第6話 サンドイッチパーティ、そしてさらなるパンの効果
「すごいな、パン職人のスキル」
「すごい、んでしょうか!?」
「パンそのものだけでなく、パン料理として作り出せるんだ。たまごすら無から生成してることになる」
「確かに(もぐもぐ)」
アメルがたまごサンドを頬張りながらうなずいている。実に美味そうだ。しっぽめっちゃ揺れてる。しかしためらいなく食べたな……まあこの期に及んで実は食品サンプルでした、なんてオチはあるまい。
「じゃ、じゃあ……高くて今まで一度しか食べたことのないアレも、作れるかな……?」
アメルが上目遣いでもじもじしながら言う。
「おう、色々やってみると良い」
「うん!……蒸し焼きビーフサンド、来て!できればロングで!」
……
「出てこない……?」
「……やっぱり食べた事のないロングサイズはダメみたいですね」
「ないんかい!それはスキルの能力以上の話じゃないか」
思わず突っ込んでしまった。
てへへと頭をかいたアメル、今度は高望みせず目的のものを取り出して見せた。
「来た!蒸し焼きビーフサンド、レギュラーサイズです!」
喜びの声をあげるアメル。おー、これも美味そうだ。
「海老トマトサンド!蒸し焼きビーフサンド!たっぷりツナサンド!」
スキルが使えることが嬉しいのか、どんどんパンを生成するアメル。
「卵とベーコンのサンド!蒸し焼きビーフサンド!ピリ辛チキンサンド!」
おいおい。
「ダ、ダリンさん、手を出してください!もう持てません!」
「いやいや!これ以上生成して、全部食べれるの!?」
「あ、そうか。食べなきゃですよね」
おいおい……!
でもなんかすごく幸せそうなアメルを見てると、こちらも嬉しくなってくる。
そうだよな、今まで外れジョブ扱いされてきたんだもんな。
自分のジョブの新たな可能性を発見できた嬉しさ、すごく良く分かる。
外れ扱いして良いジョブなんてないんだ。なんにでも可能性はあるんだ。
職業に貴賤なし、とはこういうことか?違う?
ということで、また岩場の平べったい所に二人で座って、サンドイッチパーティが開かれることに。王都に戻って宿屋かなんかで食べることも考えたが、せっかく熱々なわけで、冷めないうちにってことで一致した。
「ゴーレム討伐を記念して、かんぱーい。酒どころかコップもないけど」
「パンでやりましょう」
パンとパンを軽くぶつけ合う。
そして食べる……美味い。アメルのお気に入りの店のメニューだけあるな。つか初めてハサウェイ食べた。
「美味しいですねえ、ダリンさん」
満面の笑みだ。良かった、最初に会ったころの物憂げな様子はもう無い。
「ああ、ほんとに美味い。アメルのスキルってすごいな」
「そ、そうですかね?てへへ、パン職人になってこんなに褒められたの、初めてです。
そしてわたしにこんな力が見つかるなんて……全部、ダリンさんのおかげです。ほんとに、本当にありがとうございます」
深々と頭を下げた。下げ過ぎて手元のパンのベーコンが落ち、慌ててベーコンとパンでお手玉するアメル。
……しかしこのスキルの最もすごいところは、パンが美味しいとかそういう点ではない。
なんせ際限なく空中からパンを取り出せるのだ……
ダンジョン攻略においては常に食糧問題がつきまとう。一人が持てる食糧の量はどうしても限られるからだ。
その量により、ダンジョンに潜る期間も限られる。持ち込む装備もそうとう厳選しなければならない。
しかしアメル1人いれば、パーティは一切食糧を持たずにダンジョンに潜ることが出来る。
これがただパンそのものだけを生成するスキルだったら、栄養バランス的に心もとないところだが、肉も、野菜も、望むだけ食べられるという……
「……いや、さすがにチートすぎない?」
「はい?」
思わず口に出して言ってしまった。
アメルが首をかしげる。
本当に際限なく取り出せるのか?無限のパン製とかありえるか?
実際、試してもらうか……?
アメルの出したパンを食べながら(1人4つノルマは結構きつい)
ふとアメルの人物画に目をやったとき、ある点に気づいた。
【魔力】 47/55
魔力の数値が減っている。
なるほど、そりゃそうか。さすがに魔力は消費するよな、パン1個で1消費か。
チートすぎなくてもかなりコスパ高い。魔力は一晩寝れば全回復すること考えると相当パンを出せることになる……
ってよく考えたらこの人物画ステータス、リアルタイムで現状を反映してるじゃないか。
これも新たな発見だな……
そして、よく見たら他にも変化があった。
【種族】亜人(犬族) 【名前】アメル・フィン
【体力】 30/30 (+100)
【魔力】 47/55
【力】 10 (+600)
【素早さ】 15
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なんだこのカッコ内の数字は……?
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