第7話 絵描き、パン職人とパーティを組む
「あ、アメル?」
「はんれふあ?(何ですか?)」
もぐもぐさせながらアメルがこっちを見る。
「何か、体調に変化はないか?」
「体調?……いたって元気であります」
隊長に応えるような口調……
てかもう4つパンを食べ終わったのか。はっや。
いやそれはともかく、人物画パラメータの数字を信じるなら、体力も力もいろいろと
上がってるはずだ。
「ちょっとこの小石つまんでみて」
「?はい」
「力入れてみて」
ごしゅっ。
小石がいともあっさり砕けて粉々になった。
「ええっ!?」
アメルが驚きの声をあげる。
やっぱり。
このパン、美味い上にバフ効果まであるときた……!
アメルが食べたパンは、
蒸し焼きビーフサンド×3、たっぷりたまごサンド×1。
パラメータから逆算したら、ビーフサンドが力を200アップ、たまごサンドが体力を100アップといったところだろうか。
ビーフが力、たまごが体力?その関連性はさっぱりだが。
「ええ?なんで!?あたしマッチョパン職人になってしまったんですか?」
小石を砕いたアメルはあたふたしている。
落ち着かせるためにも俺はパンの効果についての仮説を述べた。
「パンを食べてパワーアップ……ハサウェイのパンにはそんな効果が……」
いやいやないない。そんなことが本当にあったら確実に店のウリにして宣伝してるはず。
これはアメル本人のスキル効果だろう。
魔力を消費してバフ効果のあるパンを空中から取り出す……冒険者の食糧問題を完全解決した上にパーティをサポートする力まであるとか、これならどのパーティからも歓迎されそうだ。アメルはもう離党申請なんてしなくてすむぞ。
そのうえ引退後も普通にパン屋で安泰だ。
そんなことを考えながら、俺もなんとか4つのパンを食べ終わった。
もう腹いっぱい……だが一体どんな効果が出てるのやら?力や速度が上がった感じもないし。
自分のパラメータを見る方法を考えなければ。自画像でもいけるのかな……?
と、ここで日も傾いてきたことに気づいた。
「そろそろ王都の宿に戻ろうかな」
「そうですね、ご一緒します」
その前にギルドにも報告しなくちゃな……
ん?今アメルなんて?
「えっ?一緒?」
「あ、はい。ええとその、色々考えたんですが……」
アメルはもじもじしながら、しかしはっきりと言った。
「ダリンさんのパーティに、加えてくれないかなあ、って……」
「え……」
考えてもなかったことを言われてつい黙ってしまった。いやまあこの子が居るとすごい助かるだろうなあとは思ったけど。
するとアメルは不安になったのか、耳を折りたたみ、上目遣いでこちらを見てきた。
しっぽもしゅんと下がっている。
「……ダメですか?」
「い、いや全然ダメじゃなくてむしろ歓迎なんだけどさ?」
「よかったあ……!」
ほっと胸をなでおろすアメル。しっぽも徐々に上がってきた。
「でも、俺のパーティ?つっても俺まだソロだし、しかも絵描き、良いの?」
「ダリンさんの実力はこの目でしっかり見ましたから。全然不安なんてないです。
そしてダリンさんはわたしのスキルの使い方を見つけてくれました。絶対この恩は返さなきゃって。それにはパーティの一員として活躍するのが一番かなあ、って……」
熱心に訴えてくる。
さすがにこれを無下に断るなんて無粋は出来ないな。
俺は右手をズボンでこすって、
「ええと……うん。じゃあ、今後ともよろしく」
「はい!よろしくお願いします!」
そしてがっつり握手をかわす。
アメルのしっぽのふりふり速度が3倍ほどにアップした。
【絵描き】と【パン職人】……
ギャラリーのあるベーカリーでも経営するのかな?って感じの冒険者パーティが、ここに誕生した。
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