第26話 打ち上げ終了、ジェレミーの暗躍ふたたび
打ち上げの道行き。
色んな人に囲まれたり激励の言葉をかけてもらったり。
「わたしのところにはナンパ師ばっかりー」
とか言いつつ寄ってくる男(一部女)はすべてやんわりと『飛ばして』近づけさせもしないシンシア。
「じぶんのとこには誰も来ないんだが?」
「マリタは無関係だろ……」
マリタは受付嬢としては割と有名人だからな。皆ちゃんと分かってる。
そうして<三つの星>+1はちょいちょいとその足を止めつつ、王都一と言われる高級食堂までやってきた。
アメルが貰ったものはいったん預かり所送り。
そして宴が始まった。
「この首はねウサギのステーキ、肉厚なのに柔らかジューシーでうっま」
「クラーケンのクリームスープもちょう美味しいです!!」
「ヒポグリフの唐揚げサクサクおいしー。レモン?お姉ちゃんはかけない派」
「ケルピー刺し、いけるぜおまえら。生肉大丈夫ならな。お代わり!!」
「……ほんっと遠慮しないなマリタ。良いけどさ」
しかしさすが王都一。出てくる料理は確かにどれも一流で、今まで食べた事のないご馳走に皆おどろき、舌鼓をうち、たっぷり堪能したのだった。
「アイスゴーレムのシャーベットって、ゴーレム要素特になくね?」
「形がゴーレムってわけでもなかったですしねー!でも美味しかったです!」
わいわいと、さっき食べた料理について盛り上がりながらさらに甘味処を数件回る俺たち。
「スライムマカロンんまーいです!」
「自走キノコ風キャラメルプリンんまーい!」
「おっ、おう……じぶんがこういうの食べるのって、似合わなくね……?大丈夫?」
ぜいたくな甘味にほおを緩める女性陣。意外とマリタが遠慮がちだ。
その後は道具屋やブティックなどを巡る。
普段使いの服を見ながら、「へえー」とか「ほうー」とか言ってるアメルたちを見て、気に入った服をプレゼントすることにした。
もうずっとダンジョン潜りばっかりで、日常的な服のバリエーションを増やしたりなんて余裕、今までなかったしな。
「そ、そんな!自分で買いますから!」
「良いのー?ダリンちゃんがそういうなら、お姉ちゃん甘えちゃおうかなあ」
シンシアはへらっと笑って喜んだけど、アメルは予想通りめっちゃ遠慮した。
「良いんだって。感謝の気持ちだよ。皆がいなければ9階到達なんて夢のまた夢だった。受け取ってほしい。どうしてもいやなら、リーダー特権でもなんでも使って無理やりプレゼントするぞ?」
「い、いやじゃないです!……ありがとうござい、ます……(男の人に、服を、プレゼントされるなんて)」
アメルはなんか赤くなって最終的には了承した。よしよし。
二人はかなりの時間をかけて選び、試着を繰り返した後、それぞれ「これ!」と思うものを選んだ。そして俺が支払って二人に紙袋に入った服を手渡したのだった。
「あ、ありがとうございます!一生の宝にします!」
アメルは服の入った紙袋をやんわりと抱きしめ、感極まった様子で言った。
ちゃんと着て欲しいが、なんかずっとしまってそうな言い方だな。
「嬉しいわあダリンちゃん。なにげに服とか、誰かからプレゼントされたのって初めてかも……ありがとね」
といって両手を広げて近づいてきたので、「それはまた今度、公衆の面前じゃないとこで」とか言ってすっと身をひいた。
ややふくれっ面で「もー」とうなるシンシア。
「公衆の面前じゃなきゃ良いんですか!?」
しまった言葉の選び方を間違ったかもしれない。アメルがジト目で睨んでくる。
それをごまかそうとする意図ではないが、
「おう、マリタもなんか好きなの選べ」
「おあっ!?じぶんもか!?」
我関せずって顔をして離れたところにいたマリタにも声をかけた。
「い、いいよ服なんてよ……いつもは受付嬢の制服だし、遊びに行く服なんて……今日もすげー適当だしよ」
「いいからいいから。なんで今回は遠慮するんだよ。いつも世話になってるってことで」
「そりゃ仕事だしよ。つーか服の選び方とかわかんねーんだよ。目ぇつぶって選ぶからそれにしてくれよ」
「じゃあ、アメルとシンシア、頼む」
二人に目配せをした。分かったとばかりに笑顔になって二人はマリタを引っ張っていく。
そして本人が絶対に選びそうにない、フリフリのやつだったり可愛い系のを試着させまくって、
「い、いや絶対似合ってねえって!」
「おいい!?ギャップがすごすぎねえか?」
「背中出すぎだって……!」
「……見るな、は、恥ずかしい……」
などという反応を引き出しまくっていく。
「そ、それだよ、俺達が求めているモノは!!」
などと言って一度ぶん殴られたが、結局は一応本人も納得するような、可愛すぎず派手過ぎない色遣いのちゃんとしたものを選んでプレゼントしたのだった。
「……んー、あー。まったく、人で遊びやがって……あ、ありがとよ。ぜってー着ないけど」
「おう、楽しみにしてる」
「着ないって……」
やれやれ。
しかし今日は一日皆で楽しく過ごすことが出来た。
英気は十分に養われたかな。
ラストのダンジョン探索に向けて、気持ちを切り替えていこう……!
▽
牢獄。
捕らえられたハーレイが両手両足を投げ出し、壁にもたれかかっている。
両手の鉄球は結局外せなかったのでそのままだ。
その目は死んでいるようにうつろだったが、何かを見つけたのか、光が戻ってきた。
顔を上げ、
「……よう。遅かったじゃねえか」
「おや?わたし、あなたと何か約束でもしてましたっけ?」
「してねえけどな。俺を助けてくれる奴がいるとすれば、もう他にいねえと思ってただけだ……ジェレミー」
牢獄の中に突然姿を現したのは、魔法使いのジェレミーだった。
「へえ?ずいぶんと買いかぶっていただいてるようで。
実は、<三つの星>がいよいよダンジョンの最下層に挑むらしいという情報を得ましてね」
ぴくり、とハーレイの眉が歪んだ。目に力が戻ってくる。
「わたしあの<三つの星>一行に用がありまして……一人では寂しいので、ご同行していただけないかと」
「……当然だ。行くぜ……行くに決まってる!!」
「はいはい、大声を上げないでくださいよ。といっても、その鉄球を外すときは黙っていられないでしょうが」
「外してくれるのか!?……がっ!?……ぐがあああああああああああ!!!!!」
ジェレミーは魔法で作り出した光のナイフのようなものを振るったかと思うと、ハーレイの両手の肘から先を切り落としたのだ。
「そっ……そういう、外し方っ!!かよ、ぐ、ううううう!!」
しかし今度はジェレミーが両てのひらから光を放ち、ハーレイの腕を照らした瞬間、失われた両腕が傷口から生えてきた。
「な、なんだあ!?お、おまえ、【魔法使い】じゃないのか?こんな人体の部分再生が出来るほどの回復魔法なんて、最高位の神官クラスでもないと……!」
「お静かに。ここを脱出しますよ」
「……わかったよ……お前がどういう奴なのかは後回しだ。
最後の決着をつけにいくぜ……ゴミダリン……!」
(まあ、あなたがあの絵描きに勝てるとは全く思えませんが。せいぜい、わたしの役に立ってくださいよ……くく)
怒りに燃えるハーレイを尻目に、怪しげな笑いを浮かべるジェレミーだった……
次回。ダンジョン9階へ
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