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第27話 ダンジョン9階へ

 そして準備に三日かけ、その次の朝に再びダンジョンの入り口までやってきた。


 結構かかったのは『塩と砂糖の描き分け』『光の表現』などの画力向上に時間をかけたからだ。

 一応はサマになったと思うので、今後はウィルオーウィスプ(仮)が出てきても描写できると思う。


「今回の目標は9階突破……そして、最下層へ行き、『竜座のダンジョン』の謎を解き明かすことだ」


 ごくり、とアメルが喉を鳴らす。


「予定日数は三日ほど。……まあ最下層の謎が、そこだけで解けるものでもなく、世界を巡って宝珠やらを集めなきゃダメとか、やたらと難しい碑文のなぞなぞを解かなきゃ開かれない、とかだったら……いったん撤退だけどな」

「うふふ。もしそうなっても、最下層までのフリーパス券を手に入れてるのはわたしたちだけだし、当分は大丈夫じゃないかしら」


 楽天的にシンシアが笑った。


「もう9階のフロアボスを倒した気になってないか……?まあ、<三つの星>なら全然やれると思ってるけどな」


 三人で顔を見合わせ、


「さあ、行くぞ!」

「はい!」

「がんばろうね~」



 またパーティ全員の絵を描いてあるためステータスは底上げされた状態。

 ダンジョンでの進行速度を上げるために速度アップの七面鳥サンドを食べてきたので、歩みも早い。


 シンシアもデッキブラシで強化されたスキルで大量の岩を浮かべ、防御陣をしく。

 歩みも早いが、岩の防御陣の回転も早くなってるので接触するだけでモンスターも大体倒していける。


 8階まではフロアボスは全員倒してあるので、ダンジョン探索で最も時間がかかるボス戦も一切起こることなくもう6階まで到達できた。

 と、ここでアメルが妙にベーコンレタスサンドを取り出しては食べているのに気づいた。


「どうした?さっきから」

「いっ、いやお腹がすいたわけじゃなく!幸運度を上げておこうかなって」


 ぴょんと飛び跳ねて答えるアメル。


「幸運度?確かにこの6階は希少な武器とかが落ちやすい階層だけど……もうアメルたちは拾っただろ。まだ足りない?」

「そうじゃなくて……あたしたちだけ拾って、ダリンさんは何もなかったじゃないですか。今度はダリンさんのぶんを拾いたいなーって」


 確かに俺の武器は特に拾えてないけど。絵描きに有用な武器や防具って実際あるんだろうか。

 無限に使える絵の具とかあると便利だけど。武器でも防具でもないな……


「俺の?でもアメルが幸運度上げるならまたアメルの武器が出てくるんじゃないか?」

「ダリンさんのが欲しいです!って祈りながら歩いてます!」

「え?ダリンちゃんの子供が欲しい?あらあら」

「そ、そんなこと言ってませーん!!」


 シンシアのそのまぜっかえし方、どうなんだ……


 そんな緊張感のない状態で進んでも、向こうからやってくる動く鎧たちは防御陣の岩で勝手に吹っ飛んでばらばらになっていく。

 魔晶核も転がっているので、適当に岩と取り換えて防御陣の硬さをアップグレードしていった。

 そんな時。 


「……あれ?ダリンさん、絵筆が床に。落とされたみたいです」

「え?」


 床に落としたらしい絵筆をアメルが拾って渡してきた。


「……こんな絵筆持ってたっけな」


 一応、画材道具は負担にならない程度に一式を持ち込んでいるが、なんか見覚えがない気がする。

 

