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第23話 <三つの星>の帰還、ハーレイの急襲

 俺たち<三つの星>がギルドに帰ってきた時には既に、9階到達の話題が知れ渡っていた。

 ダンジョンから帰還し、近くの騎士詰め所で報告した時点でもう騒ぎになり、ものすごい速度で情報は広まっていったのだった。


「どーも。<三つの星>です。9階までの魔晶核を……」


 ギルドの扉をくぐり、そう言いかけたとたんに冒険者の一団にわっと囲まれたのだ。


「すげえなお前ら!!今まで聞いたことのないパーティなのに、本当に到達したのかよ!?」

「マジだ、こいつらの冒険者カードには″竜座の9″の刻印がついてんぞ!」

「こいつは動かしがたい証拠だからな!本当にやりやがったんだ!」


 おおう、受付までとてもじゃないが行けない。

 しかし肩をバンバン叩かれたり祝福と尊敬の言葉をかけられまくるのは正直、悪くない。


「あんたがパーティのリーダーか?ジョブは何だ?」

「【絵描き】だけど……」

「絵描きぃ!?そ、そんなんが冒険者になってダンジョンに潜って9階まで潜ったってのか!?」

「どうなってんだ!?詳細を聞かせろよっ!」


 えーどこから話したものか?


「いやあ、当初の予定は8階だったんだけど……」


 頭をかいてそう言いかけると、


「おいおい、ついでで9階まで行っちまったのかよ!?」

「こりゃあ竜座のダンジョンを制覇すんのは、こいつらで確定じゃねえか!?」

「明日は国を挙げての祭りになるな!」

「へっへーん。どうだお前ら。じぶんは最初からダリンはやるやつだと思ってたぜ。ま、これっくらいはな!はっはっは」


 受付嬢のマリタがまた俺の肩に腕を回してきて、周りを見渡ながら笑う。


「なんでおめーが自慢げなんだよっ」


 ほんとだよ。


「マリタさん、近いー……!」

「あらあら」


 アメルがマリタの服の端を引っ張り、シンシアが手のひらを口に当てて笑う。


「ねーちゃんも嬢ちゃんもすげえな!ってあれ?あんた【パン職人】、そしてあんたは【魔女】、じゃねえか……」


 どよめく冒険者たち。今までの興奮が水をかけられたかのように一瞬で収まる……

 そこへアメルがシンシアの前に立って、


「シンシアさんは悪い魔女じゃありません!」


 と両手を広げた。俺も、


「パーティのリーダーとして保証するよ。安心してくれ皆!

 なにせ、この魔女さんは空を飛ぶ魔法しか使えない、恐ろしさとは無縁のゆるふわお姉さんなんだ。虫も苦手だ」

「ダリンちゃん?なんというか言い方ー。あと虫の話とかいらない!もー!」


 シンシアがちょっとだけ複雑そうだ。


「そ、そうなのか?……それなら、なんか、ちょっと安心したぜ」

「9階到達のあんたが言うのなら……」

「そうだな。ここでは、到達階がすべてだ。受け入れる」

「飛ぶ魔法自体使えるのはすごいけど……もっとこう邪悪なものを想像してたな」

「ああ……【魔女】ってだけで邪険にするもんじゃ、なかったみてえだ」

「悪かった、【魔女】さん」


 頭を下げる冒険者一同。


「【パン職人】の嬢ちゃんも、以前パーティから抜けさせちまって、ごめんな。あんた実はすごかったんだな」

「そうだぞ!じぶんはダリンを信じてるし、ダリンが信じてる人間なら、そいつも信じる。いいな皆!」

「だからなんでてめーがそんな偉そうなんだよ、マリタ」


 わっと笑いが広がる。

 【魔女】と聞いて硬化した皆の態度も、徐々に柔らかくなってきた。


 『外れ』扱いされてきた俺たちが、皆に、受け入れられている……

 追放された時はこんな未来が来るなんて、夢にも思わなかったな。


 ここに到達できたのは、俺だけじゃない、みんなの力だ。

 ……ありがとう、アメル、シンシア、そしてマリタも。


「つうか、【絵描き】【パン職人】【魔女】なんて組み合わせのパーティでどうやって敵と戦うんだ?そこ詳しく!」

「まじ想像できねえよ!」


 わいわいと。

 ギルドがふたたび笑いと興奮とでにぎわいを見せる中……隅のテーブルで杯を握りつぶし、床に叩きつけて


「バカなッ!!」


 と叫ぶ男が居た。<奇跡の炎>リーダー、【勇者】ハーレイだった。


 その叫びでまた静かになるギルド内。


「あの……あの、何もできなかった、ゴミダリンが。9階到達だとう!?信じられるか、そんなこと!!」


 目をギラギラさせ、歯をむき出し。悪鬼のような形相でハーレイが喚きたてる。


「そんなことが出来るものか!!

 誰か、9階に到達した他の冒険者からカードを盗みやがったんだ!でなきゃ、ゴミダリンなんぞが」

「冒険者カードはその人間固有のものだぞ。偽造も出来ないし、盗んだところで刻まれた名前を見りゃ一発だ」

「それに今9階に到達できるパーティなんて他にいるか?……そういや最近、<彼方の海>を見ない気がするが」


 何を言ってるんだお前は?というような目をハーレイに向ける冒険者たち。

 そのうちの一人が気づいて、


「誰かと思えば、<奇跡の炎>のハーレイじゃねえか。

 一時は最深層到達パーティとして名を馳せたようだが、最近はさっぱりのようだな?」

「ああ、つまりあれか。嫉妬か」

「醜いな、【勇者】にあるまじき態度だぞう?」


 冒険者たちがどっと沸く。


「うるせえっ!!ゴミダリン、俺は、お前なんぞを、認めねえ。認めて……たまるかあああっ!!」


 腰の剣を抜き放つハーレイ。

 それを見た冒険者たちも素早く戦闘態勢に移行する……が。


「な、なに?」

「ハーレイ、が消えた!?」


 魔力ポーションをあおったハーレイが、次の瞬間にはそこに居なくなっていた。

 レジナルドとリズも困惑している。


「ハーレイ……?おまえ」


 そんなスキルを持っていたなんて全く知らなかった。瞬間移動か、透明化か?


「注意しろ、二人とも」

「はい!ダリンさん」

「狙いは、きみでしょ。守るよ、わたしたちが」


 油断なく周囲をうかがう。


「アメル、獣人の感覚でとらえられないか?」

「匂いも無くなりました。さっきまではあったのに……怪しい足音も聞こえません」


 瞬間移動なら、既に俺の後ろや真上などを取っててもおかしくない。

 ダンジョンで食べた耐久力アップのチーズパンはまだ有効だ、今なら不意打ちで刺されたところで致命傷にはならないが……

 

「!?」


 その時、床をすーっと動いてくる影に気づいたのはアメルだった。


「ダリンさん、影だけがこっちに……?」


 しかし違和感。

(影の行く先、ダリンさんじゃない!)


 気づいた瞬間にパンの盾、トランショワールを構えるアメル。


 ガキィィイン!!


 トランショワールの表面に火花が散った。


「なんだあ!!?パンが、なんでパンがそんなに硬えんだ!?」


 姿を現したハーレイが叫ぶ。

 狙いは俺じゃなく、アメルだった……!こいつ、俺の大事な人間から消すつもりだったんだ!!

次回、ダリンVSハーレイ。

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