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240,教師は突撃する

祝!240話!!

今回はリーフィの呼び方について。

リティアのみ「ふぃー」と伸ばします。これは口が上手く使えなかった小さい頃からのクセです。

リルドやリグレスは「ふぃい」と、伸ばさず「い」で止めているイメージです。リーフィの武器が近々お披露目になると良いな…。

 ハルドのトリッキーな動きに後ろの隊員達から自然と感嘆の声が上がる。リデッキとリゾンドが、ラド達より前へ歩み出れば、誇らしげな表情を浮かべるリデッキと対照に、リゾンドの顔は歪んだ。更にリゾンドの隣に目尻に紅を差した青年が立ち、

「ここは彼に任せてもよろしいのではないでしょうか?」

声を潜めていたようだが、ラドの耳にはしっかりと届いた。リゾンドが腕を組み、

「それが良いかもな。時間が勿体ない。」

「まさかと思いますが!」

ブツブツと言いながら踵を返そうとすると、リグレスの透き通るテノールの声がこの檻の中で響いた。ハルドが牡鹿の首を有り得ない方向へと捻り上げてから肉を引き千切って首の穴から白濁した魔石を取り出すと、

「囮だけ倒して終わりになると、お考えではないでしょうね!?」

「何を言っている…?」

リグレスの厳しい眼差しが、リゾンド達へと向けられて、彼の隣に控える青年の背筋に緊張が走る。

「ハルド、下がりなさい!」

「承知!」

リグレスの指示で、飛龍牙とまた位置交換したハルドがケーフィスの近くへ戻ってきた。それを見たリゾンドの目がギョッと見開き、ワナワナと拳が震えると、檻の空間がぐにゃりと歪んで天井を覆い尽くす程の巨鳥が出現し、床に敷き詰められるは先程の牡鹿と全く同じ成りをした鹿の群れ。

「鳥も鹿も集団で生活する動物です。想定内ですよね…?」

リグレスの冷ややかな瞳がリゾンドを射抜くと、彼を背中に隠すように控えていた青年が飛び出し、

「『聖者』様、申し訳ございません。父は今回が久々の戦闘ですので」

「リゴン!余計な事を言うな!」

リグレスに謝ろうと頭を下げると、血相を変えたリゾンドにピシャリと言われる。

「聖職者のリゴンをわざわざ隊員に招かねばいけぬ程に衰えたのですか?それでは隊長の座から退いて頂けますよね?」

「ふざけるのも大概にしろ!貴様らより上手く戦えるぞ!」

リグレスがヤレヤレと肩を竦めば、唇を震わせるリゾンド。ハルドがクスクスと笑い、

「安い徴発に乗ってますねー。」

「リゾンド!四番隊は補助魔法を任せたはずだ!勝手に飛び込むな!」

言うことを聞かずに牡鹿に向かってロングソードを振り回して駆け出したリゾンドに、リデッキが厳しく叱るが、

「兄さんは黙れ!リゴン、ついてこい!」

「えっ!?」

見るからに丸腰である目尻に紅を差したリゴンが動揺すれば、

「リゴン、『聖者』が命じます。四番隊として戦闘要員に補助魔法を頼みますよ。」

「は、はい!」

リグレスの波紋みたく静かに広がる指示で、リゴンの行動が決まった。リゴンの水属性の魔法で防護壁が発動すると、それに続くように他の四番隊も一番隊と二番隊の能力値上昇の為に、相性の良い属性を纏わせていく。ラドも炎属性の精霊を多く貰った。

「使い物にならん馬鹿息子め!」

「この愚弟は!!やめんか!」

舌打ちするリゾンドにぶつからないような位置に、鋭い雷を撃ち込むリデッキの声は彼に届かない。

「さあ、また暴風されると迷惑です。ハルドとケーフィスは空を、ジャックとラドは地面に蔓延る魔獣を頼みましたよ。」

リグレスは勝ち誇った笑みをこちらに向けてきて、

「ラドくーん!」

「…ラド・フレイ、参ります!」

ジャックが喜んでラドへと向かってきたので、抱きつかれる前に、牡鹿の群れに焔龍号を振りかざして突撃していった。


 ケーフィスの光の矢の雨が巨鳥達の翼へと刺さるが血が流れる事もなく、空を飛ぶハルドを啄もうとカチカチと嘴がぶつかり、巨鳥同士の喧嘩が始まる。牡鹿に翻弄されて大汗をかくリゾンドを横目に、ジャックが高笑いしながら双剣の剣先に炎を纏わせて、踊るように骨が少ない牡鹿の腹部を斬り込んでいた。ラドはその負傷した牡鹿に焔龍号でとどめを刺していたが、ジャックに集まる精霊の動きに違和感を覚えていた。