「まあいいか。ありがとう」


 と道具入れにその絵筆をしまい込んだ。




「……7階まで来たけど……結局ダリンちゃんの武器、出なかったわね」

「残念です……幸運度、足りなかったかな」

「いやアメルめっちゃ食ってたでしょ……あれで出ないんなら、特に存在してないんだろ」


 防御陣の岩を全て、魔晶核と交換するくらいには動く鎧は(自動的に)屠ってきたが、魔晶核以外は結局落ちなかった。

 それで出ないのなら、絵描きが使うべき伝説の武器やら防具はないってことだ。


「さっきの絵筆は、そういうのじゃないんでしょうか」

「んー。確かにパンの盾やデッキブラシが希少武器として落ちたんだ。可能性はあるな。スケッチして鑑定してみるか」



 【勇者の絵筆】


 [かつて世界を救った勇者が使っていた絵筆。現在は竜の魔力が失われておりただの絵筆である]



「勇者の絵筆!!……でも、今はただの絵筆なんですね」

「うーん、ちょっと期待したけど。しかし勇者も絵描きみたいなことしてたんだ」


 ちょっと落ち込み気味のアメルの肩をぽんぽんと叩き、


「即戦力なものじゃなかったけど、これはこれで貴重な品だ。拾ってくれてありがとうな」


 そういうと、アメルも笑顔を取り戻してしっぽを振るのだった。


 そしてその後もトラブルなくダンジョン進行はスムーズに進み、9階まで到達。



「ここから先は未知の階層だ。引き締めていこう。もぐもぐ」

「はい、ダリンさん。もぐもぐ」

「ここには何が居るのかしら。もぐもぐ」


 何が起こるか分からない領域では、耐久力アップのチーズパンを追加して食べていく。


 アメルの感覚でも捕らえられない敵に、不意打ちを食らう可能性だってある。

 速度アップに加えて耐久力をがっつり上げておけば致命傷は回避できる。はず。


 ダメージや状態変化なども、パンを『食べて』回復するスタイルなので『食べられない』状態がこのパーティの弱点と言える。

 毒や麻痺でその状態になってしまったら、細切れにした回復系パンをシンシアの『浮遊』で直接、喉に流し込む手も考えてはあるけど。

 かなり乱暴な手ではある。


 防御陣は展開しているが、それを抜けてくる敵がいないとも言い切れない。


 慎重に感覚を研ぎ澄ませながら、ゆっくりとダンジョン9階の通路を進む……

 するとアメルの嗅覚に反応があった。


「嗅いだことのない、なにかがこの先にいます……」


 しばらく歩くと通路の先に、何かが歩く姿が見えてきた。

 人の形はしているものの、大きい角を生やした人相の悪い羊の頭を持っている。

 背中には小さな翼。


 あのいかにも悪魔的なシルエット、デーモン……?


 防御陣の密度を上げ、こちらの姿を見えないようにしながら遠目でスケッチ。

 この状態では鑑定効果は発生しないので、いったん氷漬けにしてやり、安全を確保してから近づいて詳細を描写。



 【種族】ブロード・デーモン 

 【体力】  1000/1000

 【魔力】  0/0

 【力】   500

 【素早さ】 150

   ・

   ・

   ・


  [一般的な魔族。魔法とは別系統の発火能力をもつ。飛行能力はあるようでない]



「はー、デーモンとか。ドラゴン同様、想像上の生き物かと思ってた」

「実在、したんですね……しかも『一般的』とか、ほかにも種類がいるのかな」

「叙事詩では氷漬けになった悪魔の話とかあるわよね。まさか実物を見れちゃうなんて……ちょっと感動かも」


 シンシアはのんきだな……

 でもその氷漬けの悪魔ってそうとう上位のものじゃなかったっけ?

 一般的な悪魔でもいいんかな……こいつはあっさり氷漬けになったけど。


「しかし魔力0とか。悪魔って魔法を使えないのか?」

「イメージ的には邪悪な魔法を使う感じですよね」


 ……ん?鑑定結果をよく見たら体力、0にはなっていない?

 ゴブリンを氷漬けにした時はその時点で体力は0になってたはず……


 とか考えてると、氷の中のデーモンの手が赤く光りだした。

 その部分から氷が溶けだし……中に空間が出来たかと思うと、デーモンは拳を振るって中から氷を砕いてしまった。

 

 こいつ自力で氷漬けから抜け出しやがった!

次回。魔族との戦い、9階フロアボスへ

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