第4話 勇者ハーレイサイド~不調
ダリンを追い出し、魔法使いを加えた勇者ハーレイのパーティ。
これでようやくバランスの取れたパーティになったと意気込んでダンジョンに潜っていた。
現在地下3階、何の問題も無く進むハーレイ一行。
『この迷宮を制した者には世界を制する力が与えられるだろう』
迷宮入口に刻まれている古代文字はそう語っている。
その力の秘密を求めて日々冒険者はダンジョンに潜り、到達した階層を競い合う。
階層の深さが冒険者の格の高さを示すものとなっている。
「いやあゴミダリンが居ないだけでこんなにすがすがしいもんだな!」
「確かに。生産的」
「ほんとよねえ。私たちがこのダンジョン最下層の秘密、持ち帰ったらどんな顔するかしら?ん?」
「みじめに泣き出しちまうかもな!いや、もう一度パーティに加えてくれと土下座してくるかもしれねえ!絶対お断りだけどな!」
ギャハハハと盛り上がりながら、ダンジョンを進む一行。
「そんなに役立たずだったんですか?ゴミダリンって人」
「ジェレミーにも教えるぜ、あいつがどんだけ寄生虫だったか!」
それから1時間ほど、ダンジョンを潜りながらダリンの悪口を語るハーレイ。
その内容はある事ない事、盛られた内容だったがジェレミーは確認しようがないのでその言葉通りに受け取る。
「はあ。そりゃ追い出されても仕方がないというか、当然のことですね」
「だろう!?だからいつも報酬の分配はあいつだけ皆の1割程度に減らしてたんだが、不満げな目で見返してきやがってよお!」
「だから時々、俺たちの財布から金を抜き取っていた気がする。いや、確定的にそうだ」
「だよな!?なーんか時々減りがはえーなとか思ってたんだ。酒盛りのやり過ぎとかあいつは言ってたがよ」
むかつくぜ、と言った具合に足元の石を蹴とばすハーレイ。
「あと、私の下着が時々無くなってたんだけど、それもあいつの仕業よね」
「そ、そうそう!絶対そうだぜ、リズ!」
「金銭泥棒に下着泥棒、最低な奴だったんですね。皆さんお気の毒に……」
ジェレミーが深々とため息をつく。
「ま、まったくその通りだぜえ」
そして一行は3階を突破し、4階に降りた。
一度でもその階のフロアボスモンスターを倒してしまえば、次からは『そのパーティの前には』同じフロアボスは二度と出現しない。
フロアボスを倒し、次の階層へ続く階段前の扉を開くことで、ダンジョンに『認められる』かのように……
なので一度、6階まで降りたハーレイ一行はフロアボスと遭遇することなくスムーズにダンジョンを降りていくことが出来ている。
しかし。
いつもなら地下4階までは余裕、5階辺りから少しは回遊モンスターに手ごたえを感じるな、という状況だったのだが……
「何か体のキレがいまいちだな今日は……」
「感覚的に同意する……」
「おかしいわね。昨日飲みすぎたかしら……ん……?」
まだ地下4階で、モンスターに苦戦し始めた一行。
前衛のハーレイとレジナルドの生傷が絶えず、リズの回復魔法を使う頻度が増え、魔力ポーションの消費がいつもの3倍くらいのペースになっている。
「どうしました皆さん?まだまだこれからでは?」
一人、余裕をもって戦えている人間がいた。魔法使いのジェレミーだ。
「い、いやあ?何だろうな?ちょっと今日は調子が悪ぃみたいでよ!」
慌てだすハーレイ。
「まだまだいけるぜ!勇者パーティはこんなもんじゃねえよ!な!」
レジナルドとリズの肩を叩き、何やってんだ、しっかりやれとハーレイ。
しかしその後もハーレイ達3人の調子は振るわず。
「な、なんだ?モンスターが強くなっているってのか?」
「そうでないとこの状況、説明がつきにくいな」
「何なのよ!そんな話聞いてないわ!」
徐々に愚痴の増えていく三人だったが、ジェレミーはどこ吹く風で、
「そうですかねえ?いつも通りとしか思えませんけど?」
多種多様な属性魔法で軽くモンスター勢を屠っていく。
「ジェレミーが居なかったら……ここまで来れてないんじゃないの私たち?」
「バカな。いつもは俺たち三人で、しかも足手まといのゴミを抱えたうえで、やってきてたんだぞ!どういうこった、これは……」
不安と疲弊がたまっていく三人。
それでもジェレミーの活躍もありなんとか6階までたどり着くことができた。
「よ、ようやく地下6階だ……」
予定ではここまでは消耗せずに降り切り、本腰を入れて7階、8階へとたどり着くつもりだったのだ。しかし現状の消耗具合、レジナルドは正直引き返すべきと提案するもハーレイに一蹴された。
「戦力は圧倒的に上がってるはずなんだ!何かが噛み合ってないだけだ、そのうち良くなる、絶対に……」
しかしいきなり遭遇した動く鎧の集団に苦戦をしいられ、レジナルドとリズが重傷を負った上に
ハーレイも毒の剣による攻撃で毒を受けてしまった。
「くそっ……リズが意識不明だ、解毒魔法を使ってもらうこともできねえ。ぐぐ……て、撤退だ……」
ハーレイが弱弱しく地面を叩く。毒がだいぶ効いているようだ。
「畜生……!足手まといが居ないから、今回は最下層、10階にだってたどり着けると思ってたのに……!」
「撤退、ですか。その調子だと歩いて戻れそうにないですね。わたしが全員を地上まで戻す魔法を使いましょうか」
「そんなのがあるのかよ!?た、助かるぜ、ジェレミー」
「それなりの大魔法なので、準備に少し時間をください」
「ほんとにあの野郎の1万倍は役に立つ……」
毒でうなだれつつも歪んだ笑みを浮かべる。
そんなハーレイの様子に、目に怪しげな光をともすジェレミー。
(おやおや……今この国で、最も竜座のダンジョンの秘密に近づいているパーティというから、メンバー募集に応募したというのに。
何か期待はずれな実力ですねえ。こんな程度で6階まで良くこれたものです)
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