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第22話 勇者ハーレイサイド~悪夢

 宿屋でハーレイの帰りを待つレジナルドとリズだったが、結局ハーレイが帰ってきたのは朝だった。


「おう、帰ったぞ!」

「……遅かったじゃないか」

「どこまで行ってたのよ!」


 宿屋で長いこと不安になりながら待っていた二人が声を荒げる。


「おう、そういきり立つな。例のものはちゃんと手に入れたからよ」

「なんだって!?」

「見ろよ。これが<彼方の海>が手に入れた勇者専用の超希少剣、『天意プロヴィデンス』だ!」


 ハーレイが得意げに腰に下げていた剣を引き抜いて見せる。

 それは確かに話に聞く、勇者の剣だった。


「ほんとに手に入れられたの……どうやったの?」

「だぁから言ったろ。交渉だって」

「……」


 微妙な空気が生まれる。


「なんだよその目は。殺してでも奪い取る、なんてことをしたってか?

 <彼方の海>は俺たちより先に進んでらっしゃる御一行様だぜ。俺一人でどうやって強奪するんだよ」

「……まあ、それもそうだが」

「へっ。さあ、準備しろ。これから潜るぞ。一気に、<彼方の海>を追い越してやる……!」


 ハーレイが宣言した。


「ええ?三人で?ジェレミーは?」

「もういらねえさ。この剣がありゃな!<彼方の海>が俺たちを追い越せたのはこの剣のおかげだろうが。そうでなきゃあんな大したことのない凡パーティが地下7階なんて行けるはずねえよ!」

「そう、なのか……?」

「そうさ!この剣にはとんでもない力が秘められてるに違いねえ。その力があれば、俺たちだって……!」


 剣を握りしめ、ぶるぶると震えるハーレイ。

 そんな様子に、レジナルドは不安げに声をかけた。


「なあ、焦ることはないんじゃないか?いくら剣が強くても、三人というのは心もとな……」

「うるせえな!<彼方の海>だって三人、俺たちだって三人。俺たちが行けない理由なんてないだろうが!」

「う……うむ……」

「なあに大丈夫だ。この剣の加護があるさ。俺たちは負けねえ。<彼方の海>にも、ゴミダリンにもだ……!」

 


 ▽



 そうしてダンジョン入口までやってきたハーレイ一行。

 意気込んで潜る……も既に地下3階で違和感が生じていた。


「な、なんかキツいんだけど?」

「うむ……」

「まだ3階だぞ、ジェレミーが居た時もそうだったが、なぜこんな浅い階で苦戦しなきゃならねえんだ!?」


 【魔法使い】が居た時は地下4階で苦戦しはじめた。

 それが今回は、3階程度で壁を感じている……!


「くそっ!どうしたってんだ、そもそもこの勇者の剣も全然大したことねえじゃねえか!」


 ハーレイが今使っている『天意プロヴィデンス』。

 ハーレイには知る由もなかったが、この剣は持ち主を選ぶ。

 気高い精神、正しき心の持ち主でなければ真の力を発揮することは出来ない武器だったのだ。


 <彼方の海>の勇者ハーウッドは剣に選ばれる資格があった。

 だからこそ彼は6階でその武器を手に入れることが出来たのだ。


 だがハーレイには……


 資格無き者が使えばただのなまくら剣にしかならない。

 結局、ハーレイ一行は3階で限界を感じ、撤退せざるを得なかった……



 負ってしまった傷などを教会で回復させたのち、夜の冒険者ギルドで。


「畜生、畜生畜生畜生!なぜだ!なぜこうなった!!」

「……」

「……」


 最近、こうやってギルド隅のテーブルで酒をくらって不満をぶちまけるハーレイを見ることが増えたな、とレジナルドとリズは思う。


 もう、このパーティは限界なのかもしれない。

 そしてそのきっかけは、ダリンを追い出したことだったように思えてならない二人だった。

 しかしそれを口にだせば、ハーレイはより怒り狂うだろう。


 今は黙ってハーレイの怒りの火が自然に収まるのを待つしかなかった。

 しかし間の悪いことに、火に油を注ぐような話題がギルドに飛び込んできたのだった。


 それは『ダリン率いるパーティ<三つの星>が地下9階に到達した』という、ハーレイにとっては

 悪夢のように信じがたい話であった……

お読みいただきありがとうございます!


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