07
朝7時
「おはようございます、シェフ。」
「おはようございます、桜庭さん。」
桜庭とシェフは挨拶を交わし、桜庭は近くの席へ座る。
「アビスに行くのはこの部隊と……あと総龍と白龍の方々ですね。
9時頃に出発にしましょうか……凱斗さんは落ち着いてから来て頂くように伝えて……。」
桜庭はスケジュール帳とペンを取り出し書き込みながらブツブツと独り言を言う。
「それから青龍の方と赤龍の方は一度帰っていただいて……。」
「帰らせてここの人手は足りるのか?」
「ええ、総龍から隊員を送って貰っ……って凱斗さん?!」
凱斗は桜庭の後ろからスケジュール帳を覗き込みながら「おはよー」と挨拶をした。
「お、おはようございます。
…あの、お体は大丈夫なんでしょうか?それに自分でこんなに早くに起きてってもしかして寝ていないのですか!?」
「朝からギャアギャアうるせぇな。
体は元々何の問題も無いし、めちゃくちゃ寝たから安心してくれ。」
凱斗はそう言うとシェフに挨拶をし、桜庭の前の席へと座る。
シェフは慌ててコーヒーとミルクティーを用意して2人の前へと並べた。
「ありがとねー。っちぃ!」
また冷まさずに口を付けて熱がる凱斗を見て桜庭とシェフは安心した顔を見せる。
「んだよその顔。笑い堪えてんのか?」
凱斗はジトっとした目で二人を交互に見ると、フーフーと冷まし口をつける。
桜庭はニコリと笑いコーヒーを口にし、シェフもニコリと笑ってキッチンへと戻って行った。
「で、9時に出んのか?猫八も起きない奴だけど大丈夫か?」
凱斗がそう言うと桜庭はカップをテーブルの上に置く。
「朝食を終え次第挨拶に伺いに行きます。」
「っそ。あと、名前何だっけ?る、る、るみ?」
「瑠璃さんですか?」
「あー、そうそれ。瑠璃はここにもう住んでるの?」
凱斗はキッチンの方をチラチラと見ながら腹をさする。
それに気付いたシェフはスピードを上げて用意をする。
「いえ。昨日もお伺いしましたがやはりお父様がご反対されているみたいです。
バタバタとしていたので送る者がおらずここにいた、というだけでしょう。」
桜庭は少し息切れしながら料理を運んできてくれたシェフにお礼を言い、いただきますと手を合わせ料理に手をつける。
「ふぅん。
俺も住ませるとか言ってそのまま放ったらかしにしちゃったし今日もこれから出るし……でもあいつここに居たいんだろ?どうすっかなー。」
凱斗はトーストを手に持ち幸せそうに頬張る。
「あとあれだ、食屍鬼の彼氏の話はもう終わった?」
むしゃむしゃと頬張りながら桜庭に聞く。
桜庭は口の中のものを飲み込み、珈琲を一口飲んで答える。
「はい。とりあえずの話は聞き終えました。全て大橋さんに報告済みです。」
「ふぅん。大橋からの答え待ちか。」
凱斗はフォークを手に持ちサラダをもしゃもしゃと頬張ると、食堂の扉が開き続々と隊員達が入ってきて、早起きしている凱斗を見た隊員達は驚きながら「おはようございます!」と頭を下げた。
凱斗はニコリと笑い「おはよう。」と返した。
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朝食を済ませた凱斗は着替えに、桜庭は白龍が泊まる部屋へと向かう。
午前8時45分
屋敷前には複数の黒龍隊員と総龍隊員が並び、玄関前で凱斗がしゃがむ。
その隣に陽平が立っており、桜庭は隊員達に最終確認を行っていた。
8時50分
白龍隊員達と猫八が屋敷から出て、総龍と黒龍の隊員達の横に並ぶ。
猫八と凱斗は挨拶を交わすと、ニコッと笑い合う。
8時51分
前に桜庭が立つと全員を含めた最終確認が行われた。
総龍隊員達は犠牲となった黒龍隊員及びアビス住人達を外へと出し供養する。
黒龍、白龍の隊員達は凱斗と猫八を筆頭に壁の奥の捜索。
陽平は必ず桜庭か凱斗のどちらかまたは両者と共に行動する事。
総龍、黒龍、白龍の隊員達はビシッと背筋を伸ばし話を聞く。
猫八も頷きながら話を聞き、凱斗はしゃがみこみ欠伸をしていた。
「貴方って人は!!!!!!」
桜庭の怒鳴り声で塀で休んでいた雀達が高く飛び上がり、屋敷から見送る者たちや、これから共にアビスへと向かう隊員達はクスクスと笑う。
凱斗は「うるせぇな!」と逆ギレをしてまた桜庭を怒らせた。
いつもの光景。
それはとても大切な時間で当たり前ではない。
凱斗は桜庭を見て少しはにかむと、桜庭は「なんですか?バカにしているのですか?」と目を細めた。
「してねぇよ。……いつもありがとね。」
凱斗が笑ってそう言うと、桜庭は急に感謝された理由が分からず頭の上に?を浮かべる。
9時00分
黒龍の屋敷から複数台の車がアビスへと向かい走り出す。
屋敷の中からは麗華や瑠璃、青龍赤龍から手伝いに来てくれた隊員達、総龍から手伝いきた隊員達、それと黒龍の隊員達が見送った。
同時刻
会長は大橋に電話をし、昨日凱斗から聞いた内容を伝えた。
大橋は興味深そうに話を聞き、へっへっへっと笑う。
「調べましょう!本当に居たら大発見ですよ!」
「ああ、よろしく頼む。」
会長は電話を切り大きくため息をつき「凱斗、私も大橋は苦手なんだ……。」と小さくぼやいた。




