第9話 パンの能力査定
というわけで、王都の宿に戻った俺たち。
アメルの分の部屋を取り、ギルドには明日報告することにした。
「じゃあ、夕ご飯は何のパンを出しましょうか?」
部屋に向かう途中の廊下で、アメルが無邪気に言って来る。
うっ……冒険者パーティの食糧問題を解決した、と言ったが少しだけ修正。
毎日毎日パンだとそのうち飽きるかもしれないな……
特に今は昼にパンを4つも食べた身なのでそう思ってしまう……まあ贅沢な話だけど。
「いや、今はお腹すいてないかな、とりあえず今日はもう寝るよ」
「わかりましたー」
アメルは自分の部屋に入って扉をしめた。
と、すぐ扉を開けて顔だけ出し、
「おやすみなさい」
「おやすみ」
アメルはにっこり笑って再び扉をしめる。
ああ、和やかな雰囲気だ。以前だと、もうおやすみの挨拶すらせずただただ宿屋は飯食って寝るだけ、だったからな……
自分も部屋に入り、今日は気分よく寝れそうだ、と思った。
(蒸し焼きビーフサンド!)
宿屋の薄い壁を通して隣のアメルの声が聞こえてきた。
まだ食うのー!?
▽
次の日の朝。
宿屋の食堂でパンを出して勝手に食べると不興を買いそうなので、俺の部屋でアメルに朝飯のパンを準備してもらっている。
まあ食事はつかない安いプランで泊ってるんだけども。
しかし出してもらったパンはいきなり食べるのではなく、まず俺はそれをスケッチする。バフ効果の調査だ。
魔物や人間を鑑定できたように、パン自体も問題なく鑑定できるようだ。
羊皮紙に描かれたパンのスケッチの横に、栄養価と共に食べることによる効果が表示された。
【たっぷりたまごサンド】
エネルギー 200k
タンパク質 8g
脂質 10g
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効能 体力100アップ (効果時間:6時間)
こんな感じだ。
さすがに朝からまた1人あたりパン4つノルマ、とかはきついので今回は2つずつ。その結果、
【蒸し焼きビーフサンド】 力200アップ
【海老トマトサンド】 器用さ100アップ
【ピリ辛チキンサンド】 解毒
といった感じ。効果時間はどれもおおむね同じだった。解毒まで出来るとは驚きだ。
効果は徐々に調べていこう、おいしく頂きながら。
あと自分のパラメータやスキル情報についても調べ済み。昨日の夜、寝る前に自画像を描いてみたところ問題なく鑑定できたのだ。
【種族】人間 【名前】ダリン・ルーベルト
【体力】 35/35
【魔力】 60/60
【力】 8
【素早さ】 10
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・
【絵描き】としての俺のスキルは『高速描画』、『神の描写』、『人物画査定』。
『神の描写』が絵に描くことで現実に影響を及ぼすスキルで、『人物画査定』が鑑定の効果を発揮するスキルであるようだ。
どちらも消費魔力は1、効果を考えると破格かも。
「神の描写……つまりダリンさんは神絵師なんですね!」
「その言い方は偉そうなのでちょっとやめてほしい……魔導師みたいなジョブ感はちょっとだけあるけど……」
『神の描写』の効果は、例えばゴブリンを描いたあとにさらに氷漬けにするような描写を加えれば、現実のゴブリンも氷漬けになる。
そして勇者パーティを力強そうに描くことで、本物のパーティも実際に力強くなると思われる。
おそらくハーレイのパーティには今までそういう効果が発揮されていたはずだ。
やや手間のかかる魔法効果の発動とか、全体バフ効果みたいな感じだろうか。
ただある程度の制限があるというか、例えばゴブリンに剣が刺さったような絵を描いても、実際に剣が刺さるわけではない。
刃が途中までしかない剣がゴブリンに引っ付いて出現し、ぽろりと取れるだけだ。
あと無から有を生み出せるわけでもなく、羊皮紙にただ炎球を描いても空中に火球が現れたりはしない。
「なるほど……なかなかややこしいですね。いつかダリンさんのパーティ絵も見てみたいです」
「いつかダンジョンに潜る時に、俺たちのパーティ絵を描いてみるよ」
そういや、今頃ハーレイたちはダンジョンに潜ってると思うが、まだそのバフ効果は持続しているんだろうか。
魔法効果などの持続時間もそのうち調べておく必要があるな……
「しかしアメルのパンによるサポート力も頼もしいな」
「えへへ」
「アメルがステータスの個別バフ役、そして食糧担当。解毒も出来るし疑似的な僧侶役、
俺が全体バフ役、そして疑似的な魔法使いって感じかな?」
「そうですね、あまり聞かないようなパーティ編成かもです」
ちょっと強化系に偏ってるかな?ここに一人、戦士系が入れば即パーティのエースとして活躍できそうだな。
「じゅうぶんダリンさんがエースって感じありますけど?」
そう言ってくれるのはうれしいけど。もっとわかりやすく戦う冒険者が入ると良いんじゃないかと思ったが、【絵描き】【パン職人】と来てここに普通に【戦士】とかが入ってくるのもなんとなく違う気がするな……
アメルが近接攻撃が得意であれば都合が良かったかもしれないが、性格的にそういうのは苦手そうだ。獣人は人間より感覚が鋭敏、やや力強め、素早さ高め、という感じでいざとなれば爪を伸ばして引っかきなども出来るようだが。
まあいずれはメンバー追加もあるだろう。
とりあえず朝飯兼パン調査はここで終わりにして、昨日のゴーレム討伐をギルドに報告しにいくことにした。
▽
「おう、ダリンじゃん」
昨日は先送りにしたクエスト達成の報告をしにギルドまでやってきた俺たち。
何度も顔を合わせるうちに馴染みになった受付嬢のマリタが、にやりと笑って迎えてくれた。
ギザ歯が褐色の肌に映える。
受付嬢にしてはサバサバした砕けた口調でよく上司から注意されてるが、なかなか直らないようだ。
「聞いたぜ。<奇跡の炎>、追放されちまったって?」
あれ、追放の話が知られてる。
「自己都合で離党、って書類は提出したんだけどな……」
「だけど、どこぞの宿屋ですごい大騒ぎしてたんだろー?その話が誰にも聞かれてないわけもなく、ってな」
あんだけハーレイがそんな話が広まらないようにつってたのに、広めてるのはハーレイ自身ってことか。俺は何も言ってないから、自業自得ってことだな。
「フリーになったなら、ギルドで働いてみねーか?じぶん、歓迎するぜー」
と、マリタが俺の肩に右腕を回して組んできた。
すごいボリュームの柔らかいものも押し当てられる。ちょっと困る。
「い、いや、冒険者は続けるよ。パーティも組んだし」
「お、その子かい。こんちゃっす」
「……アメルです。こんちは」
アメルはさっきから何か不機嫌だ。挨拶も小声。
俺の右腕を取って身を寄せ、何かぶつぶつ言っている。
この子こんなに人見知りな感じだったっけ?
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