第5話 パン職人の覚醒
アメルの全身像を描きたいと頼んだところ、アメルが絵描きに対するとんでもない誤解のため服を脱ぎだした。
慌てて止める。女の子の絵は全裸オンリーとか、悪質なデマすぎる……誰だそんなデマ流した奴は!?
しかしアメルの半裸が目に焼き付いてしまい、デマ主に感謝を……って違う!
頭を振り、邪念を追い出す。そんなつもりで描くわけじゃ絶対にないから!
「ア、アメルを描くことで、鑑定をしてみたいんだ。パン職人のスキルとかを詳しく調べられるかもしれない」
「な、なるほどです……失礼しました……」
顔を赤らめたアメルが服をちゃんと着終わっているのを確かめ、改めて向き合う。
「じゃあ、ええと……」
「そうだな、あの岩場にちょっと座ってみて」
アメルが岩場のひらべったい所にちょこんと座る。
その様子を鉛筆を走らせ新しい羊皮紙に詳細に描いていった。
すると思った通り、アメルの人物画の横にぼんやりと文字と数字が浮き出てきた。
やはり、絵による鑑定効果はモンスター以外にも有効だ……!
「ほら、アメルも鑑定できたよ」
「わあ、これがわたしですか!?」
ぱたぱたとしっぽを振るアメル。良かった、絵が本人にも好評で。
鑑定結果はこんな感じだった。
【種族】亜人(犬族) 【名前】アメル・フィン
【体力】 30/30
【魔力】 55/55
【力】 10
【素早さ】 15
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この下にはしばらくアメルの身体能力的なパラメータの数字が並んでいる。
「ん?なんだこれ。【BWH】79 53 80?」
謎の数字が。読み上げたとたん、アメルがまた真っ赤になって叫んだ。
「ああこれ!ここ3日で食べたパンの枚数ですよ!!」
「めちゃくちゃ食べてない……?」
「ああああたし大食いですから!!暴飲暴食は悪い事、反対!の略ですねこれ!」
「???そ、そうなんだ」
妙に慌ててるのが気になるが、まあ今はそれどころではない。
読み進めると、パラメータの下の方に目的のスキル欄があった。
【スキル】おいしいパン生成
「パン生成……やっぱりパンを作るだけ、それだけですね……」
ちょっと肩を落とした感じのアメル。
うーん、これじゃ普通のパン職人じゃないか。変な期待を持たせてしまったかもしれない。
絵描きの自分にも未知のスキルがあったからって、パン職人にもあると思ったのは浅はかだったか……?パン職人というジョブはレアではないにせよ、普通過ぎて特に研究されてるわけでもないし、行けると思ったんだが。
ん、いや……そのスキル欄の下に注釈があるぞ。
【スキル】おいしいパン生成
(注)今まで一度でも食べたことがあるもの、作ったことがあるもの
「今まで一度でも食べたことがあるもの……?」
何だこの注釈。なんか引っかかる……というかパン作製、ではなくパン生成、って言葉にも違和感が。作製ではなく、生成……
もしかして。
「アメル、今まで食べたパンで一番美味かったのは?」
「え?えーっと……ハサウェイの、たっぷりたまごサンドですね」
ハサウェイってのは王都にも店を出している有名チェーンのパン屋だ。
サンドイッチを主力の商品として、各方面に展開している。
「じゃあ、それを思い浮かべて。また食べたいなとか思って、手の上にそれが乗ってるイメージをしたりして」
「え?あ、はい。んー……」
アメルは目をつぶり、両の手のひらを上に向けて胸の前にかざした。
「来た!」
「え?」
アメルの手のひらの上の空間に、パンが……たっぷりたまごサンドが現れたのだ。
そしてぽんと手のひらに落ちる。
「あちち!これハサウェイのたっぷりたまごサンドじゃないですか!!しかも焼きたて!?」
「やっぱり!アメルの【パン職人】としてのスキルだよこれ」
「ええっ!?」
そうなのだ。パン作成ではなく、パン生成……
アメルのスキルは、一度でも食べたことがあるパンを、その場で生成することが出来るんだ!
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