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第25話 決着、そして打ち上げ

「おまわりさーん。こっちこっちぃ」

「その呼び方はやめろって言ってるだろう、マリタ……」


 ギルドの通報により、6人の首都警護の衛兵騎士たちが駆けつけてきた。

 騒擾罪と、<彼方の海>行方不明に関わっている疑いで、<奇跡の炎>一行は全員捕らえられたのであった。


 今後、教会の裁判機構で『嘘看破』のスキルを持つ審問官によって取り調べを受け、事実が判明したなら裁判が行われ、適切な処罰が下されるだろう……


「うわっなんだこの両手の鉄球。お前の武器なのか?」

「んなわけあるか……」


 もはや言い返す力も失ったハーレイ。

 しかしまだ俺を見たやつの目には、まだ恨みの炎のようなものがちらりと見えた。

 が、これ以上暴れるような真似はせず、騎士たちに連れられていったのだった。

 鉄球の重さのために4人がかりで。


(これですべて清算だ。俺はお前から解放された。お前も俺から解放されてくれればいいが……)


「なあ、ダリン」


 同じように連れられて行くレジナルドが「すまない、少し時間をくれ」と騎士に言い、俺に話しかけてきた。


「能力のあるなしにかかわらず、俺たちはお前を追放するべきではなかった……子供のころ、あんなに約束したのにな。『いつまでも一緒』だと」

「……ああ」

「いつのころからか、ハーレイがお前の悪口を俺たちに吹き込むようになった。あいつが【勇者】なのもあって職業的なカリスマを勝手に感じていたのかもしれない。少しずつ俺たちの態度もやつに感化されていった」

「……」


 根源はハーレイにあるのかもしれないが、だからといって……俺は黙って次の言葉を待った。


「謝ってすむことじゃないが、……すまなかった。俺たちは法で裁かれるよ」

「たぶんだが、お前たち二人は<彼方の海>行方不明には直接かかわってないんじゃないか?」


 なんとなくそんな気がして、レジナルドに聞く。


「ハーレイを止められなかったのは事実だ。やつはあの妙なスキルで他にも色々やってるに違いない。冒険者パーティには一蓮托生的に責任の一端は負わされるもんだ。そしてこれはお前を追い出した罰だと受け止める。実際お前には辛くあたった」

「レジナルド……」

「じゃあな。最下層到達、期待してる」


 リズも足を止め、


「……あたしは昔からアンタのことが好きだったのよね。

 でもハーレイが勇者になってからは、そっちについた方が……?とか思うようになっちゃって。

 6階に到達したころには、性格はともかくハーレイについていった方が将来的にお得かなって。

 そしたらこんなことに……まったく、男を見る目がなかったわ」


 ハーレイがさっきリズを見たのはそういうことだったか。


「きつい言葉をかけて、ごめんなさい。レジナルドと一緒に罪をあがなってくるわ。さよなら」


 そうして<奇跡の炎>一行は騎士と共に、首都の暗がりに消えていった。


「ダリンさん……」

「大丈夫?」


 アメルとシンシアの二人が心配そうに話しかけてくる。


「大丈夫。ハーレイはあんな目にあって当然だし、レジナルドもリズもこの先、贖罪金を払って世の中には出てこれるだろうけど冒険者としては二度とやっていけない。王都じゃ真っ当な職にもつけまい。<奇跡の炎>は終わったんだ」


 でも。


「俺には<三つの星>がある。二人がいる」


 と笑う。

 追放された時は、あいつらとの縁が完全に切れたと思って本当に悲しかったが。

 アメルとシンシアと出会ってから、きれいさっぱり、吹っ切れた。

 

「レジナルドとリズもある意味ハーレイの犠牲者かもしれないが、最後までハーレイと共にいたんだ。そういうことさ」

「……そうね。ダリンちゃん、お疲れ様」

「お疲れ様です!」


 そういや、9階到達の騒ぎで魔晶核の報酬がうやむやになってたな。


「よし、これから報酬を受け取って、豪勢な打ち上げといきますか!!」

「待ってたぜこの時を!!何飲む?」

「うわあ!?なに混ざる気満々でいるんだマリタ!?」



 ▽


 

 結局、打ち上げをやるにはもう遅いということで、いったん宿で休んだのち。

 次の日の朝から、王都のお高い店やら甘味処やらを好き放題回るツアーを組んで、打ち上げの代わりにすることになった。


「ふっふーん。何食おうかねえ。今日のために朝抜いてきたぜ」

「本気で混ざってくるとは……」


 当然のように受付嬢のマリタが朝からついてくる。これは<三つの星>の打ち上げなんだが?と言っても、


「なんだよぉ。じぶんとお前の仲じゃんか」


 の一点張りだ。そして肩を組んでくる。そしてアメルに引っ張られる一連の流れ。


 結局、魔晶核による報酬は金貨にして5万枚を超えた。

 

 7、8階のフロアボスの魔晶核がかなり高く評価されたのだ。

 そして6階の動く鎧の魔晶核。この数が尋常じゃない。

 

 ダンジョンの帰り道は、いつもの岩による防御陣が鎧の魔晶核による防御陣になっていたくらいだ。そうでもしないと運びきれなかったのだ。そもそも持ち切れない分はフロアに残しておいたのだが、


「もったいないですー!」


 とのアメルの主張と、シンシアには余裕がありそうだったので結局全て回収してまわり、魔晶核防御陣として浮かべながら帰還。これがまた頑丈で、帰り道はモンスターと全く戦うことなく地上へ帰還できた。

 

 そしていったんダンジョン監視所の人に魔晶核を預かってもらい(大量過ぎて驚かれた)とりあえずギルドへ向かったらハーレイとのあれこれがあり……というのが昨日の夜の顛末だ。

 

 そして朝、まとめて報酬の金貨に変えたというわけで。

 しかしこれだけの金貨、数年は遊んで暮らせそうだな……


「まあ、ここまで来て冒険者を引退して家でも買って……なんてことをしたら、失望した人々に何をされるか分からないけどな」


 王都を歩くと、いろんな人から声をかけられる。

 皆、<三つの星>の9階達成を知っているのだ。


「やるじゃないか!あと少しだ!頑張れ!」

「応援してるぞ<三つの星>!!」

「素敵!国の英雄ね!」

「うちの店に寄ってくれよ!サービスするぜ!!」


 期待や賞賛のまなざし、嬌声が常に浴びせかけられる。

 この期待は裏切れないし、もとより俺たちの最終目標はあくまでダンジョン最下層。

 

 今日1日の打ち上げが終わったら、再び準備をしてダンジョンに潜るのだ……次が最後になるだろう。最下層に何があるのかは分からないが、そういう予感があった。

 

「あ、あのー。なんかいろいろ貰いすぎて前が」


 道行く人に「お嬢ちゃんみたいな人がすごいねえ」「うちの名物、あげるよ」「これ、助けになるかしら」などといろんなものを貰って、目の前が見えないくらいに抱え込んでるアメル。


 おいおい、これから店を回るんだから、ほどほどにな……

次回。打ち上げ終了、ジェレミーの暗躍ふたたび

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