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「分かった分かった、ぜーんぶお話しますよぉ。
この扉の先に続くは地下への階段。その先に貴方達の仲間はいるわ。」
女の子はフゥと軽く溜息をつきそう言うと扉を開ける。
開かれる扉から漂うなんとも言えぬ臭いに凱斗は顔を顰めた。
「なんであいつらがいる所から食屍鬼の臭いがすんだよ。」
凱斗がそう言うと女の子は「行けば分かる。」と言い笑った。
凱斗はゆっくりと扉に近付き、女の子の横に立つと女の子の髪を掴み壁に押し付ける。
「で、お前は人間なの?それとも食屍鬼なの?」
女の子は、ふふふと笑うばかりで答えようとはしない。
凱斗が苛立ち剣先を女の子に向けた時、上からドスンと音がした。
猫八と桜庭は音に気がいくが、凱斗は女の子を捉えたまま離さない。
「さっきの音は…?」
桜庭がポツリと呟くと、猫八が白龍の隊員を呼ぶ。
「上を見に行くぞ!」
猫八がそう言い階段を上るとその後を白龍の隊員達が付いて上る。
「ふふふ、上手くいかないなぁ。おかしいなぁ。」
女の子はそう言うと目を閉じたかと思えばカッと見開き真っ赤に染る目で凱斗を睨み付け、ドンッと力強く凱斗を突き飛ばし扉の先の階段を駆け下りる。
「ってぇ…」
女の子とは思えぬ強さで突き飛ばされた凱斗は背後の階段に強く背中を打ち付けしりもちをついた。
「大丈夫ですか?!凱斗さん!!」
桜庭が慌てて駆け寄るが、凱斗は「大丈夫」と一人で立ち上がる。
「アイツを追いかける。猫八に伝えとけ。」
凱斗はそう言うと薄暗くジメジメとした階段を下りる。
その後ろを桜庭と隊員達が付いて歩き、一人の隊員は上に続く階段を走って上る。
「くっせぇー!」
奥に進めば進むほど増す悪臭に凱斗は顔を歪める。
「確かにこれは…外とは非にならぬ臭い。」
桜庭も手で鼻を押えながらゆっくりと後に続く。
隊員達も顔を歪ませる。
「お前らの優先事項はこの先にいる隊員の救助。
見つけ次第すぐに外に連れて行け。」
凱斗は後ろにいる隊員達にそう言うと、隊員達は、はっ!と返事をする。
「この先あの女の子だけ、とは言いきれません。
貴方は私がお護り致しますので。」
桜庭はそう言うと剣を握るが少し震える。
凱斗は桜庭の震えに気付くが何も言わず黙って頷き階段を下りる。
薄暗くジメジメとした長い階段を下って行き、凱斗達はようやく少し明るい場所に出る。
壁にはいくつものロウソク立てが取り付けられており、廊下を照らしていた。
短い廊下の先にある扉は開かれており、そこから漂う臭いは階段で嗅いだものより強く、何人かの隊員は耐えきれず気分を悪くしその場から動けなくなった。
それに気付いた凱斗は「無理に中に来なくていい。上に行って待機しろ。」そう言うと扉の方へと歩く。
「すみません。」そう言うと隊員達は目にうっすらと涙を浮かべながらゆっくりと階段を上っていった。
桜庭は進む凱斗に付き、剣を構える。
凱斗は部屋の中へと足を踏み入れた。
部屋の中に入りまず凱斗の目に入ったのは破かれ赤く汚れた隊服。
隊服に近寄り触れるとそこに温もりはなく、自分の家族と呼べる者が誰なのかも判断出来ない姿をしていた。
凱斗は転がる無数の隊服を眺め、立ち上がると剣を構え一気に奥へと進む。
桜庭と隊員達も付いて進むが、あまりにも無惨な光景に視界を歪ませる者は少なくなかった。
凱斗達が奥へと進むとその先にはグヂュグヂュと音を立てながら口周りを赤く染める女の子が座っていた。
「てめぇ……。」
凱斗が剣を女の子に向けると、女の子はニタリと笑う。
「ようこそ、燈龍凱斗。」
自分の名を呼ぶ女の子は、ふふふと笑いながらナニかを口に運ぶ。
「お前を殺す。」
凱斗はそう言うと一気に走り出し、女の子を目掛け剣を振り下ろすが、女の子は笑いながらそれを手で掴む。
「なっ…」
食屍鬼相手に剣を取られた事が無い凱斗は少し動揺する。
その光景を見た桜庭と隊員達も一気に詰め寄るが、女の子は笑いながらある場所を指差す。
桜庭達は立ち止まり、指さす方を見るとそこには姿を消した中級層の隊員達が板に縛りつけられ立てかけられていた。
凱斗も指さす方を見て、隊員達を見ると「お前達はあいつらを優先しろ!これは命令だ!!」と叫んだ。
隊員達は凱斗に従い剣を終い中級層の隊員達の元へと向かう。
「へぇ?自分より部下なんだ?かっこいいねぇ、凱斗くん。」
女の子はそう言うと剣ごと凱斗を突き飛ばす。
それを見た桜庭が血相を変えて女の子に剣を向けたまま走っていくが、女の子はまたニタリと笑いながら剣を掴む。
「学習しろよバーーーカ」
女の子は桜庭を投げ飛ばすと大きく飛び上がり、壁を蹴って隊員達の方へと向かう。
「避けろ!!!」
凱斗が大声で叫ぶとそれに気付いた隊員一人が振り向くが目の前には女の子の顔があり、気付くと視界は天を向いていた。
自分の大事な者の首がゴロリと転がる光景を目の当たりにした凱斗は怒りで震え、立ち上がる。
桜庭も立ち上がり剣を構える。
女の子は笑いながらその首を拾い、凱斗の方を見ながら目玉をほじくり返してペロリと舐めて見せた。
「あ"ぁあぁぁあああ!!!!!」
怒りに支配された凱斗は女の子に狙いを定め走り出し、地面を強く蹴って飛び上がる。
「死ねぇええええ!!!!!」
そう叫びながら剣を振り下ろすが、女の子はニタリと笑う。
「だーかーらー、学習し──」
凱斗の方に顔をやり、言葉を発する女の子は抱える首を落とし、両手で自分の顔を押える。
「い"や"あ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"!!!!!」
女の子は耳を劈く程大きな声で叫ぶと、頭をブンブンと振る。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
女の子は壁を殴り、頭を打ち付け、首を回して凱斗を見る。
女の子の目があるはずの場所は真っ暗な穴しかなく、そこからドロリとしたモノを垂れ流す。
凱斗は自分の剣先にくっつくソレを雑に振り落とすと、再び剣を構える。
「次で終わりだ。」
凱斗は光の無い目で捉えると一気に走り出し剣を振り下ろすが、同時に女の子が後ろに下がる。
女の子はまた高く飛び上がり壁を蹴って隊員達の方へと向かうが、桜庭が女の子目掛けて投げた剣が足に刺さり、女の子はよろける。
「もー!!!なんなのよ!!!!!」
女の子は苛立ちながら足に刺さる剣を抜くと桜庭目掛けて投げ返すが、桜庭に届く前に凱斗の手に寄って防がれる。
「ちょこまかすんじゃねぇ。大人しくしろ。」
凱斗はそう言うと少し走り地を蹴り高く飛び上がると、近くの壁を蹴って女の子に急接近する。
「死ねよ。」
凱斗がそう言って女の子目掛けて剣を突き刺そうとした時、隊員達がいる方の壁がズズズと音を立てた。




