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第21話 8階フロアボスとの戦い

「……蝙蝠?」


 次の瞬間、黒いものが翼のようなものを広げ、天井から高速で滑空してきた!


「うお」


 シンシアが岩の防御陣を展開するが蝙蝠もどきは急角度で上昇、衝突を回避。

 そのまま天井付近を円を描くように飛びまわる。かなりの速度だ。

 

 接近した時に牙らしきものが光った。接近しての嚙みつきが奴の攻撃方法か、眷属の存在を考えると……羊皮紙に姿を描こうとするが、 


「天井が暗い上にやつも全体的に黒いから、細かい部分の判別が出来ない……!飛び回られるのもやっかいだ」

「黒に黒でまっくろくろね」

 

 シンシアさん?


 素早く飛び回るやつにはアメルの盾投擲も、シンシアの岩弾も余裕でかわされる。

 蝙蝠は何らかの音波を使って周囲の状況を把握してるというが、それにしてもあの回避能力の高さ、遠隔攻撃は無駄っぽい。


「こいつは面倒だな、なんとか止める方法は……」


 いったん撤退して、素早さアップの七面鳥サンドを食べて戻ってくる手もあるが。

 この階層は全体的に天井が高い、もしかしたら飛んで追って来るかもしれない……あの速さを振り切るのも難しいか。


「……!ダリンちゃん、アメルちゃん。わたしの後ろに隠れて」

「前に立つと危ないですよ!突っ込んでくるかも」


 しかし、シンシアはにっこり笑って言った。


「そうして欲しいのよ」

「突っ込んでくるところに盾か石か?奴は防御陣を回避したぞ……考えがあるんだな?」

「お姉さんにまかせなさーい」


 そしてシンシアが前面に立ち、俺とアメルは後ろに引っ込む。


「こらー。降りてきなさーい。言う事聞かない子はお仕置きですよお」


 デッキブラシをぐるぐる回して挑発?する。

 すると通じたのかどうかは分からないが、急旋回して斜め上から突っ込んできた……!


「危ない!」


 アメルが声を上げる。

 しかし蝙蝠もどきはシンシアの目の前数メートルで急に地面に墜落、ずさーっと滑ってきた。


「なるほど『浮遊』の力の影響範囲まで引き付けたのか。そして範囲に入った瞬間、『下方向』に『飛ばした』……!」


 スキルの影響範囲は目に見えない、だから奴にはかわしようがない。


 俺は喋りながらも素早く羊皮紙に奴の全体像を描き上げた。

 地面にうつ伏せなんで結構マヌケなポーズだ……

 ただ顔はこちらを見上げ、牙をむいて睨みつけている。


 そいつには人間の顔があった、というか見た目は人間そのものだった。

 肩までの長い金髪、赤い瞳。燕尾服っぽい衣装。なかなかの美形だったがマヌケなポーズで台無しだ。


 描き上げてステータスを参照する……


「やはりヴァンパイア、ロード……!」



 【種族】ヴァンパイアロード 【名前】Nicanor

 【体力】  900/900

 【魔力】  1500/1500

 【力】   120

 【素早さ】 300

   ・

   ・

   ・


  [吸血鬼の君主。人間の血を吸って眷属化することが出来る。

   飛行能力、超回復力、魔法耐性がある]

 



 翼じゃなくマントを広げて飛んでたようだ。

 人間の形をしているからかどうか知らないが、名前もなんか読めるっぽい。

 

 そしてステータスにはお約束の弱点がずらっと列挙されていた。

 日光、塩、ニンニク、聖水、銀の武器……まだまだある。

 

「強そうなのにこの弱点の多さ、なんなんだろうな」


 弱点を突くなにかを描き加えてやるか、と思ったが。

 

 完全に無から有を生み出すようなスキルではないので、太陽を描いて空中に出現させることはできない。

 

 あと塩と砂糖を区別化して描ける自信がない、聖水も水と区別して描ける自信がない。

 ……くっ、便利なスキルを持ってても本人の技術が足りないと、こうか……!絵自体の修行もつまないとな。


「ニンニク首輪でも描いてつけてみようか……?」


 ヴァンパイアロードはじたばたと嫌がったが、致命傷にはならなかった。


「もういいかな?お姉ちゃん、そろそろ限界……!」


 ヴァンパイアロードが常に立ち上がろうとしているところを、シンシアがずっと『下へ飛ばし続けて』いるのだ。

 立ち上がる力は相当強いらしく、シンシアの魔力もその分減り続けているようだ。

 やばいやばい。とりあえず炎上させとこう。


「グガァァァァ……!」


 一応は苦しそうだ。

 いったん距離を置く。シンシアは肩で息をしている、少し休ませないと。


 しかしヴァンパイアロードは立ち上がった。炎上して焼けてはいるが、焼けても皮膚が即時回復している。一応は痛みを感じているようだが。


「あらら。アメルちゃんは見ちゃだめ」


 炎上が収まった。そこに立っているのは燕尾服が台無しになりもはや全裸のヴァンパイアロードだ。シンシアがアメルの両目をふさぐ。


 そんな状態で戦うわけにもいかないかと思い、俺はあらためて全裸のヴァンパイアロードを描き、股間のあたりを黒く塗りつぶしてやった。やさしさ。

 現実のヴァンパイアロードにも謎の黒修正がかかるが、美形なだけになんともシュールだ。

 

 とかやってたらヴァンパイアロードがこちらに突進してきた。

 足かせを描きこんだが、足を動けなくされてもお構いなしに飛んで向かって来る。

 飛行能力、足かせの鉄球ごと飛べるほど強いのか……!


「避けろ!」

 

 横っ飛びでかわす……が、奴の目的は疲労で動きが鈍ったシンシアだった。

 シンシアをひっつかみ、首元に牙を立てた……!


 しかしさっき奴を描いた時に、あらかじめ牙や歯にめちゃくちゃヒビを描き入れていたのだ。

 勢いよく首に突き立てた瞬間、こなごなになる牙、歯。


「ムモオオオォン!?」

 

 くぐもった悲し気な叫び声をあげるヴァンパイアロードを横から蹴り飛ばし、シンシアから遠ざける。

 

 牙と歯、髪を失い(焼けた後再生はしているが伸びは遅かった)どんどんみすぼらしくなっていくヴァンパイアロード。

 もうイケメンの欠片すら残っていないな……


 そこへ飛んでいくアメルのトランショワール。

 すぱーんと首が飛び、ヴァンパイアロードは体全体が徐々に黒くなりチリとなって崩れ去ったのだった。


「あわわ……首を飛ばすつもりは……」

「牙や髪の毛が魔力の根源だったみたいね。それを失って相当弱体化したから……」

「いやいや良くやったアメル。シンシアもおつかれ」


 パンを食べて力アップしてるアメルなら、通常の人間の首も……と思ったがさすがにそれは言わない。


 これで8階フロアボスも倒し、9階への道も開かれた。

 当初の目標以上の成果だ。

 そろそろ三日目の夕方も近い、いったん地上へ帰還しよう。二人はダンジョンは初めてだからな、長居はよろしくない。


 だが新記録をひっさげての、凱旋だ!

お読みいただきありがとうございます!


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[一言] 吸血鬼の口の中にガーリックトーストをシュート 超エキサイティング
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