を下げ隣の部屋へと移動する。
大橋は隊員達が部屋に入ったのを見てニタリとしたまま応接室に戻った。
「凱斗くんと桜庭くんもお疲れではないですかー?」
大橋はそう言いながら凱斗の対面へと座り、桜庭にも「どうぞ。」と微笑む。
桜庭は頭を下げると静かに凱斗の隣へと腰を下ろした。
しばらくするとコンコンとノックの音が鳴り、助手がお茶を持って入ってきた。
助手は凱斗達の前にお茶を置くと軽い会釈をして部屋を後にする。
「冷めないうちにどうぞ。」
大橋は自分の前に置かれたカップを手に取りズズズと音を立てながら飲むと、ハァと息を吐く。
凱斗は手をつけないまま口を開く。
「大橋は自分の研究所の周りに食屍鬼がいるのに何故ここに居続ける?」
凱斗の問い掛けに大橋はニコリと笑いカップをテーブルの上に置いた。
「研究に没頭する気付かなかったのですよ。
今回も、助手が帰らないと別の助手から聞かされなければ、今も私は気付かぬまま研究を続けていたでしょうねー!」
大橋は背もたれに体重をかけ足を組む。
「まさかアビスからここへ続く道があるとは……いやはや研究所が攻撃されなくて助かりましたよ。」
へっへっへっと笑いそう言う大橋を凱斗と桜庭はジッと見つめた。
「今まで何の攻撃もされず、気付かず……そんな事が可能なのでしょうか?」
桜庭の言葉を聞き大橋は頷く。
「研究所は防音になっていましてね。
外からの音を遮断し、中の音も外には漏れません。
万が一の事を考え塀には有刺鉄線を張り巡らせていますが、もしかするとこの有刺鉄線や高い塀が私達を守ってくれていたのかもしれませんねー!」
そう言うと大橋は体を前屈みにし、ジッと凱斗の目を見た。
「私は研究する事だけが生き甲斐。
新たな発見をした時に溢れ出る高揚感。
たまりませんよー?へっへっへっ、私の研究は誰にも邪魔させません。」
ニタリとしそう言う大橋を見て凱斗と桜庭は少し顔を引き攣らせ、大橋はニタリとしたまま凱斗を見続けた。
「凱斗くんは私の研究に興味はありますかー?」
大橋の問い掛けに凱斗は頷いた。
「おや!まさか興味を持っていただけているなんて!てっきり私の事には何の関心も持っていないと思っていましたから、驚きですねー!」
大橋は嬉しそうにそう言うと、ニコニコとする。
「お前には興味は無いが、研究には少し興味がある。と言った方がいいか?」
凱斗がそう言うと大橋は笑う。
「やはり私の事は嫌いなのですねー!
へっへっへっ、まぁいいでしょう。
実はね、今新種の研究もしていまして。良ければ実験体を見ませんか?」
大橋はそう言うと立ち上がり「見ますよねー?」と凱斗と桜庭に言うと部屋の扉を開けた。
凱斗と桜庭が顔を合わせ頷き立ち上がると、それを見た大橋はニコニコと部屋から出て階段を下る。
凱斗と桜庭は大橋の後に付いて歩き、猫八がいる部屋の前を通りかかった。
部屋の前にはどんよりとした空気が流れ、何人もの隊員達が座り込んでいた。
そんな隊員達を横目に凱斗は「上の部屋で休んでこい。」と言い大橋に続く。
隊員達はゆっくりと腰を上げ、陽平達がいる部屋へと向かった。
桜庭は心配そうに隊員達を見送り少し遅れて凱斗の後に続いた。
「ここですよー!」
大橋は猫八がいる部屋の二つ先の扉を開き中に入り少し歩いた先にある扉の前に立つ。
「少し臭いがキツくなります、凱斗くんには厳しい環境かもしれませんねー。へっへっへっ。」
大橋はそう言うとゆっくりと扉を開いた。
「うっ…」
扉が開くと同時に今まで嗅いだ事の無いような悪臭が凱斗と桜庭を包み、凱斗は思わず顔を歪め鼻をつまんだ。
桜庭も顔を歪め、ハンカチで鼻を抑える。
「へっへっへっ、すぐに慣れますよー!」
大橋は部屋の中に入り「どうぞこちらに。」と2人を呼ぶ。
凱斗と桜庭はゆっくりと部屋の中に足を踏み入れ、顔を歪ませ目を細めていた凱斗は部屋の中の光景を目の当たりにし目を大きく見開いた。




