第28話 魔族との戦い、9階フロアボスへ
デーモンの両手が燃えている……これが発火能力?魔力は0なのに魔法みたいに火を操ることが出来るのか。
つまりこいつらにとっては魔法は特別な概念ではなく、手足を使うようなものってことか……!
「ooooooooooooh!!」
叫び声と共にデーモンは腕を振るった。その手からほとばしった炎が床を這ってこちらへ伸びてくる。魔晶核の防御陣で防ぐが、炎が当たった核が数個、赤く焼けただれて溶けてしまった。
「ええー!?うっそぉ」
並大抵の武器や魔法では魔晶核に傷一つつけられないのに……どんだけ高熱なんだ。
デーモンはぶんぶんと両手を振り回し、床を這う炎を連続で繰り出してくる。
防御陣を集中させて展開、なんとか炎を防いでいるうちに特大の雷をやつに描いてぶつけた。
ゴロゴロバリバリとすごい音がして、体中に電流による輝きをまといながらデーモンが一瞬固まるが、再びこちらを睨み据え炎を飛ばしてくる。
「タフだな……雷を当てた一瞬をアメルは狙ってくれ」
「はい!!」
雷を当てつつ、麻痺した瞬間にアメルの盾攻撃。それを交互に繰り返し、デーモンの体力を削り切る。4度目の雷撃でデーモンはどさりと前のめりに倒れ、魔晶核を残して消えた。
「やりましたね!」
「さっすがダリンちゃんね」
「みんなの勝利だろ。しかしなかなかタフなやつだった。
氷漬けが無効なら手足に鉄球を生やして行動不能にするだけでも、9階は突破できるとは思うけど。やっぱり魔晶核が取れたほうが良いだろうな」
「ですね、深層の魔晶核はレア中のレアですし、9階のものを持ちかえればまた<三つの星>の評価もあがりますねっ」
ここでふとシンシアがデーモンの魔晶核を拾い上げながらつぶやいた。
「……この魔晶核、普通のより硬かったりしないのかしら?」
魔晶核はシンシアの手にかかれば防御にも攻撃にも使えるものだ。
今回、魔晶核が溶かされるという初めての事態が起きた。今後もそんな相手が出てくるなら防御陣に不安が生じることになる……
しかし魔晶核に硬さの差異ってあるのだろうか。
「えいっ」
がちーん。
シンシアが鎧の魔晶核を取り出して床に置いたかと思うと、それにスキルを使って飛ばしたデーモンの魔晶核をぶつけたのだ。
硬度、いや行動が早い!
つか普通は貴重な収入源である魔晶核を傷つけようなんてことはしない。
魔晶核は一度傷がつけば、そこから崩れて消えてしまうからだ。
このお姉さんはときどき大胆なことをするな……
「やっぱり!ほらほらダリンちゃん」
なんと鎧の魔晶核にはヒビが入っていた。デーモンの方は無傷だ。
魔力バフが効いてるとはいえ、シンシアのスキルも大概だ。どんだけの勢いで飛ばせるのか……
いや、それよりも。
「これって硬度に差があるってことじゃないか……やってみるもんだな」
「でしょー。お姉ちゃんの手柄!」
「確かに。……なんで後ろから抱き着くの……」
「ごほうび吸収中」
な、なんか良く分からないが勝手に吸収させておこう。アメルの視線を感じながらも魔晶核をスケッチしてみた。
いつも提出するだけだったから初めての試みだ。魔晶核はぼんやりと光ってるが、だいじょうぶ光の表現は修行したんだ。
ちょっとばかり描くのに時間がかかったが、描画による鑑定は成功した。
【デーモンの魔晶核】
[一般的な魔族、ブロードデーモンが残した魔晶核。硬度12。
魔力を注ぎ込めば再びデーモンの姿を取り戻す。
必要魔力量2000]
なんと硬さの表記があった。
続いて、動く鎧の魔晶核をスケッチしてみる。
鑑定結果によると動く鎧のそれは硬度7と出た。
「デーモンの魔晶核、集める価値はありそうだ……!」
その後しばらく、ダンジョンにはデーモン狩りのための雷が轟く音が鳴り響き続けた。
結果、手持ちの魔晶核は『動く鎧:デーモン 5:1』ほどの比率に。
「デーモンの出現率は鎧より低いのが難点だな」
「それにタフですしね。時間かかります……」
ここでこれ以上時間をかけるのも非効率的と判断、ダンジョンを進むことにした。
「いよいよ9階フロアボスだ」
「ど、どんなのが居るんでしょう」
「今までの傾向からして、デーモンの上位存在かしら?」
デーモンの魔晶核を集め終わった後。
しばしの小休止をとったのちにフロアボスの部屋への通路までやってきた。
慎重に部屋をのぞき込む。
ぞくりとする。
フロアボスの部屋は他より温度が低かった。
部屋全体が雪に覆われているように白く、天井にはあちこちにつららがぶら下がっている。
しかし背中に悪寒が走ったのは、フロアの中心に居る魔族から放たれる威圧感の大きさからだった。
一般的なデーモンより一回り大きく、歪んだ羊の角を持ち、大きな翼を持っている……
鑑定の結果。
「デーモンロード……!」
魔族の王が、そこにいた。
次回。9階フロアボスとの戦い、未踏の地へ
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