「ハルド!」

「なんだい?」

ラドの頭上周辺を自由に飛び回るハルドに声をかければ、空翔ける飛龍牙の回転を掴む事で殺してハンマーのように振り下ろし、巨鳥の首を落としながら視線だけ向けてきた。

「ジャックの心臓が精霊許容量を超えそうだ!」

「あー…。」

ジャックの心臓の魔石化が、ラドの目で見ても明らか。莫大な力を使う時に行う高リスクな事を何故かこの小物の群れにやってしまっているジャック。繰り返し行う事で、心臓の魔石化が解けなくなり、人間から魔獣へと成り代わる。一族から何体魔獣を出せば気が済むんだ、と苛立ちを覚えるラドに、ハルドは驚く素振りもなく彼らへと目を向ける。

「ジャックー!無理しないでくれよー!俺の任務が終わったら、大草食サイの群れの討伐手伝ってくれるんだよねー!?」

「あ…ああ!勿論!ハル君とのデートだから楽しみだよ!」

ハルドは叱る事をせずに眉を下げて、心配そうな表情をジャックに向けると、高笑いしていたジャックの足がピタッと止まり、彼の口調が普段に戻る。

「お、戻った。」

「んー?どうした、ラド君?」

口調が戻ると心臓に過剰に集まっていた精霊が散った為、ラドが感心するとジャックが穏やかな表情でこちらに目を向ける。目の前で突進してくる牡鹿に集中していないジャックの横を焔龍号の剣先を牡鹿に向けたラドがすり抜け、

「…。」

無言で、突進の勢いと共に息の根を止めた。牡鹿の喉を貫通した焔龍号を引き抜き、次の牡鹿へと振り上げる。狙いを定めた牡鹿の横っ腹へリゾンドが折れた剣を振り回して飛び出して刺しに行った。牡鹿の位置がズレたが、ラドの剣先はブレずに振り降ろされ、リゾンドの鼻先スレスレの軌道で風を切る。真っ青になるリゾンドに、

「リゾンド、下がれ!死にたいのか!」

牡鹿にシャムシールを刺して感電させるリデッキが怒号を上げた。ガタガタと震え上がったリゾンドの足は竦んでいて、無言で隣のジャックに焔龍号を預けたラドがリゾンドの腕を掴む。

「着地は自分でして下さい。」

ぶっきらぼうに言い放ち、宙で弧を描かせるようにリゾンドの身体を投げた。ギャーギャーと喚きながら巨鳥の背中にぶつかって軌道が変わったが、何とか他の団員の近くに着地した。

「ああぁ…!?」

「ジャック?」

隣に預けた焔龍号を奪おうと手を伸ばすと、ジャックの目が龍のように瞳孔が細長くなっている。異様な変化にラドのゾッと背筋が凍り、ジャックの体内の精霊が焔龍号に吸い出されて、巨大な火柱が何本も空間内に出現し始めた。決死の覚悟でラドが燃え上がる焔龍号を奪取するが、既にジャックの力は吸いつくされて力なく倒れ込む。魔獣素材を使用した武器に多い事ではあるが、武器に意思があってその意志に負けると今みたいに『乗っ取り』が起きる。セイリンが焔龍号を手に取った事があったが、あの時は何も起きていなかった。方や人間、方や魔獣に近しい魔法士、これは焔龍号にとって利用価値の有無が関係しそうだ。焔龍号から発せられる火柱の勢いが止まらず、地上の二番目か壁側へと退避し、ハルドが風の如く気を失ったジャックを攫っていった。制御を失った火柱は互いに浮遊している精霊達を巻き込み、檻の中の生命を焼き尽くす。既にリデッキによって三番隊と四番隊は通路へ退避していて、まだ檻の中のリグレスが水属性の盾を維持した状態で二番隊を先に行かせた。一番隊が避難する順番になると、ハルドが先に通路へ出てからぐったりしているジャックをケーフィスが押しながら出ていき、リグレスを残してラドが出入り口を潜ろうとした時、


ゴトン


と後方から重量のある音がした。

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