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童話

小さな星の、本当に小さな話

掲載日:2021/12/31

 星を見たことがありますか。


 いきなり何を聞くんだろう。

 星を見たことがない人なんて、いるのかな。


 『星』って、なんでしょう。

 暗い空にまたたく、光の点々のことでしょうか。

 わたしたちの住む地球も『星』ですね。

 明るい太陽も星の一つです。

 『隕石いんせき』のことは知っていますか。あれも星です。

 『石』より小さな星もあります。手に取れるくらい近くにあれば見えますが、遠くにあったら、どうでしょう。


 『見る』って、なんでしょう。

 星が光って、その光が目にとどけば、星を見たことになるのでしょうか。

 空が明るければ、星は見えません。けれども、星は光っています。


 星が見えます。

 見えない人にも、見えます。

 見えなくても、見えます。

 見えるのに、見えない。

 見えないけど、見える。


 お話をします。とても短いお話です。

 本当に短いお話で、気が付いたら終わっているようなお話で、それがどういうお話かと言うと、とても小さな星の、本当に小さなお話なのです。


 遠い遠い昔、信じられないくらいの大昔、信じられないほど遠い所に、星の子供こどもがおりました。

 星の子供こどもには親がありません。その代わりなのか、兄弟姉妹きょうだいしまい沢山たくさんいて、わいわい、がやがや、にぎやかにらしておりました。

 いつからそうしていたのか、いつまでそうしていたのか、本当にそうしていたのか、それは分かりません。


 大昔のことです。

 遠くのことです。

 それに、星の子供こどもたちは、見ようと思っても見えないくらい、とても小さかったのです。


 砂粒すなつぶほどの大きさもありません。

 光ってもいません。

 見たことのある人は、一人もいないのです。


 そんな星の子供こどもたちがらしていたのは、とても寒い所でした。

 寒くて寒くて、本当に寒くて、こんなに寒い所でらしたことのある人は、一人もいないのです。

 そんなに寒い所で、星の子供こどもたちが何をしていたのかと言うと、みんなで一つになって、おしくらまんじゅうをしていたのです。

 そうしていると、一人残らず温かくなって、いつまでも、いつまでも、そうしていられるようでした。


 いえ、本当は、星の子供こどもは、ひとりぼっちだったのかも知れません。

 本当は、兄弟姉妹きょうだいしまいなんて一人もいなくて、寒い所で小さくなって、本当に小さくなって、静かにらしていたのかも知れません。


 大昔の、遠くのことです。

 見たことのある人は、一人もいないのです。


 ところで、ある時、こんなことがありました。

 あんなに沢山たくさんいた仲間たちが、一つになっていた兄弟姉妹きょうだいしまいたちが、まったく突然とつぜん、散り散りばらばらになったのです。


 ある者は、こちらへ。

 またある者は、そちらへ。

 また別の者は、あちらへ。

 一人残らず飛んでいったのです。


 いつのことか、分かりません。

 何人いたのかも、分かりません。

 どうしてそうなったのかも、分かりません。

 おしくらまんじゅうにきたのかも知れません。

 星の子供こどもには親がないと言いましたが、本当はお父さんかお母さんがいて、会いに行こうとしたのかも知れません。


 大昔の、遠くのことです。

 見たことのある人はいません。

 ただ、分かっているのは、このころから星の子供こどもたちが光るようになった、ということだけです。

 星が見えます。


 さて、散り散りばらばらになった星の子供こどもたちですが、行く先々では様々なことがありました。


 ある者は、とても大きな星になりました。

 またある者は、小さな星になりました。

 また別の者は、どこまでも、どこまでも、飛んでいきました。

 時には他の星と再会さいかいして、おしくらまんじゅうみたいなことをする者もおりました。


 お話をします。

 とても小さな星の、本当に小さなお話です。

 その星は、本当に小さくて、砂粒すなつぶほどの大きさもないのです。

 光ってもいません。

 見たことのある人は、いるのか、いないのか、分かりません。


 それでも、その小さな星は星なのです。

 大昔の、遠くの、星の子供こどもたちよりも、ずっと大きいのです。

 ずっと旅をしてきたのです。

 大きくなり、小さくなり、どこからか飛んできたのです。


 ここは太陽の近くです。向こうから飛んでくるのは、わたしたちの住む地球です。

 大昔のことなのか、つい最近のことなのか、それは分かりません。けれども、小さな星は知っています。

 昔と同じように、おしくらまんじゅうをするのです。

 そうすると、少しだけ温かくなるのです。

 小さな星が光ります。

 少しだけ光って、空に火のすじを引いて、気が付いたら消えています。

 小さな星はどこへ行ったのでしょう。

 星が見えます。


 これでお話は終わりです。

 小さなお話は終わりです。

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[一言] 星たちの描写や、地球に小さな星が吸い寄せられる場面を見ると、なぜだか宇宙そのものについて考えさせられてしまいました。 一か所にまとめられていたものや形あるものが時間の経過とともにやがてばら…
[一言] 知ったつもりでいたけれど、 本当は気づいていなかったことを 教えられた気がします。 ただ深々とした語り口が好きです。
2021/12/31 16:39 退会済み
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