四蹴 最強のスタイル
電光石火
「ではシノブ殿。ワシを抜いてみてくれ」
「はい」
シノブはサツマヒメのズボンとパンツを下ろし、可愛らしいおちんちんを扱こうとするが
「いやいや、違う違う。ドリブルじゃよ」
「あ、そっちか」
シノブはボールを持ち、少し離れてからドリブルを開始する。しかし
「甘い」
「あ」
シノブのドリブルは簡単に取られてしまった。
「マジかよ」
近くで見ていた平も驚きの声を上げる。シノブのドリブルを初見で防ぐなど、いくら選抜帰りの天才といえど可能なのか。改めてサツマヒメという男の凄さを思い知る。妹同様ギャグみたいな頭身なのに。
「私の、ドリブルが」
シノブのショックは尋常ではない。彼女はドリブルの上手さこそがアイデンティティだったのだから。
「ああ、いや、取れたのには一応理屈がある。シノブ、お主のドリブルは感性に頼っている」
「感性?」
「ああ。つまり考えて動くのではなく、動いてから考えている。だから取りやすいんだ」
「つまり、考えてから動くべきだと?」
「うーん、それも違う。考えない方が良い場合もある。平殿、シノブ殿の相手をしてみてくれ。シノブはさっきのように、いつも通りに」
「は、はい」
平は実はシノブとこういう勝負はあまりしたことがない。しかし、シノブのドリブルの癖、呼吸は何となく理解している。つまり、シノブの思考を読めば
と思っていた平だが、簡単に抜かれてしまった。これは平が似合わず余計なことを考えてしまったからだろうか。
「な。平殿のような相手の場合はこれで正解なんだ」
「つまり、相手に合わせてスタイルを変える……?」
「まあそうだ。シノブ殿のいつものドリブルは電光石火といい、速さ特化のスタイル。もう一つは逆に考えて読み切って抜くという疾風迅雷。速さこそ電光石火に劣るが、格上相手にはこっちのが有効だ」
「つまり、平くんみたいな雑魚には電光石火、サツマヒメさんみたいな格上には疾風迅雷」
「おい、雑魚って」
「まあそういうことだな」
シノブの不躾な言い方に傷つく平だが、今のサツマヒメの理論は一応理解できた。速さに拘ってきたシノブに、減速を覚えさせ確実性を増す。いや、二択攻撃により敵ディフェンスへの負荷を強める。これはある種、シノブにとっての奥義といえる、最強のスタイルなのではないだろうか。
疾風迅雷